HCM市メトロ1号線の操業開始時期延期 再々々?を発表

2024年4月18日(木)

現地紙が報じるところ、今年7月に開業予定だったHCM市で初のメトロ1号線(ベンタン~スイティエン)開業が第4四半期に延期される見込みとある。まだまだ予断は許されないと考えるけれど、何度目になるのか?忘れる位多い。
この情報はHCM市都市鉄道管理委員会が、HCM市人民委員会に送った都市鉄道運転計画書に付き、公文書に記載されていたと書いてあると云うのです。
これに拠ると、2024年第3四半期(7月~9月)に開業が予定されていたのだが、安全システムの点検、消防・消火訓練、運転士、運行管理システム、駅務員とか作業員、メンテナンス要員などの教育を完了させなければならないけれどこれが遅れている模様。そのため予定から開業がずれ込み、商業運転の開始が出来ないことが分かったとするが、これ以上は不明。何を今さらです。
既に日立が制作した車両も納入され、試運転を行い、市民などを乗せてお披露目も済み。運行開始計画は順調に見えたけれど実はそうではありませんでした。
このためHCM市都市鉄道管理委員会は、今年第4四半期までに消防システムの確認をして証明書を発行。各駅での安全システムの監査を完了させる予定としたが、市民はもはや諦めの境地。日本ならば考えられない不祥事に該当する。
最終的には国の検査評議会なるものが、残りの項目に関して厳格な検査を実施して、安全性が確認されてから後、商業運転が実施される予定だとしている。
市としては初めての経験なので仕方がない部分はあるにしろ、此処まで来るとお粗末としかいえないが、実は教えられる人材など居ないのではと勘繰ります。
事情を知れば、地場では須らくこんな調子で、今さら驚きはないけれど、だが目標設定は絵に描いた餅。問題は計画の実効性と人材不足が常に付き纏います。
このメトロ1号線はこれまでにも書いているけれど、再々どころかため息が出るほど再三再四あきれるほど工事が中止、再開という繰り返しをして来ました。
もはや現地の知人など何時になったら開業できるのか分らないと期待などしていない。市では何しろこういう都市交通など全く知らない人達が関わった初の事業案件、だがどこから手を付けて良いかもわからないので計画性のないまま用地買収の問題で長引くし、路線上では建物やビルの傾きがあったうえ、資金ショートに拠る工事費の不払いなど疫病神の様に次々と降りかかったのです。
日本の自治体、例えば友好都市関係を結んでいる大阪市、東京都なども訓練のため現地から職員を招待して訓練をするなど協力してきたけれど、電車など見たことも、乗ったことすらない人をゼロから指導するところからスタート。
地下鉄と言っても地下部分は一部区間だけで、郊外になれば高架を走るけれど、時間通りに運行できるのか、停止位置を間違えることなく止まれるのかさえも自信が持てない状況。通り一遍の訓練ではやり切れる訳がありません。
現在ハノイで地下鉄がHCM市に先行して開業しているけれど、ベトナム国鉄は電化されておらず、未だ以ってディーゼル。乗車した経験のある人はお分かりだろうが、単線なので遅延はしょっちゅう。特急を先に通過させるので普通は割を食ってしまい数時間の遅れなど茶飯事、誰も気にもしないほどの鈍感さ。
だが都市交通となればそうはいかない。果たして定時運行は可能か?こういう所にこそこれまでとは異なる強い安全意識が求められるし、一歩間運転操作を違えると大事故に成り兼ねません。高架や地下部分での対面通行の怖さがあるけれど、どうやらこうした安全への教育部分に欠けているという問題が露呈、またまた延長しなければならない真の事情であったのではと邪推しています。

日本での実務研修では、教える方も、習う方もさぞかしヒヤヒヤし通しだったのは同じ思いだったと容易に推測できます。
しかしこういう事情も何とか乗り越えて、給料未払などの苦難もやっと乗り越えたのに、この有様とは如何ともしがたい。だが誰も責任を問われていません。
このメトロ1号線、2012年に工事を着工。日本の資金援助を受け、施工は日本工営、清水、前田建設のJVによるシールド工法。なにしろデルタ特有の沖積地という軟弱地盤。そこにHCM市一区の中心部にトンネルと駅を造るというもの。こういう土木工事は現地ゼネコンでは実績が無いので難しい。鉄路は総延長約20キロあるけれど、建設工事はほぼ完成しているというのです。
総投資額は43兆7000億VND(約2681億円)を超えているというが、HCM市の交通事情を考えるとやらざるを得ない状況であったのには違いありません。この地下鉄路線をターミナル化して周辺部の開発も行われ、住宅開発に道路インフラも整備されてきたため、国道一号線に沿って大規模都市改造やアパート建設が進んでいるので、波及効果には大きいものがあると考えられる。
この地下鉄一号線の他にも、二号線(ベンタン~タムルーン間)など計画路線は幾つか決まっており、来年から着工の予定となっているけれど既に完成予定が2026年から2030年へと延期。だがこの程度で済む訳がありません。
問題は工事費で、市には充分な予算が無いうえ、用地買収は簡単ではないし、車輛製造や運行システムはこの国ではできない。勢いODA頼み?となります。

この地下鉄の主な起点である一区ベンタン。観光客にも馴染みがあるベンタン市場のある所で、市場前はロータリーとなっており、バスターミナルがあって賑わった場所。HCM市はここに景観改造と称して約46,000㎡ある用地を4つに区分し、1570億VND(約9億3000万円)をかけて整備する事を決めたとあります。今年10月に工事着工し、来年4月に完成する計画とか。
さて慣れ親しんだ街並みや風景はどの様に変わって行くのかが楽しみです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生