ベトナム農業 近代化へ ②

2021年3月20日(土)

カントー大学農学部では、オーガニック栽培はこれまでの作物に比べ20%ほど
生産量は低くなるが、利益は47%増えると計算。またメコンデルタの自然下での栽培は農産物に適合していると評しています。
こうした南洋の果実や米、野菜を多く使うベトナム料理はヘルシーで美味というイメージ。さらに健康が加わるという事で体重も「へるし~」という訳です。
健康志向で人気が高まって来た昨年2020年をオーガニック農業元年として、
海外へ徐々に輸出が増えてきた農産物を増やす企業が出てきたと言います。
このためカントー市で米を栽培するA農業社は、オーガニック米の生産を増強するため農地を2倍以上に拡大、昨年発効したEVFTEを有効に活かす事でヨーロッパへの輸出拡大を計画。このためヨーロッパの有機認証であるECOCERTを取得した位に意欲的。他にオーガニック野菜を加工してスープ用のパウダーを製品化する等、新しい農業ビジネス・モデルが生み出されているのです。
このような動きはこれまで無かったので、企業がビジネス機会を上手く捉え、発展する成功事例として、新たな輸出先開拓への大きなヒントになります。

・地域と行政が取り組むべき課題はある

しかしまだ事業は始まったばかりで、地域全体での取り組みはこれからの課題。
生産者の多くは個人や規模が小さいため余裕がない。日本のように全国的組織があり指導を行うものでもない。こまめに手入れをして良い物を作ろうとする気概より、農民は種を撒いて収穫し、地力の回復よりも直ぐ同じ事を繰り返す。果物は放って置いても毎年のこと、たわわに実を付けてくれる。こういう先祖から受け継がれてきた緩い慣習のまま、殊更に知識を得ようともしない。輸出するにも相手国の法律や規制を調べず不勉強、国内同様に考えているのが実態。
地域全体で一般の農民もこぞって参加しなければ、有機農法は認証されない位に厳しく、世界的にもオーガニック作物として受け入れられません。こうした状況を生産者は謙虚に真摯に捉えなければならず、意識改革が一番大切です。
また企業としては商品開発や品質管理のためにはさらに投資と経験が必要だし、時間がかかると農業専門家は見ています。
昨年起きた深刻な塩害や干ばつ、さらに農業用水と土壌の質の改良、従来から化学肥料や農薬を多用する傾向がある農業生産者の意識。こういう問題を地域全体で取り組み、改革されなければベトナムの農業、農業生産物が安全であり、安心して口に入れられるとの認識は消費者に広がりません。
カントー大学はこれまでに多くの優秀で国際的な専門家を輩出していますから、
産学共同でよりよい農作物、加工食品が生まれるものと期待できます。

・ベトナム産米が評価される

昨年アメリカで開催された世界の米コンテストで、ベトナムの代表ST25が2位となったとの報道がありました。一位はタイ、二位カンボジア。
この米、一昨年には一位だったそうで国内では快挙とされ、普及へ期待が高まっていると言います。
この品種は米どころ・メコンデルタ・ソクチャン省の米生産農家クアさんと、地元企業HQ・トリ社のタッグで開発したという。しかし、審査内容などは報じられていないので詳しい事情は分らないので、何とも言い様は無いのだが、取り敢えずは成果としてみてもいいだろう。
ベトナム農業農村開発省は国家ブランド米として流通するよう、この利用権を移管してもらうとある。
ソクチャン省は奇しくも同じ名前のルン・ディン・クア博士が出身の地。九州大学、京都大学へ進み、京大では木原均博士門下生として99番目で、外国人初の農学博士号をとった優秀な米研究者が居て労働英雄になったほど。惜しくも若くして亡くなったが、意思はこういう所に受け継がれているのです。

・農業先進国への目標

政府はベトナム農業を世界で最も先進的な農業国上位15か国、世界の農産物加工大国トップ10位に入ることを目標にしています。
このため農村の再構築を行い、農村の半分を新型農村エリアとして先進的農業を行う地域に転換してゆく計画です。
首相指示事項として農業の創造性を駆使し、不必要な組織や制度を撤廃。よりよい結果を出し、目標達成を要請しています。また市場の発展と需要・供給の的確な予測が不可欠であり、農産物ブランドの確立と、野菜果物等と加工品の新たな輸出先開拓を優先するように通達しました。
農業人口が減少。若者は農業を継ぎたくないので都会へ出てカッコ良い仕事に就きたい。こんな状況なので農村の改革を行おうという姿勢がみえます。

・2020年 農産水産物輸出目標達成へ

農業農村開発省は2020年度の目標である輸出目標410億ドルは超えたと予測しています。
米・中・日本、EUなど200の市場へ輸出し、東南アジア2位、世界15位の輸出国になったようです。日本へはライチを初輸出。COVID-19禍でも米の輸出は大きく伸びたとしています。ニーズが高まり2020年末には1トン505~520ドルになり、EU向けは自由貿易発効で前年比約17%伸び好調であり、
加えてアジアのコメ消費国でも需要がひっ迫の様子。
引き続いて兼ねてからの輸出先である、アメリカ、中国、日本市場へ拡大機会を狙っていると言います。
しかし米価格が高騰し過去最高値に達した結果、輸出に回してしまい国内では米不足になったというお粗末な話。逆に不足を招いてしまい慌ててインドから1月初旬に7万トンを輸入契約する羽目になったのです。此のインドの米価格1トン375~380ドルでFOB契約だとか。
目先の利益優先、計画的に事業に取り組まない国民性が露呈してしまいました。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生