ベトナムでタトゥーが増加

2023年11月16日(木)

日本は外国人観光客がこのところ急増している。旅行・観光関連業者は良いとしても、いわゆるオーバーツーリズムで迷惑を蒙っているのが地元住民です。
このところ郊外でさえタクシーを呼んでもなかなか来てくれない。この原因、運転手が辞めて戻ってきていないからというが、主な原因は高齢化だとある。一旦職を離れるともうシンドイし安全に気を遣うのが嫌。でも給与は高くない。
市中心部などもはや公害みたいで、歩き食いとか大きなスーツケースをバス・電車に持ち込んでくる。おまけに座席に置くなどマナーは欧米人でも良くないことに辟易する。これが通勤時間帯であれば乗れる筈がありません。来日した知人のベトナム人は京都駅のロッカーに荷物を預けて共に街並みを散策。
観光地でも全ての土産物店が喜んでいるかと言えば、実はそうでもありません。報道する側の切り貼りでしかなく、都合のいい部分だけ記事にしているのです。
官公庁はやっと腰を上げたが、こんな事は起きる前から予測出来ていた。だが現地の事情や海外の有名観光地で起きている公害実態に目を瞑るとか、現場に疎い役人は机上でインバウンドの観光収入を増やすことだけしか考えていない。
だから実際に何が起きているのか、在住者の困惑をさっぱり理解していません。
これから外国人観光客は地方へ移動する。多くの海外航空はもうすでに日本の地方線を増便しているため、何れひと気が無い地域でも飛び火して行きます。早急の対策をしなければならないが、もはや人災ともいえる対策・備えは如何。

そこに来て夏、外国人が腕に彫ってやたらと目立つ刺青。銭湯や温泉は彼らにも人気だが、入浴を拒否されるのは当然です。文化風習に気候風土は違うが、これは差別でなく、社会教育の側面もある日本の伝統文化であり公共の場でのマナー。尊重し従わなければならない。オマケに水着着用なんてちゃんちゃらアホらしい。嫌ならわざわざ日本まで来て湯あみしなければ良いだけの話。
因みに元来日本には混浴文化がある。この所、性的な過剰意識を気にして銭湯では年齢制限を設けるが、日本人は歴史上、性にはかなり奔放で鷹揚でした。
さて刺青者の入浴が、いつごろから禁止されたかは知らないが、子供の時分は家に風呂が無くほぼ毎日の銭湯通い。仕事終わりの職人風年配者は背中全体や腕にクリカラモンモンを入れていた。下町の普通の光景であり、特別違和感を持たなかったけれど、時を経て恐怖の原因になる。即ち反社の人がするからと言う訳で、銭湯などで大っぴらに見せる事が駄目になったのではと思えます。
とはいえこれは日本の江戸時代でもひとつの職人の大衆文化であった。しかし遠島送りの罪人などに、左腕に二本線の刺青を施されたし、東映の任侠映画では役作りで誇張していたので、きわどいイメージが蔓延したのではと考える。
しかしながら、何事も時を経れば考え方が変化してゆくのは仕方ありません。
日本ではごく近年、彫師が刺青をするのは医療行為だとして罪に問われた事件があった。これに対して裁判所は伝統文化であり、医療行為ではないと判断したが法的に整合性はなく、好き嫌いは別にしても正当な判決だと考えます。
さらに世界的にも古代遺跡から証明される所、呪術的意味があり、魔除けでもあったし、身分の高さを象徴していました。
しかし現代の日本社会で刺青は受け入れられているものではありません。

