41人乗りのバスに81人の乗客がいた

2024年3月19日(火)

ハイフォン市交通警察は、ベトナム北部ナムディン省から北西部クアンニン省へ向かって走行していたバスに、定員が41名のところ81人もが乗っていたところを検問で発見。運転手に罰金2000万VND(約12万4千円)を課したと現地報にあります。
このバス、写真を見ると寝台付の長距離バス。夜間に走行することが多くて、近年体を伸ばせるこのタイプが多くなりました。私もバンメトー市に行った際に利用したけれど、ベッドは大きくなく、ハードでそんなに気持ちよく寝られるものではありません。だが従来の腰掛席に比べるとゆったり過ごせる。
筆者は日本最長と言われる福岡(博多)~東京(新宿)間を利用したことがあるけれど、道路事情は格段に違うにしろ、日本の長距離バスの方が社内設備や乗り心地も格段に良く疲れないのがいい。長距離バスは何よりリーズナブルで目的地に朝到着するが、夜遅ければホテルに宿泊。ビジネスや観光でも重宝。

ベトナムでは節約のためバイクで帰省する人が多いけれど、長旅の場合は安全だし疲労しません。また鉄道網が発展していないため、千キロ以上もの長距離移動でさえ古くから利用されていたのです。
2000年台、ベトナムへ旅行に行くと誰しも利用した経験はあると思うが、HCM市近郊の観光地であるメコンやクチなどもバスでしか行けません。
ではこの時代、どのようなバスが使用され変遷したかといえば、今のベトナムしかご存じない方は驚かれると思います。
それは日本の中古バス、しかも塗装はそのままでハンドルと扉を右側に変更しただけの代物。だから例えば神戸市営バスなんて市章がそのまま付いていたし、行き先表示版も日本語表記のまま。なぜこのような状態かと言えば、日本製のバスということをわざと誇示しているからであり、近隣国が製造する新車よりも壊れないし安全と言うことなのです。また地方に行けばインド製のTATAが武骨なボディーを晒して活躍していました。
その後は韓国製のヒュンダイが多くなったけれど、これは現地生産。だがエンジンは日本製とありました。今ではHCM市の路線バスでもベンツ製が走っているけれど、他はチュオンハイ(THACO)社という一応は地場メーカーで、マツダやKIAなどの現地生産をしている会社製が多かった。しかしこの何年かの間に車のEV化が進むベトナム。独自技術ではないけれど、寄せ集め部品で造っており、ハノイ市内でも見かけるのがヴィンファストの電気バス。政府が力を入れているから進むだろうし、タクシーも変換している状況にあります。
だが赤字体質は抜けきらず、株価も低落。一体どうなるのか?
何故こうした異常なまでの定員オーバーになるのか。その理由とは何か。
ベトナムのテトが始まる前の2月4日、早めに帰郷する人達もいて、このバスを運営する会社は分かっていながらオーバーブッキングをした確信犯なのです。
バスの台数は限られておりテトの時期は書き入れ時。稼げると踏んだという。
だがこうした違反は頻繁にあるし、平常でもそのバスの行き先が一杯になっても受け付けるのが罷り通っているし、乗客は文句を言わない。テトと言う時期的なこともあるけれど、たまたま運が悪かったというだけの話です。
もちろん乗客別のチャーターしたバスに乗せられた訳で、会社もその分を負担しなければならないし、警察は運転手に二度と違反行為はしないと誓約書をとっているけれどニワトリと同様に少し時間が立てば忘れてしまうのがオチ。
因みに定員オーバーの罰金は規則に定めがあって、一人に付き40万~60万VNDで、最高額は4000万VNDを超えないとある。
まだ本格的にテト帰省の時期ではないため、こうした事件が起きる可能性は十分に考えられるので、今回の件を記事にして、黙ってないぞ、取り締まりを強化する、という交通警察の意思表示であったとも感じます。また帰省する予定の人にはこうした定員超過があれば警察に報告する様にと云っているけれど、さて実際には通報する人など居ないのが困った実情。
だが会社がこうした状況を知らず、運転手が勝手に料金を取って帰省客を乗せたということもあります。これが実に怖い所で、日本人には考えられませんが、アパートが委託運行(日系企業)する市中心行きのバスでも実際にあったこと。
また反対に、ワイロを受け取って見逃すことや、権力を盾に検問で言いがかりをつけて金を取ろうとする警察官も居るのも確か。何しろ道理が通らない事や、違反でもないのにイチャモンを付ける場合もあるのがこの国の警察。
万一事故に遭っても補償などないため、観光でバスを利用する場合、団体旅行は良いけれど、個人旅行となれば大手の旅行会社が運営するツアーを利用するべきです。
筆者の経験を話すと過去に利用したのは合作社の小型バス。長距離バス路線が無い超地方へはこうした完全ローカルの乗り合いバスを利用するのだが、外国人は勇気が要る。待ち合わせ場所に行かないことには何人乗るのか分からない。また途中で予約をした客を拾うので、いつの間にか定員は倍以上と超過密。
おまけに運転手はたった一人で夜通し300キロを走破、と完全にクレイジー。
この時はメコン南部のバクリュウ省。直ぐ対岸はカマウ省。知人の親戚が海老の稚魚の養殖事業を行っていて一週間お世話になりました。比較的裕福な方だが、如何せん何もない田舎町。病気になっても小さな診療所しかなく心細かったが、意外にも親切な人が多かった。おそらくこんなところに日本人が来るなんて、と意外だったのかも知れないが、貴重な経験は忘れがたくも有難い。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生