インフレと労働者不足に苦戦する製造業

2024年7月26日(金)

計画投資省のズン大臣は、構造改革を強力に進めることでベトナム企業が多くの困難にあるとしても依然としてチャンスが残されていると指摘する。
だがこれまで通りの他力本願。自助努力を考えずに、資金力、技術力の不足、また原材料に高品質部品をどう調達するのかに関しては触れていません。
大臣はこの所の金価格に関して触れ、民間人も有効な投資先がないため、金を購入していると述べている。従って国内外で投資を含めたリソースを開放するためにボトルネックを根本から解決しなければならないとするが、そうでなく金保有は一般市民の社会と通貨不安から歴史的にも資産保全でそうしてきた。
こうした発言をしている最中、訪中しているチン首相は6月25日、鉄道車両大手の大連汽車車両の会長と面会。ベトナムの全長2000キロ以上の鉄路と300もの駅舎を擁するが効率的に運用されていない。鉄道事業とシステムの能力向上で支援を求めたとある。今度は中国、やってくれれば何処でもいい。
これに対してサン会長は、ハノイ市とHCM市の都市交通の体系的リソースを提供できるとし、さらに計画中の新路線でも協力を約束したと報じられている。
もはや政府間でのチグハグ。首相が相手国に企業に直接支援を要請するなんて、まさに蟻地獄に落ちた様なもの。相手は虎視眈々と融資をちらつかせ、国内の鉄道を牛耳る考えがあるのに違いない。これまでの新興国への中国のやり方を知らない訳ではあるまいに、まざまざと仕掛けに引っかかるのはどうしてか?
台湾企業進出に始まり、日本のODAに助けられ、韓国サムスンには貿易黒字国を達成するほどの恩恵を受け、アメリカには最大の黒字国に成ってもらった恩義もある。渡米したベト僑が成長を支えている一面もある。ベトナムが経済成長して来た背景に西側諸国の進出と投資。これは否定できません。だが此処に来ての変貌は急すぎるのが気掛かり、これもチョン書記長の意向か疑念あり。
万が一こういう鉄道事業が中国企業の手中に収まれば、国内物流に影響を及ぼすのは確か。見境なく金が打出の小槌のように出て来るのを待っていたのか。
あらかじめ書記長と合議の上のことだろうが、VN航空は中国製旅客機の輸入を検討中とかの報道が出てきた。形振り構わぬ迎合だが成れの果てはアフリカ諸国と同じ運命、代物弁済として狙われているのか。国民に責任をとれるのか。
こうなると全方位的オネダリ外交など言っていられない。いつの間にか術中に嵌ってしまい、表面だけ豊かに、便利になったけれど、何時まで経ってもこれまでの状況と変わらないどころか、ますます対立の渦に巻き込む危険性がある。もし西側企業が手を引けば、それこそ中国の思惑通り支配者に変ずるが、こうなると歴史は繰り返す教訓通りに、またもや朝貢国家となってしまう。というのはありもしない誇大妄想なのか?当たらない事を望む。

・インフレ動向を注視する必要

国内の購買力は鈍化するとし、HSBCは短期的に国内のインフレを抑制する必要があるとしました。同行は5月の経済報告書の中で統計総局のデータからCPIが2023年に同時期に比べ4,44%上昇したと指摘。政府が設定したインフレ率の上限4,5%付近にまできたことを注目している。
主要品目11の内、10が値上がり。この中で教育、医療、食費、建設が最も上昇した。米価格は下落したが、豚肉が上昇。石油は下落したが、電力が上昇。
短期的には食品、エネルギー価格の監視が必要としている。
インフレ圧力は原材料費の上昇の影響を受けている。これに加えて通貨VNDの下落もあり、輸送費に燃料費も相次いで上昇。日本と全く同じ状況にある。
総じてベトナムの景気回復はまだ初期段階で、金融政策とのバランスが必要であり、国家銀行は政策金利を安定的に維持するとHSBCは予測しています。

・製造業はワーカーの採用に苦戦

海外からの受注が回復。HCM市内の地場企業は1600人の従業員を採用しようとしたが、募集開始から2カ月を経て採用できたのは300人でしかなかったとある。ますます人材探しが困難を極め、これは何処の企業も同じで採用担当はストレスを抱えている現状があります。
至る所で求人情報を発信しているとかだが、採用は思う程増えない。これでは生産計画に支障が生じるし、受注しても期限通りに生産できないだけでなく、新規受注に応じられず機会損失を出してしまうのがオチ。
こうなると従業員から出身地の県や村に学校に採用を掛ける方が確実。実際にあったことで、知り合いであった大手日本企業の社長秘書は、毎年500人もの採用を行なってきた。当時は各企業がこうした事をしなかったけれど、先見の明があったのか双方に大きなメリットがあり村の貢献者になり感謝された。
しかしこれは製造業に限った問題だけでなく、実習を海外へ派遣する送り出し機関でも同じことが実は数年前から起きていました。ではどうするのか、今回も人事担当者が自らメコン地域や山間部の省にまでなどの地域に出向き、伝手を頼って地元の人民委員会に依頼するなどリクルートを始めた。しかし何れの企業なども同様の考えで引く手あまたの金の卵。ところが有望で期待を抱けるだけの状況にはなく、果報は寝て待て、なんてあり得ず、ただ待つだけでは何も得られずひたすら動かなければ成果はありません。だがこうなると取り合い。
金が掛かるのはこの国ゆえの仕方がない必要経費。さらにこれまで以上に現地に渡す土産に、如何に他社より福利厚生が進んでいるか、給与は等々説明しなければなりません。交通費を支給して寮まで用意するなんて、20変年前に比べるともはや工員という立場でなく、金の卵か磨く前のダイヤモンドなのです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生