さてベトナムでも急速に若者の間で刺青が多くなったとの現地報をみて驚いた。
記事にはHCM市に在住する一人のタトゥー・アーチストの話題を取り上げていました。アン氏と言う刺青師は以前広告代理店のイラストレータであったが、副業として得意の絵を活かしてアルバイトで刺青を彫っていた。しかし6年前に会社を辞めて独立、成長すると見込んでビジネスとして開業したとあります。
開店当初は日に1~2名。ところが今では何毎月100~200人に施術しているという。こうなると人を雇わなければ追い付かない。そこで現在は7名を採用して対応している。もはや事業、彼は店舗展開を計画しているほど繁盛。
すでにタトゥー協会と名を冠したものがあって、それによるとHCM市内には1000軒もの店があり、年に30~40%増えているというからすさまじい勢いの伸び。今日も何処かで毎日新しい店がオープンしているのです。
2012年には30社あった模様だが筆者は全く以って知りません。またこの時には刺青師が70名だった。しかし現在11年経過して100社、刺青師は250人いる。しかしこれだけではなく地下営業をしているとか、店を持たずに特定の個人客だけを相手にする出張形態もあるとの事で、実際はこれ以上の人達がこの仕事に携わっています。

では何故多くの人がこの仕事を選ぶか。それは収入にあって、平均だと1億5千万VND(約6200ドル)と高い。これが人気のあるアーチストであれば3億VND(約12,500ドル)~5億VND(約22,000ドル)ともいわれるので辞められる訳がありません。
これはベトナム人の性格もあるが、新しい事には目がなく、また儲かると聞くと今の職を辞めて開業する傾向もあります。だがきちんとしたノウハウや技術がある訳ではなく、スタッフがいるとか、人の体に針を刺すのだが、衛生上、十分な設備が整っていない場合が結構あるようで、一歩間違えば危険です。

ある日本人が早くから経営しているマッサージ店。此処は奥さんがタイに修行に行き、充分な教育をしているので女性客にも安全だし価格的にも安心。
今は何店あるか知らないが、過去には数店あって招待券でお世話になりました。
どの事業でも同じだが、誰もやらない時に始めれば儲けは出る可能性は高い。彼は奥さんの出身地に広大な土地を購入したと聞き及ぶ。
では何故このタトゥーがベトナムで急激に増えているのか。それは社会的偏見が無くなって来たからと云われているが、真相はわかりません。
ベトナムでもかつて刺青は大衆文化ではなく、法律違反者や凶悪犯として映画などで描かれていて、決して親世代は容認することなどあり得なかったのです。

今時の若い女性はボディー・タトゥーを美容の一環としてみなしている。特に唇や眉毛への刺青は普通の美容措置であり、ファッション。さらにこじ付けかも知れないが、帝王切開で出産した女性など傷跡を隠す方法として選んだが?自信を取り戻したとか、注意深く自分の身体をケアする様になったなどプラスの効用を記事にしています。
また国営企業で仕事をする女性は、上司の許可があったかを記者に尋ねられ、
法律違反で無いので、気にしないとあったが、現代女性の考え方にもはや変化が起きているのは否めません。
ところがビジネスとして普及し、店舗が増えるにつれ、問題が無い訳ではない。
刺青の彫師をアーチストと呼んでいるが、必ずしも絵心があるとか、創造的な絵を描けるというものではないという。
一般化するに従って、散髪屋や美容室と同じくモデル写真を幾つか用意して、顧客の要望通りに入れる、即ち独創的なデザインではなく、単なるコピーが蔓延っている現実もあります。これではアーチストて呼べる道理などありません。
さらには顧客がデザインした絵を元に彫るという変化も起きている。要するに大衆文化から個の価値観を表現するという芸術へと変わってきたのです。
また現在は法律でタトゥーが禁止されている訳ではないが、かといって規則や規準があるものでもありません。だから誰もが許可は不要で、直ぐ簡単に仕事を始められる。いまの所事件は起きていないみたいだが、もしかするとあっても表に出ていないだけかも知れません。
心あるタトゥー・アーチストは、公式に専門の仕事として認められる事が重要だし、店舗が一定の規制や規準、衛生や安全、技術基準に関しての課題を提議しています。こうすることでキャリアが磨かれ、業界への信頼が増し、顧客が安心して利用できる。また何よりも国民の理解が深まることを期待しているとあるが、これはある意味では単なる業界筋の言い分に過ぎません。
だが韓国では既に峠を過ぎ、刺青を消したいという人が増えている。ところが痛くて堪らない。今更遅いが何でこんなバカなことに夢中になったのか、若気の至りを猛省。ベトナム人は時流から遅れていると考えるべきかもしれません。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生