ベトナムの製造業がCOVID-19下でも好調に推移している指標の一つを挙げると。PMI指数が4カ月連続で上昇しており、2月には54,3ポイントとなった。2011年に60ポイント近くまで上がり、その後50~55ポイントとほぼ順調な動きを示していたが、2020年前半には約33ポイントまで落ちたが、2022年1月には53,7Pと回復傾向に戻り、引き続いて好調に推移すると楽観的に捉えられています。
PMIは製造業やサービス産業の購買担当者を対象に調査し、企業の景気感を示す指標と言われ、50を分岐点にして善し悪しを判断するとされている。
ベトナムのビジネス現況は、この数字の上からみて改善されつつあると言えなくありません。
理由のひとつは国内需要の高まりが原動力になっており、毎月の受注量が確実に増えていることで、過去10カ月間で最高の増加率を記録したとある。
さらに2月には海外需要が好転して輸出も急上昇。こうした21年4月以降、新規需要の増加と安定したビジネス環境により、5カ月間連続で生産量が増え其の増加率が顕著に表れているとされます。しかしベトナム企業は原料調達や質的労働力確保が今なお限られているとされ、思惑通りに生産が回復できるか疑問視する向きもあり、市民は日毎に物価上昇に悩まされ、一部でストが発生。
もう一つの懸念とはサプライヤーの値上げで原材料の価格が上昇していること。特に原油価格の急上昇は世界的課題であり、こうした要因から製品価格へ転嫁しないと食えないが、値上がりが家計を圧迫。こうした状況に果たして消費者が納得してくれるのかといえば甚だ疑問。各企業は景気回復を見越し、強気に出て原材料調達を増やした結果、思った程捌けず在庫のみが膨らんでいると聞く。また工場内の完成在庫に流通在庫も過去最高。こうなるとただでさえ事業資金に事欠く企業が多い所に販売好調と勘違いして手元に資金のない状況が加われば単なる数字上の黒字マジック。
ワールドワイドで戦略を考えるとか、国内市場や消費者のトレンドやウオンツを計算しているのだろうが、売れる時に売っておこうとか、深く考えず目一杯に原材料を仕入れた目論見が外れた事態となっている可能性も排除できません。
・株式市場からみると
HCM証券取引所に上場している企業の全株式時価総額を加重平均した指数は順調に推移し、本年度中には1600ポイントを超えて過去最高値を更新する可能性があると株式専門家が見ています。
実は昨年度、外国人株主は売り越したが過去最高額の約62兆3500億ドル(43億5千万ドル)。これは経済が低迷したことで失望売り転じたと考えられるが、国内はそうではなかった。新たな株式取引口座が実に約150万増加、過去4年間における新規口座を上回ったとされます。
口座総数は証券成熟国からすれば寡少ながら274万件となり、取引が大きく増えた事が功を奏しインデックスが上昇したと言えます。
この個人口座は口座全体の99%を占め、人口の僅か2,8%に過ぎず今後さらに増加する可能性があります。取引金額も増え、株価に大きく影響するものと思える。
国内機関投資家はまだ少ないし、外国人株主の口座数も僅か35,000にしか達していないが、これを見る限りベトナム株式市場は拡大する可能性が高く、世界の投資家が大きく期待できると考えてもいいかと考えます。
この個人口座が急増した理由のひとつには不動産価格が高騰、一般市民は購入が難しくなった。伝統的に自国通貨を信じず、安全とされた金より、現在では株式に期待する個人株主が増えたと考えられる。
HCM市の証券取引所が出来た当初、株式分割や株式配当が頻繁に行われたので誰もが黙っていても儲かったが、その後ご祝儀は無くなってメリットが無い時期が長く続き、おまけに通貨VNDの対ドル下落が顕著に表れていたことも低調の原因にあるとみていい。
だが最近、外貨積立額が1100億ドルと5年前の約4倍にも膨らんでおり、もはや下落する心配もなくなってきた。
こうなると一般市民は黙っていられないのが人情。貯め込んだ小金を元に我もと口座開設に走ったとみるのが正解かも知れないが、個人投資家の関心や信頼度は低く、金融知識もあると思えず、上がった・下がっただけで、一喜一憂の思惑売買。正念場はこれからと考える。
識者は今年また外国人投資家が戻ってくるとあり、こうなると経済回復に弾みが付いて外国企業の投資が流入。加速する一方となればもしかするとそれ以上の指数を見ることもありそうな気配が感じられると皮算用。
昨年の株価は好調さが目立ったとある。それは先記の如く個人株主に拠るものだが、2021年12月末にインデックスは2020年に比し35,4%と高かった。またハノイの証券市場でも125,5%も高くなったことが証明。
そうするとベトナムの株式市場における時価総額は2020年に比べて46%も増え、7729兆VVD(約3400億ドル)に達する。これは2021年度の国内総生産の92%になるとんでもない巨額です。
今年はさらに勢いが付き年明けから株価が上昇。時価総額は5700兆VND(約2500億ドル)と昨年のGDPの約69%に達した。
この理由、HCM市人民委員会は市が国有企業の民営化を促進すると表明。
期待が膨らんだ説もあるが、株式上場と利益獲得への期待感。噂はつきものだが真偽の程は分らない。
さらに市の方針としてにわかに浮上したのが、HCM市を世界的な金融市場にするため、2025年までにHCM市管轄のトゥドック市トゥティエム新都市に国際金融センターを建設。コモディティー市場の開発等を進め、30年には世界の国際金融市場でトップ50入り、45年に20位を目標にすると公言。
目標設定は良いとして、現在の所は国内個人投資家が重要な牽引役となり株価上昇は続くが小商いの域を出ず、機関投資家が育っている訳でもありません。
2月まで良かったにしろロシアのウクライナ侵攻で、この先親露国ベトナムの経済に与える影響はどうなるのか。貿易額はわずかだが、予想は難しい。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生