5月14日、福岡地裁での初公判。ベトナム人実習生が2月に交際相手の家で男児を出産したが、死産であったので遺体をビニール袋に入れ、ゴミ箱に遺棄したとして起訴された事件。救急搬送された20歳の被告は無罪を主張する。
司法解剖で死産に間違いなかったが、妊娠を誰にも相談できなかったと主張するもお涙頂戴では済まない。何処に在っても恋愛は自由であるけれど、いい年こいた成人が常識的判断をできる状況下であったに違いなく、真実は分からないけど金が無かった故のグレーな行為かも知れない。死産であっても役所へ届け出て、火葬許可をとらなければならないが、これには医師の検案書が要る。
本来なら先例があるので、送り出しや受け入れ側の行政や団体が「妊娠は想定でき得る」という前提で指導すべきなのに、未だに忌避しているのも問題です。
2020年にも同様の事件があり1審、2審ともに有罪だったが、最高裁では無罪となった判例がある。この場合は妊娠が分かれば帰国させられると思った事情を酌量、遺棄する気持ちは無かったとされた。また段ボールに入れて供養したとの主張は、文化の違いとか様々に論議されたが、此処は日本、拡大解釈をし過ぎ。日本人の場合であったなら、恐らく「否認」されていたであろうと思える。行為に及ぶのなら先ず「避妊」を心掛けなければというのは当然です。
では母国ならば遺体をどのように処置するのか。地方でも典礼会館はあるし、日本以上に葬儀は遥に立派で金と時間を掛け、別れを惜しむ伝統と風習がある。
今回、遺棄でないと言うのは報道から整合性に欠けるし、違和感と推定無罪の域を脱しないまま、またもや起きたと捉えるが、判例に依拠するのは間違い。日本なら仮に葬儀費が無くて自宅に遺体を安置していたとしても通らず、遺棄として刑事事件扱いと成ります。
前の事件に関して反省と検証が行なわれないままに、恐らく表面に出ない事件は多いと考えられる。前回は少なくても弔う心根はあった。慌てる事情は分かるが、事件を分かっていたなら許されるものではありません。
にしても男の責任に関して警察の聴取はあったにしろ、放免されるのも道義上おかしい。まして共同作業なら共同正犯で送致すべき「非人」です。
ベトナムでは多くの堕胎が行われており、その件数は非公式ながら生まれる命よりも多いとされるのは非合法処置が多いから。昔と違ってもし妊娠が分かればどう処理するのか分かっている世代なのだから、方便もほどほどにと思うが、現地事情の認識が甘いか、それとも裁判官が越前のごとく寛容なのか。
実際筆者の在住時、学生の妊娠は意外なほど多く聞いたし、街にはしけ込む所が多くあって知人の日本人宅の隣家がこうした場所。若い人は住まいが理由で頻繁に出入りがあったと彼は憤慨していたが、余りにも性には無防備過ぎます。
・現地報に載った現地の深刻な状況
先の様な現象が出てきたのは日本だからという特別な事情や環境があるというものではなく、その根元は実は母国ベトナムにあると言えます。
従って問題を実習生制度にあるというのは勘違いだし、責任の転嫁や摺り替えに過ぎず、相手国の実態や問題になっている事実を知らず、主権国での出来事なのに異文化ゆえ知らなかったと同情、判決を出すのは間違っている。
現地で報じられた記事。これにはある大学生の身勝手な妊娠と、これを告げられた親の慌てふためく姿が想像できます。もはや時代が変わった。
これは珍しいことではありません。以前に書いたけれど、家の近くの長屋に親しくしている家族がいた。この隣の部屋に地方から来た女子学生が独り住まい。
数か月後に居なくなった。何と妊娠が発覚し親が連れ帰ったという。この他に19歳の短大生が大きなお腹を抱えて通学。見事としか言えないが無事に卒業。
こんな痴話が実は学生の間や学校内部で普通にもちきりです。
記事にはハノイの有名大学に入学した1年生の娘から突然妊娠したと告げられ、45歳の母親は動転、食事も喉を通らず3日間泣き続けたとある。2人の息子も優秀で大学生、娘が卒業すれば苦労が報われると思っていた矢先の告白。
相手は何と同級生でもう4カ月になるというが、彼の両親との話し合いも拒否。
またハノイの隣の省出身で3年生の女子大生。これを知った母親は針の筵に座らされた気分。娘にどこにでも出て行けといい、親の顔に泥を塗るのは止めて、と電話口で叫んだというほど性への考え方に落差は激しい。
ところが既に彼氏とは別れたと告げられ二重のショック。男には妊娠を告げたけれど元の鞘には収まらず逃げた。何処の国でも男は身勝手。そこで娘は病院へ中絶する積もりで行ったけれど怖くなり泣いたという普通の感覚はある。
この母親は近所に知られるのが恐ろしく、うわさ話でこのような望まない妊娠の話を聞くと、バレたのではとパニックになり毎日の外出も怖くなったという。
当初母親は怒りの感情が強く、娘の将来を考えて中雑するため病院へ行ったが、胎児が成長し過ぎてリスクが高いと警告。初めは学業を続けさせ、生まれてくる子供は自分の子としよう考えた。だが身内と相談の結果、娘を田舎に連れ帰り一緒に育てることにした。娘もシンブルマザーとして生きてゆくという。
こうなるとベトナム女性は俄然強く、知人にもこういう環境の女性がいた。
ダラット出身で家族も良く知っている大人しいが、早くに日本語1級を取得。弟は日本へ留学、時折ベトナムの食品を届け食事もした。だがこの姉貴、日本人と懇ろになり出産。勇気があるのか男の家のある広島まで子供と一緒に来た。
既に日本総領事館で認知したが、げに恐ろしいのは女のサガ。どうやら家族や会社にも知られたが、此処までやるか。こういうケースは結構多い。
これはほんの一例だが、今ベトナムで社会問題となっているのは、妊娠に繋がる10代の性行為。2021年の調査では15歳未満で男子の場合は0,2%、女子が0,9%と高い。また10歳以上年の離れた異性との性交渉で、未成年の割合は8,9%にもなっているとユニセフが報告した。
親が思う以上に性の解放は進んでいるが、深い想いや責任感はなくやり放題。
また別の調査では、15歳から24歳までの未婚女性10%以上が望まない妊娠をしたことがあると推定されると報告。この原因について教育専門家は子供への性教育が不十分と指摘するが、言わずとも分かること。
また保健省の元部長は、多くの親が子供を怒鳴ったり、叩いたり罵倒。中には家を追い出すこともあるとしているが、これは親の責任で十分に性知識を教えてこなかったことに拠る。また子供の妊娠を知った時、適切な対処が出来ず、不必要なプレッシャーを与え、時として未認可の施設で中絶させるので深刻なダメージを与えているという。分かっているなら在職時にあんたがやっておけばいい話。
そうは言っても、今のベトナム社会を考えると、こうした教育を施すのは簡単でなく、国や行政から始めなければ未成熟社会は子供の進化に付いていけない。だがまだ表向きの道徳観念が強い行政も期待できない。機運が醸成されるのを待つ他ないが、すると地下に潜って行く。実際に地方から来た娘らが性を生業にして稼ぐことを覚え、またこれを商売とする連中もいるし、時に公安の人物が売春宿を経営。摘発逃れと社会悪に走ります。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生