リタイアしてから始めた夢の海外生活。以前からテレビや雑誌などの特集されるが、その豊かで悠々自適の良い所だけの切り貼りです。
経済産業省所管のロングステイ財団(旧余暇開発センター)があって移住支援を行うとか、旅行会社や専門の会社やNPO法人等が競ってセミナーをした時もあったほど。ロングステイ財団などは、たった2週間現地に居れば其の国の専門家と認めるなんてアホな話もありました。
中でもマレーシアは人気一番。気候は温暖で住居費に物価が安く生活し易い。タイやフィリピンも同じく希望者が多かったといい、言葉が出来なくても、特技資格が無くても、アルバイトでゴルフ代が浮かせるとか、毎日プールで遊び、レストランで食事などと吹聴。家を処分してまで憧れの外国生活は魅力がたっぷりと焚きつけていました。そんな夢の語などマスコミのシナリオ。目的が無いのに何時迄もノマド生活など続く訳などないのです。
だが思ったほど楽でもなく後悔の念も見え始め、寂しくなるのか何時しか日本人同士が固まってしまうのが我が民族の特性。優越感に浸り何をするでもなくブラブラの日々、挙句の果ては丸裸の地獄。何のため海外に居る実態もあるがこういうネガティブな話は表には出てきません。
現地にはコーディネーターがいて、高級アパートなどの斡旋をしてくれるので安心。と言うのですが、いつの間にか下火となってしまいました。
リタイアメントビザ取得のため現地金融機関へ預金額が増えたとか、移住資格のハードルが上がったなどで、行き易い時代は過ぎ去ったのかと思うと、何とベトナムが住み良いのだ!と世界10位にランクイン。
実は2013年、PMH(HCM市と台湾のJV企業)の部長から話があり、
日本人を対象としたロングステイ村の企画をしたことがありました。しかし、様々な問題から敢え無く頓挫。現在と時代は違うとしても、ややこしい法的な制約や資金にノウハウなどの偽らざる実態。そんなに甘いものでありません。
また外国はもう一つと諦め、国内で都心を離れてと・・だがバブル時にあれ程人気のあったリゾートマンションが5万円とか、別荘地が10万円とか、売る方にすれば管理費や積立金、固定資産税等の費用が嵩むため、無料でいいから引き取って欲しいほど。一般論では相場以下なら贈与になる可能性があるなど税金問題がクリアされていません。結局は相続放棄が増え自治体や地元住民が迷惑を被り、危機的社会問題が増えるだけ。
日本国内でも人口減少。親の相続財産として残ったがもはや負動産。空き家がドンドンと増え続け、不動産は持つのではなく利用するもの、との本まで出版。農耕民族の日本人が意識した土地神話など復活しない時代を反映。人が居なくなる限界集落どころか消滅する自治体名が公表されていますから、何とか若い人を増やして繋ぎ留めたいと市町村は必死。インフラは経年老朽化し、税収は減り公共サービスも出来なくなる。人が住まないと家屋は朽ちるに任せ雑草が生い茂り、ひいては森になって国土が荒れ果てる。ならば外国人の移住定住を促進し、地場産業を活性化することに賛同できるのか?
さらに地方へ住もうとかで、大阪商工会議所が入っているビルに移住センターのブースがあり様々な資料を置いていますが、農山漁村や離島生活も無いものネダリ。いまどきの若い人に田舎暮らしが人気とかだが、現実は地域の根深い因習に縛られ溶け込めない、厳しい農作業と便利さから遠ざけられ、都会育ちの人間が容易く住めるものではありません。
海外移住もよく似たもの。憧れだけで勇んで出来るものでもない。でベトナム生活。2020年度版のアイルランドの海外移住専門誌「インターナショナル・リビング」で理想的な退職後の生活とは、住居、社会福祉、ビザ・居住、生活コスト、溶け込みやすさ・娯楽、ヘルスケア、開発、気候、統治、機会の10指標が生活指標とやらだが、この手の調査は何れも恣意的なもので数字に勘違いしてはなりません。寒い国の人の暖かい地域への願望とも思える。
なにせベトナムが24カ国中10位とかだが、はっきり言って当てにならない。人にも依るけど普通に日本で生活した人への基準がどれもこれも曖昧。安易に信用する方がおかしい。何処も住んでみて初めて解る事ばかり、実際に逃げ出した人も居るのです。
何事もあばたも笑窪、表面だけを見てはいけない。時間の経過と共に見飽きると、時には浮気もしたくなるし、憧れが強く理想が高すぎるほど落胆は大きく、所詮は暫しの白昼夢。ふと現実に引き戻されるとうたかたの夢の玉手箱。浦島太郎も暫し天国そのものだが、結局は元の鞘に収まるというのが何に対しても人の性(さが)。つまらぬ情報に惑わされず腹八分目。程々に留めてしっかりと足許を見つめれば、真偽のほどと見合った価値が見つかります。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生