バイク事情 ホンダとヤマハの明暗

2021年1月13日(水)

・中韓製バイクは完全に沈没 浮き上がっても来ず

ネット記事に「ベトナムバイク市場、中韓は日本メーカーによって淘汰された」と掲載されていたのを目にしたけれども、何をいまさら!と思わなくない。
以前にも少し書いたが2000年頃のこと。中国製バイクが600ドル位で売られた時期がありました。当時はまだ現在のような状況にはなく、カブの中古でさえ1000ドルもする憧憬の高級品。喉から手が出るほどバイクが欲しい若者が飛びつき我もワレも手を出したが、私の友人でも遠出に出かける途中でエンジンが焼けて動かず。他にスピードメーターが動かない、排気ガスはとんでもなく黒い(エンジンが良くない)等々のトラブルが続出。こんな事で一年ほどブームは続いたが潮が引くように消えたという、お粗末なむかし話です。
また私が初めて買ったのは韓国製。ホンダ・ドリームCITYの完全コピー、即ち全くのフェイク。それでも1200ドルしたけれど所詮は紛い物。定期点検に行こうとすると販売店は既に無くなっていたという位いい加減極まります。
即ち日本企業製バイクは高い品質とサービスが充実しているから人気が高い。
しかし今は台湾・山陽の50㏄スクーターが1000ドル、安心できる日系車
でも1500~2000ドル程度で買えるのだから随分買い易くなりました。

・何故ホンダが売れるのか

ベトナムでバイクをホンダと呼ぶと旅行本にある。違いはないけれどXE GAN MAYと言うのが正しくて、それだけホンダのシェアが高いという証明です。
中国製バイクがベトナムに出現してから、ホンダが市場に投入したのは800ドル程の量産品ホンダWAVE α。だが結構よく走るので3台目に購入しました。
おかげでベトナム国内の部品メーカーはコストダウンを要請されて泣きの涙。
参ったね~、とEPZの日系部品企業責任者が話していました。
このホンダ、1997年12月にベトナムで操業を開始して以来、今年10月29日には累計3000万台を生産しました。このモデルはWinner X、まさに名前が勝利を象徴しています。現在は国内3カ所に工場、部品センターなどが稼働しており年産250万台。現地の人に拠ると万一故障しても部品は何処にでもあって修理が直ぐできるし値段も安いといい、これが人気の理由であると話す。同社は整備の教育訓練ができており、これは現地販売代理店を見れば直ぐ明らかになる。2019年度ホンダの国内シェアは79%に及んでいます。
勿論この他にはスズキも点検メンテナンスで定評があり、カワサキの50CCも一定の人気を保ち、ヤマハにもNOUVOシリーズ、JUPITARが根強く安定。他にはイタリアの高級スクーターPIAGIO、台湾のSANYANGはリーズナブルを強調。
高級バイクは憧れでありステータスです。ベトナムでは自動車が増えているが、未だにバイク社会。これが無ければ仕事も出来ないほど交通インフラは劣る。

・外国人への取り締まり強化

因みに50CCまでは免許は要らない。ところが此の所、外国人の違反検挙率が高くなり、集中取り締まりを行った2週間で100人を検挙、その内の殆どが免許を持っていなかったという。またヘルメットの無着用、通行帯違反が多く(ベトナム人も多い)今後罰金を含めて強化するとし、今年1月に増額されました。とかく欧米人は背丈に身なりが目立つので捕まりやすいのが難点。
もはやアレコレ身振り手振りで外国語を並べ立てて、分からなフリをした事や、手っ取り早くホーチミンさんを握らすのが通用しなくなったということです。

・どうしたのか ヤマハ

ごく最近のこと、名門ヤマハ発動機が二輪車の事業構造改革を行うとの記事が。
ヤマハの2019年度二輪車の販売実績は505万台。ホンダ(1959万台)、
インド・モトコープに次いで世界3位。しかし台数はともかく収益面で問題があるという。この年の二輪車営業利益は379億円、利益率は僅かに3,9%。
欧米などではスポーツタイプを中心に販売しており、新興国ではスクータータイプに人気とあるが12年連続の赤字。ベトナム、インドネシア、タイを中心に売り上げの約80%がほぼ東南アジア等の新興国、欧州は僅かに20%程度と言います。新興国では何とか黒字だが、足を引っ張っている欧州で142億円もの赤字を出すワリの合わない話。
このため子会社としてバイク用エンジンを年間8万基製造しているイタリアのモト―リ・ミナレリ社を、同国の二輪車メーカーであるフィンテックモーター社に譲渡すると報道されています。
これに対してホンダは二輪車事業で2856億円もの営業利益をたたき出し、その利益率は13,9%になるというから他を寄せ付けない。規模が圧倒的に2位以下を離し、現地でローカライズした開発、生産の強化を行っている。部品の共通化を行い、なおかつ税金の優遇措置もあるけれど、現地企業の部品生産強化が効果的経営に繋がっているとされます。ベトナムでは国内部品調達率を60%に引き上げてきた結果で、地場企業の部品もこれに拠り品質は上がり、安定してきているのが実情。ホンダはこうして独り勝ちの状況であるのです。
さらに今年はCOVID-19の影響で東南アジアでの市場が縮小。このため厳しい経済環境が続く見通しであり、また車社会へ移行してゆく中で新興国での市場は縮小され、販売は将来的に盤石では無くなり一層販売台数が減少し売り上高、利益も減少すると予測されます。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生