ホーチミン市の不動産現況

2020年10月21日(水)

性懲りもなくHCM市の不動産(アパート・別荘)業者からメールが届きます。
何でアドレスが解るのかですが、多分相手は私が日本人とも知らない筈なのに
どうやら名簿が売られているとか聞きました。のべつ幕なしではどうにもならないが、ベトナムの不動産販促手法は日本と違って通信媒体でも訴求します。
また日本人相手の日系業者。媒介委託を受けていても不動産業務の経験はなく、当然基本的な共通する知識も無い人も居る。それ以上に困るのは当国の不動産事情や制度も分らない人もいて、知らずに買った日本人が多い様です。
この所、売却希望が増えたとも聞くが、そう簡単には事は運びません。キャピタルゲインを得ようとしても甘い。売りたくても売れない、売ったけれど送金できないなどの話も聞く。インカムゲインも何かと隘路があって、しっかりと代行してくれるとは限らない。現地の事情通が言うところ経験不足です。
海外で住居を持つのに憧れる人は多く、セミナーで上手に乗せられベトナムは儲けどころだと勘違いする。怖さを知らず、任せっきりの無防備はいけません。
わけの分からない業者に踊らされてはいけません。海外だけに責任は取らない。
事情を知らない者同士、こんな危険な事は無い。此処は社会主義国です。

・先ずはHCM市での住宅事情の現地報から

HCM不動産協会の資料によるとこの3年間で住宅供給が減少しているとある。一昨年はその前年に比べ6、2%減少。昨年は同じく前年比で85、1%減、今年の上半期は前年同期比で30、7%減とあります。
この主な理由は当局に拠る住宅の新設を認めない方針。肥大化する都市は受け入れ能力が限界になって来ており、制約を課し認可を厳しくしているのです。
日本と異なって業者がアパートを建てるのは簡単ではない。投資許可が要るのですが、今年半期に投資が承認・許可された案件は20件、この内新規が9件、追加投資は11件と言います。住宅難なのにこれは幾ら何でも少ない件数。
日本みたいに土地を購入、開発許可と建築確認を取れば基本的に事業が出来るというものではありません。ややこしい。それだけにほぼ業者は偏り、またそこには噂ややっかみが水面下から方々に漏れます。
問題は受託供給のバランスが崩れ、本当に住宅を必要とする地方出身者が購入できる低価格の住宅が買えない事。いまでは1㎡あたり2500万VND(約116千円)未満という所だが年々価格は上昇。この価格帯は28295戸、販売総戸数の22%程度しかありません。~4000万VND(約185千円)の中級クラスは57545戸で、44%。また高級物件と言われる4000万VND以上は43886戸、34%を占めています。
因みに私が20年前に購入したアパートは約100㎡(バルコニー面積を含む)、1㎡が約460ドルでした。売れなくて割引してくれたが、どう見ても住宅の品質はかなり低く日本の公団以下、それでも当時は高級物件と言われたのです。

・いま特に値段が上昇している地域

兼ねてから、私が言い続けてきたHCM市で残された地域は9区と、私が7区から移ったトゥードック区。これに加え2区が統計によれば平均で2016年から2019年の3年間で40%強の値上がりを示しました。
特に9区は数年前など見向きもされない沼地が多く道路も未整備、雨が降れば車の車輪が空回りという状態でした。ガラッと変わったのが、高速道路の開通と地下鉄という社会インフラの整備。10月には日立製の車両が日本から搬入され市民は初の電車に乗れるのですが、地下部分は市内の一部だけ。
一般に公開されていない都計図をみた事もありますが、地方からの転入などにより人口が急増し、これまで北と西、7区方面に拡大していた市街地のエリアが東部に移る他ありませんでした。この辺りの開発感覚はまだ残っていたので、特に9区は理由もあって頻繁に訪れました。開発を業としていた者にとっては、
ジャングルで人が住まない地域を変える仕事は魅力があります。
しかし一方で環境の破壊を生むことだってありますが、新興国で人口が増え、住宅が必要になる、質的にも向上するという使命を感じる訳です。
トゥードック区は戦争中に米軍の基地があり、市中心から少々離れて開発は遅れたが、大学もある地域で発展が期待されます。特に地下鉄が開通するエリア、主要国道沿いは急速に変貌しており、かつての長閑な面影は全く見られません。
この3つの区を合併してHCM市直属の東部都市(仮称トゥードック市)として設立する計画を行うよう、首相はHCM市人民委員会に指示しているのです。
この新市造営に関して、大学のHCM市内からの移転に拠る文教都市としての機能。ハイテクパークの形成、外資企業の効率的な誘致と技術や金融を含めたビジネス企業を呼び込む計画案も入れるとされ、将来的にはHCM市のGDP30%を此処で賄うとあります。
また先の市内での住宅供給が減少している中、都市インフラ整備と住宅建設が行われる動きが見えてきたため、これから当面不動産価格は値上がりするとの見方だとする認識が業界を中心として出ています。

・外国人の住宅購入比率が開発戸数の0,85%に修正

以前の2%から下方修正されます。これは外国人がベトナムで住宅が買えるようになったけれどそれほど多くは無く、過去5年間に1,885千戸が供給され、外国人の購入比率はその0,85%であったことからとされます。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生