後を絶ないVN航空客室乗務員の密輸事件

2024年4月17日(水)

現地から報じられたのは、今年3月中旬、パリ発のVN航空10便に搭乗した客室乗務員4人が違法薬物を機内に持ち込み、密輸を図ろうとして逮捕された事件があったという。またか!ではなく、これまでから頻繁に起きているのがVN航空の客室乗務員のこうした密輸事件。もはや驚き、というより何時まで経ってもお小遣い稼ぎを、やめられない、止まらない、のは精神的貧困というという嘆きの溜息。だが物証は無くとんだトバッチリだった可能性がある様だ。
筆者の知る限り、この個人的密輸の歴史なんて1990年代からあって、海外に行けるという立場を利用して行っていたのです。それほど罪の意識があるというものではなく、初めは家族・友人・知人などから現地で品物を買って来て、なんていう軽い気持ちで始めただけなのだが、気が付くと運び屋として金儲けの魅力に嵌ってしまい、泥沼状態から抜けたくて出来なくなったという危険な火遊び。しかしそれでは済まない状況に追い込まれたと考えられます。
この時分を振り返ってみれば、ベトナムで人気が出始めてきた携帯電話。まだサムスンが国内生産をようやく始めたばかりの段階。まだノキアやモトローラ、パナソニックやソニーとかもあり、ドイツのシーメンスなども全盛の時代だが、国内に携帯電話の販売店は少なく、中古品でも宝物のような扱いだった頃です。
新品なんて逆立ちしても買えない。安くても100ドルはくだらないほど高価。
これに付け込んだ販売店。少しでも売れ筋の新品が欲しくて、何とVN航空のCAなどに依頼して国内に持ち込んだのです。当時はノーチェックだから税関は素通りできる。あるいは心付けを渡せば「渡るゲートは金次第」でなんとかなりました。飲み屋の美女のオネダリは複数の馴染みの客へ同じ機種。これを幾つか売って換金するけれど、絶対にバレないとする悪知恵は結構働く国民性。
機内には数多く持ち込めるように、箱は捨てて本体と説明書だけなので、一回に数個は楽に運べる。販売店での価格は少し安い。これは筆者がなぜ安いのか聞いた所、バカ正直にも程があるも、罪の意識は全く無いからなのかその実態を平然と暴露してくれた。この時は此処までやるか?とびっくりしたほどです。
考えてみればCAはなかなか成れない一応エリートだし、英語はもちろん出来なければならず容姿端麗も必須条件だが実は給料は安かった。国内賃金としては多いけれど外国の航空会社からすれば雀の涙。これに気が付けばアホらしくて我慢ならないのが人情。知人の娘がタンソンニャット空港で働いていたが、アシアナ航空にスカウトされ、CAをしていた時の月給がほぼ1000ドル。これで父親をはるかに超える高給取りだった次第です。
VN航空地上スタッフも勤務体系は厳しく英語力が要求されたけど、給与は思うほど多くないのだがこちらも人気があって応募も多かった。だが試験に合格すると空港近くに住まないと、早朝あるいは深夜勤務シフトの場合、仕事ができないとか、帰宅が出来ないなど苦労は多く、また出費も多かった様です。
さてこの所、ベトナムでの違法薬物がかなり浸透しているみたい。車を運転していても検問でかなり捕まっている。
こうした背景もあって、今回VN航空客室乗務員が密輸を企てた品物とは違法薬物の持ち込み事件だが、この事件の一連の捜査を統括したHCM市の警察はなんと183件も刑事事件として立件、関与した者は503人という多さ。
容疑者は違法薬物の密輸と密売、違法所持、犯人隠匿などの容疑で捜査を受けているとあるが、証拠となるブツはケタミンや結晶状の薬物で165キロ以上、拳銃を10丁押収したと尋常ではない。
この事件が明るみになったのは、4人の客室乗務員がフランス便に乗務した際、滞在中に歯磨き粉をベトナムに持ち帰って欲しいと依頼され、新品なので怪しいものでは無いと思ったらしい。ところが思いもかけずだがこのチューブの中に違法薬物が詰められていたとある。帰国時に詳細は明らかでは無いにしろ、検査で引っかかったのだが、かれらは露知らずで、違法性は立件できず、また家宅捜査でも何も見つける事が出来なかったとかで釈放されている。恐らくは断れない何らかの事情があったのかも知れませんが、親切心はほどほどが無難。
日本の税関検査で係官が聞くのは「預かり物はありませんか」だが、これまでいくつかの実例があり、預かり物に不審な物品があり、仮に親切心でした行為であっても、あるいは少なからずアルバイトとして運んだとすれば尚更のこと。
外国では基準以上であれば死刑という重大な処罰が待っていて危険この上ない。
ベトナム人は簡単に頼むが、知人であってもこういう事はしっかり断るのが筋。
多くのベトナム人は海外事情を知らない。また違法薬物でないとしても、持ち込みが禁止されている食料など一回目は許されても、二回目は少なくても罰金、悪くすると刑務所入りという場合があるので絶対に応じてはなりません。
また多くの日本人は気前よく簡単に引き受けるが、事件になれば抗弁できない。
現地報道ではこの違法薬物持ち込みだけでなく、化粧品から貴金属など多岐にわたり、度々こうした密輸入で職員が逮捕されておりモラルの欠片もない。
ではなぜ無くならないのかと言えば、相当の副収入が稼げるのでこれが本業に勝るほどであると書いているけれど、また密輸入が可能となるルートが決まっているからだともしている。あからさまにはしないのだが、国営企業の特権を利用し、その職場で働く公務員がこれを行なっている。大々的に業務を受けている状態とも書いてあって、由々しき事態だが、実は一部の者がこっそりではなく、一般人を巻き込んでまで、まるでサービスの如く地位を利用していると断じています。さらに政府直轄の組織だって同じようなことをしているのでは、収まるものでは無いとしており、闇は深過ぎて他人事ではありません。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生