・混乱した株式・金融市場に、不動産市場もとうとう失速・墜落か
現地報では昨年の株式市場はまるでジェットコースターだったと表現。激動の一年だったとしています。
2020年から好調に上げてきた株価。昨年1月のインデックスは1528とピークに達し、この勢いは止まらないとほくそ笑んだ人は多かったのです。
しかしこの後には横ばいの状態が続き、4月以降は急速に下落し始めた原因は、ロシアのウクライナ侵攻に拠るサプライチェーンの混乱。さらにエネルギーと一部の国では小麦の供給が滞って食糧不足が起き、世界の主要国でさえこの先どうなるのかという心理的不安要因からインフレが進み、ベトナムに於いても同じ経済環境に置かれたため株式市場は安値に転じました。
第2四半期には株式操作と債券詐欺容疑で主犯格が逮捕され、このため不動産株が軒並み下落。6~7月にかけて市場自体を下落に追い込んだのです。
8月には1150P、さらに世界はインフレや景気後退予測が出てこれに反応。
指数は低下を続け、11月に2021年10月以来の約900Pの安値を付けたが、昨年末は1007P前後をウロウロしている状況となっています。
社債はこの所ベトナムでも人気の金融商品のひとつになったのです。ところがこれを悪用したのが資金繰りに困った不動産大手。小さい企業なら発行も出来ないが、これ等の件に関しては後頁に不動産関連のコラムに載せています。
さてこの事件とは、ハノイに本社を置く大手企業とか。10兆VND(約4億1500万ドル)もの債券を発行したが、何れ犯行はバレるのに、お粗末にも詐欺行為に走った容疑で会長始め幹部5人が軒並み逮捕されました。
また10月にも別の不動産開発会社が数兆VNDの債権発行と取引に関連した詐欺容疑で逮捕。このため債権買戻しの動きが出て波乱を起こしたのです。
財務省に拠れば、買い戻し額は前年比の14%増し、161兆VNDもあったとするが、満期前に買い戻したのはこの事件が債券市場に悪影響を及ぼし、完全に信頼を失った外ありません。株式取引所が開設されてから早や20年を超え、金融商品の幅も広くなったが、債券市場が不安定になれば多くの企業の経営にも影響が出て来る。しかし当局見方は一時的なものであって長期的には安定して持続するとの見解を示しています。他の健全な企業はこうした返済に驚いたと思うが、よくも返せる資金があったと筆者はむしろこちらの方に感心する。
ベトナムはまだこんなレベルとみるのか、将来性を感じるか。投資に慣れていないベトナム人にとれば未知の分野に等しい、だがあくまでも投資は自己責任。
・ガソリン供給不足
11月中旬にハノイとHCM市内のガソリンスタンドが大規模なガソリン不足となり、早朝から深夜まで給油を求めた客が長い列を作ったとの報道があった。
よくも30分以上も真面目に並んだなと思う位だが、都市交通インフラが充分整備されていないベトナムではバイクが市民の移動手段。バスはあるが終便は遅くても20時台が普通だし、実質的に時間表など無くいつ来るか分らない。
これでは仕事にもならないし、通学や買い物などでも使い勝手は多分に悪い。かつて道端でガラス瓶に入れたガソリンを売り、僅かな銭を稼いでいた人々がいたけれど意外と便利。何度かお世話になったけれど、多くの日本人駐在員には専用車があるのでこんな超アナログ的な街の風景、恐らく知らないでしょう。
地下鉄はHCM市でようやく試運転に入ったけれど、それでも1本の路線のみ。この先何年待てば計画中の路線が完成して、バイクに頼らずとも駅ターミナルを拠点にバス便が使える時代がやって来るのか?だが資金難が付いて回る。
さて記事にはガソリンスタンドでは資金難と供給不足の為、数百ものスタンドが閉鎖されたとか、販売制限したとありました。売れるほど赤字が増えるため、アホらしくて事業を続けられないとの業者の言い分、不満はごもっとも。
ベトナムにも日本の支援を受けた製油精製所はあるけれども、需要に充分対応できないため輸入しているし、巨大な石油備蓄基地があるとも聞いていない。
燃料販売会社はガソリン価格を勝手に決められず損失が出るとして、チン首相に直訴状を送付。これに対して迅速に対処するようにと行政機関に指示。また多くのガソリンを輸入する様に命じたのです。この所は価格が下がっており、20700VND(115円)と落ち着いてきたが、昔ほど安くありません。
末端の現場の実態を知らないのは何処の役人も同じだし、トップにも分らない事はあるにしろ、直ぐヤルは我が政府に見習って欲しいが、聞く力すらない。
・預金金利の引き上げ競争へ
昨年の銀行金利は低水準から年末にかけて数カ月、上昇しました。年初4カ月、個人預金額は120兆VND(52億ドル)と増えたにも関わらず、預金金利は銀行に依り若干異なるが3~4,5%と、2019年末から1,5~2,5%下がったのです。だが中央銀行が9月と10月の二回、政策金利を6%と2%も上げたため各行も金利を上げました。市民は受け取り利息が増えると単純に喜ぶが、企業は支払利息が増える一方で業績に響くとのトバッチリで渋い顔。
米ドルのみが強く、ベトナムや多くの国でやむを得ず政策金利を上げる方向に振れたが、日銀総裁はガンとして脇目もふらずに独歩状態の極み。しかしもう限界と踏み0,25%として来た長期金利の変動許容幅を0,5%に変更するが、事実上の利上げと解されるのは誰でも承知。丁寧に市場と向き合い説明せよとの社説に同意です。
金利が上れば外国の投資家は資金を引き揚げる。国債価格は下落、金利上昇の悪循環が起きます。重みは夫々に異なるし功罪も付き纏うが、日本経済をこれ以上減速させないのが賢明。
むしろ50%以上もが日銀の国債保有し、増加の一途は異常で、国債償還費の35%は孫子に負担を強いるだけ。首相はNISAの限度額を増やし国民に投資を呼びかけるが、これは給料を当てにするな、汗水垂らさず不労所得を得て自分で稼げと言わんばかり。こんなことをすれば一億総退廃。
次世代に向けて人への教育、IT人材育成や科学技術の振興と、積極かつ長期の投資を行わず、世界から遅れる一途。人口が減少する一方で、また生産性が低下しているとされる中、未来への志向と理念に戦略が何一つ見えて来ません。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生