知人夫婦が自宅マンションを売り大阪市内中心部に転居すると言うのです。
私が東京から転勤で戻って来て、家内の実家に近いマンションを購入したのは30歳半ば。共に入居したが、其処から私が移転しても彼らは住み続け、この間も親しくしていました。と言っても車で10分程の距離。
既に子供は独立、定年を過ぎても仕事をしていたけれど、主人が転倒して骨折、奥さんも定年後は暫く仕事をしていたが、いよいよ以って辞めることとなり、する事が無くなった。新築で購入しても既に36年経つとなれば何かと問題が出て来るので潮時と思える時期でもある。
其処へ会社を経営する息子から同じマンション棟に住もうと声が掛り、今更と思いつつ、2階の2LDKを買ってくれたので夫婦は嫌と言えず引越しと相成ったのです。
この辺り高層マンションが急速に建ち付近はビルも多い。大阪駅へも、繁華街である心斎橋など南にも地下鉄で2駅、極めて便利な立地。問題はやはり商業地域での日当たり。それまでの住居と違い陽が差し込まないので2階は明るささが気になる。しかし其処しか2LDKは残っていなかったと言うが、郊外の駅から徒歩圏の新築一戸建てを購入してもお釣りが出るほどの結構な金額だと聞き及ぶ。
70歳台になれば都心への回帰は選択としては正しいかもしれないが、夫々の住まい方や人生に関する考え方は自由。
そこにタワーマンションについての記事が掲載されていた。即ちこれまで住宅選びで日本人は一般的に南向きが良いとされ好む傾向にあったが、いま流行りの超高層マンションは眺望が売りだとか。南向きよりも眺望重視で北向きや西向きを選ぶと言うのがセオリーとある。設計にも拠るけれど、開口部を広く採ってある物件なら、室内には季節を問わず強烈な直射日光が入ってくると聞く。従って光熱費は掛らないが、明るさは採れる北向きが良いと考える傾向が高くなっており、これは賃貸や売買をする場合でも顧客が望むとあります。
眺望代が価格に反映されるのだがこの眺望権というのが厄介な代物。開発許可や建築確認を得るためには地元説明会を開催し、同意を得なければならないと何れの行政でも開発指導要綱に記載されており、これが無ければ許可が下りないこともあるし開発を断念すると場合もある。
住居地区で先に建ったマンションの住民が眺望権を盾に訴訟を起こし、減築したこともあるけれど、中には日照権を盾にとった方が負けた判例もあります。これは受忍限度の時間に拠るものと解せるが、法的基準に合致している場合、余りにも行き過ぎた権利意識を戒めたのだと思える。
こうした超高層マンションを購入するお金持ちは、快適さとか使い勝手の良さよりも眺望がいい夢の空間を買ったと言えるし、非日常さを独り占めして観光気分に浸れる人なのか。かといっても未来永劫に保証できるもので無く刹那的。殆ど生活感のない寒々しい空間と思えなくない。俗っぽい見方だが季節の移ろいは感じても毎日同じ風景を見て飽きないと感心するがアキは必ずくる。
愛着などなく専ら投資として、あるいは利回りの良い賃貸物件用とか節税対策なのかもしれません。それよりも考えなければいけないのは、憧れだけで買うものではないとはっきり言える。区分所有法の改正もある様だが、時が経てば人は入れ替わり老化してゆくのは自明。
そうなると日々の生活に支障が生じるし保守管理費用もばかにならない。こういう大建築物の大規模修繕をどうするのか。想像できない莫大な費用が待っているが負担に耐えられるのか。
・不動産選びは慎重に
一般の人は投資用不動産を購入する事は滅多にありません。一時ワンルームを投資用にサラリーマン層に売る会社もあったけれど、やはり落とし穴があった。
地価がどんどん上昇すればまだ良いが、しかし売り時を逃せば買い手が付かず大変な目に合います。節税なんて計算通りに行かないため騙されないこと。
先ごろ解体で話題になったのは黒川紀章さんが設計した「中銀カプセルタワー」。
この販売時、私は開発を手掛けていたがとてもこの思想には付いて行けなかったほど素晴らしいもの。時代の先駆けである斬新な設計思想とカプセルを縦横に配置。これを入れ替えられると言うものだったが、こういう実験的建築物は置いといて、万国で共通するのは立地(アクセス)、環境、外観デザインと建築資材の良否、これで品格が違ってくる。また間取り(導線設計)、設備、価格も決め手となり付け加えるなら地盤の問題があります。日本でも傾きがあって、専門家が調査すると杭長が支持層に届いていない重大な施工ミス。建て替えとなったので、杭が無いのにクイは残った。
また不動産業者や建築業者の信頼度も大切な検討要因となり、これはブランドとしてその設計思想と施工能力(品質・精度)は格段に異なり、もちろん価格にも跳ね返ってくる。だとしても資産性と換金性、即ちいざ売らなければならなくなった時に優位性は明らかに差としてでる。
ただ将来的な発展要素。これは予想できず、時間が掛る。事前にこうした都市計画が一般の人には分かるものでは無いため先送りしなければなりません。
敢えて言えば、地震で問題になった南武線の武蔵小杉駅の、今はすっかり変わって周囲は近代的タワーマンション群。私が近くに居た時は高層住宅開発など絵にも描けなかった所で、こういう時代の流れは誰も読めません。
以前にも書いたが、不動産を買う時は売る時の事を考えて選ぶのが心得。
また欲をかき過ぎてはいけません。ある不動産会社の課長。自分の住む場所の足許が分かっていない。既に移転先を購入済。〇千万円で売って、ゴルフ会員権を買ってなどと儚い夢をみる。知り合いの仲介業者にもう天井近いと聞き、忠告したが聞かない。結果は大きく下がり始め、ローンを組む羽目に。まだはもうなり、もうはまだない、不動産も株も通ずる。
・ベトナムで 方位に話を纏めると
私が現地で購入した新興地域のアパート。仔細は省略するが4階建ての2階部分の約99㎡、3LDK。LDKは南向き、主ベッドルームは南と東に開口部と南面バルコニー。2部屋が北向きで、うち1部屋は東に開口部。水回りは東に開口部とサービスバルコニーという間取り。ベトナム人に何故南向きを買ったのかと聞かれたが、彼らは暑いので北向きにすべきだったという。
但し西側は強い陽が入るのと、雨季は激しい風雨がある。当時現地で使っていた中国製サッシでは抑えきれず雨風は部屋に侵入するため、西側に主開口部がある物件は避けるのが賢明です。
南向きの問題。緯度にも拠るが太陽高度(仰角)は、大阪市で大体の目安として夏8月の12時は70度位、冬2月は同42度程の角度で太陽が入ってくる。
日本家屋はこうした自然を上手く取り入れるため広縁を設え、採光のため窓などの位置も考慮している。こうしたことから家相学が発展したと思えます。
ではベトナム・HCM市はと言えば、同じ条件で8月は3度位(18:30で最高仰角約81度)、2月マイナス4度位(同約67度)となっていて、大阪と異なる。実際には陽は時間の経過と共に西へと移るので陽は差しこまなかった。
これは計算上だがかなり正確、緯度経度を入れれば毎日の動きが出てきます。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生