ベトナムが要求している外国直接投資の内容とは一体何か。これはハイテクと最新のサービス分野にフォーカスするとしているのです。
この中で最も望んでいるとされるのがアメリカ企業の進出で、本心から歓迎したいとの意向があるとするのだが、まだまだベトナムの受け入れ体制や準備は整っていないと専門家が語っています。けだしこれが実態(真実)なのです。
またEUとの自由貿易協定が発効してから2年以上が経過。しかし予想に反してベトナムが期待するだけのFDIを誘致するに至っていません。これは現地の発表する投資総額が物語っており、欧州統計局のデータではEU企業連合の対ベトナム投資割合は、EUが割り当てたFDIの僅か2~5%に過ぎないとある。この理由は何処にあるのでしょうか。
これに関して元計画投資省の長官であったThang博士は、先進的で近代的な技術プロジェクト数だが、EU各国やアメリカから提供される技術は極めて低くわずか5%。ベトナムへのFDI案件は現在主に中規模技術であり、しかもその大半は中国から来ており、最大15%は時代遅れと指摘している。
また大規模技術は少なく、これまで約26億ドルのプロジェクト案件しかない。
これ等は総投資資本の70%を占め、残りは小規模か零細プロジェクトだと分析しています。
これをどの様に見るかだが、相手国・地域がベトナムをどう評価しているのかであり、それからするとそれだけの能力しかない、との判断でしかありません。彼らが思うような高度な技術など提供できないとする結果でしかない。というのが本音のようだが、受ける方としては自国の置かれた現況を考えず、もっと先端技術を提供して貰いたい、不十分だと言いたげで屁理屈を捏ねている。
ベトナムとしてはこの様な状況から、誘致をどのように受け入れるのかだが、難しい局面としながら、多額の資本と技術移転の基準を満たして欲しいのは言うまでもない。大規模プロジェクト、高度な技術、国内へ拡散するとの目標を確実にしたいと考えているのです。
というので計画投資省は、外国投資の有効性を評価するため基準を提案したという。これは内容的には25の指標、7つの社会目標、4つの環境指標を含むとしているが、これを作って果たして消化できるのか。
Thang博士は基準を持つことは重要で、安全保障と社会に大きなリスクを負うことを排除するためにフィルターは必要という。しかしこの考え方は殆ど空論に近く、現実には西側諸国からベトナムが望む様な先進・先端のハイテク技術だけ受け入れるというのは虫が良過ぎて話にならず、無視すべき。
だがThang博士はまた、ベトナムがこれらを要求するだけの準備が出来ていないとも述べ、投資家の必要とする高品質な物流手段やそのシステム、高度な労働力を伴う事業環境を整備できていないとする。もし本気で投資が行われるなら多分受け入れなど難しい。地方にどういうインセンティブが用意できるのか、即ちインフラ整備、許認可の短期取得などだが、現実このような大規模プロジェクトは現実として数年かかるのがネックと指摘をしています。
結局は受け入れるだけのモノは何一つないけれど、過大な要求をするだけで、無い物ねだりに終始している状況を言い当てているだけの話。であれば何故、これまでに自主努力で技術開発や研究をしようとせず、また必要とされる高度人材を育成してこなかったのか。手っ取り早く海外に頼ろうとするのかです。
百歩下がって意欲は認めよう。単純な物作りや組み立て生産はもういい。実際には現場での実態とかけ離れた格差は多々あるけれど、自国では何もできない。
高度な先進先端技術だけ持ってきて投資して欲しいでは分不相応でしかなく、対処もできない。タダ働きするほど、そんなに世界の企業は暇でもなく、自社で開発した技術やノウハウをいとも簡単に教えるほど甘くありません。
こんな中でアジアの国々でも半導体を製造する動きが出てきて、これには海外企業が、例えばシンガポールで工場を建設しようとする計画も出て来ました。
この半導体分野にベトナムも注目していて、HCM市クチ県にあるサイゴン・ハイテクパークで半導体チップ製造の基盤作りと発展を目的とし、チップ設計センターが設立されました。これは半導体チップ設計の人材育成を進めようとの動きがあり、2022年にサイゴン・ハイテクパーク管理委員会とアメリカ・シノプシスト間との協力合意で設立されたのです。
善は急げとセンターではHCM市半導体製造協会を通じ、ベトナム南部8大学の電子系学部から選抜された優秀な学生を講師として養成する教育をスタート。最初は24人と少数だが、此の人材養成コースを大学や企業でも実施する計画があり、ベトナムも半導体産業の仲間入りを積極的に目指す方向であることを示唆しているのです。
工場を建設するとなれば莫大な投資や高度人材が必要であり、根本的に製造に関する装置や素材をこの国で賄える筈がありません。従って若い人たちの能力を設計という分野で活性化させようと考えたという訳です。世界の動きに遅れないようにいずれ戦略を構築してくる可能性はあるかも知れません。
こうなると協会とか一企業だけに拠る、なまじの方針では何ともなりません。半導体分野の進歩・進化の速度は驚く程であり、これは先進諸国間の競争でもあるが、技術や研究者の蓄積がない中でこれに開発と研究の拠点を自助努力で成し得ることが可能なのか。政府がどれだけ本腰を入れて産業の構造転換をする積りがあるのか。その費用と人材の育成を成し得るか本気度が試されます。始まったばかりではあるけれど、どのような試練が待ち受けているのか。時は待ってくれないが流れに乗れるのか。これまで通りの状況をみると、あるいは下請けに甘んじてしまうのか。であるが見通しは厳しいと考える。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生