ベトナムの住宅建築 ②

2020年7月12日(日)

中国メディアは、日本でタイル床が少ない理由を家に入る時は靴を脱ぐからと分析。生活習慣の違いから、素足で歩くのにはタイルよりも木材が向いているのではないかと推測。また床に直接寝る習慣もあるので、タイルは合わないとしています。さらに気候の違いも指摘。日本は温暖な気候で比較的湿度が低く、森林が多く良質の材木が手に入るので木材を使うのだろうとしています。ベトナムでもほぼ同じ考え方。しかし実情を知らずに書いた見当違いな指摘が多いのは如何なものか。
土壁も無垢の木も畳も湿気を吸収と放出し、湿度調節すると言えます、地域差と四季、特に梅雨がある。今では材木は輸入だし建材も簡素化して乾式が多い。洋風住宅に人気があり構造は簡素化。本物の和式住宅は手間もかかるし職人も少なくなり建築費も高い。記事の様な建材を使う現場は殆どありませんし、法規制も随分違います。

・入った瞬間から違いがわかる

上がり框や式台がある独立した玄関はベトナムにはなく、外部の汚れを持ち込みます。一部では見切りの縁石を入れてある一戸建て住宅がありました。
靴はどうあれ、脱いで室内に入りますが、ほぼ全面開放型の玄関扉を開ければ既にそこは生活空間、リビングなので奥まで見通せます。靴箱はありません。
床はタイル貼り、しかも600角~900角を使うことが多い。タイル貼りはカーペットと違い汚れても拭くだけは楽で嬉しい。フローリングは湿気でふやけるしベトベトになりますから一般的でありません。以前どうしても使いたいという顧客がいて、ドイツ製の特殊フローリング材を使ったことがありますが、高く付きます。
ベッドは普通だが、床に寝具を敷いて寝ることが無くはない。HCM市で日本人の水嶋さんが畳を現地で製造販売していて好評だが、芯はヤシの繊維を使うと言います。

・内装 壁・天井にクロスは使うか

一般家庭ではクロスを貼りません。ホテルなど一部で使いますが、エアコンを年中使っていればの事、湿気で黴が生え剥がれることが多いのです。だが日本の様に充填しなくても結露しないのは穴あき煉瓦を使用、プラスターを仕上げに塗っているから。だからハウスシック症候群は皆無。健康には安全で安心できると言えます。
天井が高いのは生活の知恵。昔は上部に熱気を逃すための換気口がありましたが、エアコンが普及した今は造らない。階高のある空間は電気代が嵩みます。
浴室・洗面室やなどはユニットが無いため従来の湿式工法、一部タイルを貼ります。
タイルの多くはベトナム製。だが施工する時は日本の様なタオル割図面を書きません。なお、現場監督はまともな仕事をしない(資格はない)から殆どが現場合わせ、通りが合わないとか収まりが悪い。取り合い部は特に酷く、専門の職人も居ないので、建具や窓の位置がずれるなど、綺麗な仕上がりは望み薄、と思う方が良い。

・窓サッシュ 玄関扉

アルミ製が多くなったが、鉄製がまだ多く、鍛冶屋に注文して造って貰います。しかし何れも品質は良くなく気密性も悪い。ある日本企業が建てたアパートは住人も日本人。建材の一部をわざわざ日本から輸入して使った事もあるくらい、見て直ぐ分かります。 
またベトナムは防犯のため正面に鉄のシャッターか鉄扉を設けます。場合によっては玄関先に前庭がある場合、その天井まで囲ってしまう程、盗難には神経を使います。
なお部屋内は木製、合板性とか多く、水回りにはアルミ、プラスティック製もあります。
ガラスは普通ガラス。UVカットや安全ガラスの類、断熱用などの二重ガラスはない。

・水回り設備

キッチンは煉瓦を積んでモルタルで仕上げて、天板は平板を置いてタイルを貼るか、大理石が多いがコストはほぼ変わらない。扉や収納棚は木材。プロパンガスを使用するため調理台の下に入れるようにしてあります。シンクは建材屋に釣ってあるのを買って取付け(調理台と一体でない)。強制換気は殆ど(考え)ないのでダクトは無い。システムキッチンは販売しているが価格が高くて、一般家庭では殆ど導入しません。
洗面とトイレ浴室は一体型、殆どの部屋に設置してあり便利。だが脱衣スペースや、浴槽もなくシャワーが多い。温水を使う習慣はなくシャワーも水。年中暑くてムシムシのHCM市。日本人は湯船に浸かりたいが、電気の湯沸かし器なので湯量は圧倒的に少なく水圧も弱い。一戸建ての場合は太陽熱温水器を設置することがあります。

排水口はU字管などないため異臭が上がってくる。シンクは野菜くずなど、浴室では髪の毛が詰まることが多い。またトイレの廃水管は横引きではなくスラブ貫通式。
シャワートイレは販売しているが、コンセントなどは無い。設計者が知らないのです。
管工事はエアコン、電気配線など埋め込みが多く、漏水があると修理は困ることに。

・収納と言う考え方は無いに等しい

クロ-ゼットのような収納はありません。日本の住宅は全てに必ず設けるが、製品はなく特別に注文しないと作りません。隠す収納でもなく、見せる収納でもなく、考えないだけの話。以前は鉄製ロッカーの様な武骨な洋服入れが売っていたほどです。

思いつく概要を並べましたが、所変わっても住めば都、楽しい我が家。立って半畳、寝て一畳、天下とっても四畳半。結局は贅沢を考えず、雨露と風を凌ぎ、思い通りの人生と生活を謳歌して、快適と思えばいいだけのことかも。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生