フードロス問題と貧困が残る地方の現実

2021年1月8日(金)

買い物に行くスーパーの本社は大阪西成に本社があるそれなりの上場老舗企業。
本社近くには大阪人が大好きな卵1パック1円セールなど、何かとお騒がせの元気いっぱいスーパー玉出があるが、此処は超と付く程の下町で育った割には全く似ても似つかない。全体的に一般のスーパーよりも値段が高く、商品構成も他店に比べて特にコンセプトは見られず中途半端のありきたり。散歩がてらに行く程度でしかありません。
この店は賞味期限が近づいた食品を商品入れ替えのためと称してワゴンに入れ、売れ筋でないとか時期外れの商品を30%引きのシールを貼って売っている。
その傍らには、フードロスを避けよう!なんて、お飾り程度のA4サイズに書いてある文字。本気で取り組もうとしているのかはなはだ疑問で小手先だけか。
この店の副店長、大学の後輩で真面目なのはいいのだが、商売気が無さ過ぎて流通業に向いていないと心配するほど。心理学を学んだと話すけれど、高齢化が進む住宅地の住人の購買心理すら分からないのなら差別化などできない。
その日の売り切りで値段を下げて売っているとか、美味しい総菜が揃っているわけでもない。客が途絶える頃には一部の生鮮食品に値下げラベルを貼るが、思い切りが悪く、時代錯誤というか余らせている。フードロスを避けようなんてポップなど本末転倒、笑止千万。自ら率先垂範、実践すべきなのに白々しい。
ある朝、鱧を買うと当日が消費期限。ゥン?こんな筈はない。いつもは2日間記載があるので店員に聞いてみたところ、やはり昨日の残り。その日の分は売れたら出すという。勿論値段は下げていない。副店長に妙な小細工するなんてアカンヤロ、と言えば取り替えにやってきた。モノを大事にするとの観点ではなく店の鮮魚の取り扱い基準に合致せず無責任。ならばどうして当日に売り切るかを考えないのか。だからロス分を含んで値を高く付けるは、昨日の残りを黙って消費者に押し付けるは、などと思想が見えないのでは客が減る悪循環。

・フードロス

日本ではおむすび1億個が毎日廃棄されているとCMにあり、年620万トンが捨てられ、当日製造の高級パンや総菜などが家畜の餌になるとは嘆かわしい。
フードロスとは、本来食べられる食品なのに規格外商品とか、売れ残りなどが原因でゴミとして廃棄されるしまう事を指す。日本では製品そのものに問題があるより外箱が凹んだだけでも返品廃棄するなど行き過ぎだし、根本的に作り過ぎて無駄が出るのは当たり前。三分の一ルールなんて事もまかり通っている。最近は賞味期限を日付から月に変更するとか、パッケージングの改良で期限延長も可能になったが、外国は元来BEST BEFOREと印字してあり合理的です。
国連世界食糧計画では、世界で生産された食品の内30%が人の口に入らずに廃棄されているとされ、9400億ドルの損失。飢餓に直面している人が2億数千万人いるのが現実なら異常と思える一方で、飽食の国もある。いずれ食糧危機が来るのなら罰当たり。このため中国では美徳とされてきた料理を大量に残すおもてなし文化は良くないとし、習国家主席が禁止したのは結構な事です。
ベトナムでも同様の考え方なのだが、残れば持って帰ることはごく普通だし、一部のレストランは養豚業者が毎日やって来て、美味しい残飯を回収して行く。

・ベトナムでの実情と取り組み

ベトナムでは2018年の統計で食品の25%が加工工場や流通センターに行く前に廃棄されたと報じられ、この量880万トンで金額に直すと39億ドル。根菜類は32%(約730万トン)、水産品が12%(約80万トン)、食肉類も14%(70万トン)が捨てられ、これはGDP2%に相当する驚きの数字です。
先進国と異なる要因は低温物流システム、管理設備が殆どないこと。暑い国なのに輸送に伴うコールドチェーンが整備されなければ生鮮食品の傷みは早い。そのうえ、高速道路網がようやく出来つつあるが、地方での道路整備は遅れ、農場から青果物の出荷と輸送に時間が掛かり過ぎて保管もできない。こういう問題を正しく認識し、是正されなければフードロス問題は解決できません。
政府は国連サミットで採択された持続可能でよりよい世界を目指す国際目標で(SDGs)で、つくる責任 つかう責任を達成するため、食品ロスに対する地域社会の意識を高め、より責任のある食品消費を行うため、農業農村開発省が人々の行動や習慣を変えるよう呼びかけて、海外と連携し知識や経験、技術を共有するなど情報交換を行なうとしていますが、国内の物流問題を整備する必要度に高いものがあります。
此のところはベトナムでもこのフードロスに関心を持つ人が増え、政府自体が2025年までに国民の飢餓をゼロにする国の行動計画として、その重点項目に食品の無駄・廃棄をなくすことを目標に掲げています。
経済が成長して貧困率も低下しているが、それでもまだ貧困とされる地域は多くある。日本人と結婚したベトナム人の奥さんは中部の出身。山肌にある茅屋、此処は水道が無く里まで下りて水汲みが日課。農家だが斜面の痩せた農地では米が出来ず家族は養えない。仕方なく、食うために(口減らし)HCM市に来たが小学校すら行けなかったので、仕事は皿洗い程度の雑役しかない。其処に現れたのが宿縁で日本人と結婚。一人っ子は日越英中の4か国語を話す秀才に成長。ガキの頃から見てきたが海外の一流大学医学部へ進学。母親は不運な星の下に生まれただけ。成長の陰に地域格差拡大が現実にあり、地方は貧困家庭が多くて食えない。子弟は学力があっても高校へ行けず都会に働きに出てゆきました。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生