経済フォーラムは重要 ようやくベトナム企業変革の機会が来た?!

2025年5月8日(木)

学習すれば成果を得られるというけれど、これは民間企業・団体でやれることではなく、国の権力者が自身の目で見て、確かめなければ意味などありません。また急に変革など出来るものでもないけれど、この様な議論が出て来ることはこの国にとって大きな進歩であり、絶好の変革機会である事に違いありません。
HCM市の食品協会のチー会長は、市内の40万に及ぶとされる弱小(家内)企業の内、およそ2万社しか効果的に運営されていないと指摘しているのです。
彼女は適切な支援があれば、これ等の多くは本格的な企業に移行でき、民間の強力な基盤を作ることが出来ると主張しました。しかし同時に政策は画一的ではなく、特定のインセンティブが必要だともし、民間企業の成長を促進する上で重要な役割を果たしていることを強調しています。
また首相に対し最近6つの業界団体がこれらの企業が負担している大きな行政手続きの撤廃を請願したが、省庁が制限的な姿勢を取り続けるならば民間企業の成長は妨げられると警告したとあります。
こうした民間団体、必ずしも大企業ではない団体が、政府に対して申し入れを行なった事例は余り聞かないが、経済成長の中身が一般の国民や企業経営者にだんだん明確になり、自国企業の置かれた世界からみた実態など、自らの足許は理解しどうすれば自己で発展できるか考えたことが重要なのです。
このフォーラムとか、政府に業界団体が実施したことが大きなウエーブになってこそ外資系企業に対抗し、地場産業、自国の企業が強くなって行く足掛かりになるのではと期待できます。チン氏は女性だが、こうしたベトナム人女性の行動力や能力には高いものがあり、公権力にも媚びない場面を見て来たけれど、政府が大きく肩入れしている自動車産業も大事であるけれど、もっと需要だと思えるのが民間企業の活性化であり、政府の舵の切り方だと思うのです。
これまで何度か書いているけれど、この国の大きな課題は外国のODA支援と外資系企業に拠る投資に拠る成長であって、自助努力を行ない一人歩き出来るだけの経済力を付けることが最大の成長への行動指針だと思うが、さらにこの所の世界経済の動向を考えれば、また政府の新中国的政策が如何に中国からのインフラ投資と、行き先を失い中国国内で余ったモノが流入、多くの民間企業を苦しめることになっているのかを理解させ目を覚まさなければ明日はない、と思わせるくらいの大変重要な内容だったと考えます。
経済専門家、企業家の思考の変化は社会そのものが変わる、言い換えると本来的に民主主義国家になって行く過程のひとつだと思えなくありません。こうなると、さて何処まで本気になって行政が、政府が動くのだろうかと思わざるをえないのは穿った見方なのでしょうか。

過去最大のアメリカビジネス代表団が訪越

この様な最中、3月18日にアメリカ企業の大代表団が記録的といえる64社もの大デレゲーションで訪越しました。
経済ニュースに拠ると、両国間の経済関係の拡大を反映して投資とパートナーシップの機会を模索しているとあります。
これまで世界のサプライチェーンの移動という形で、アメリカ企業の中国からの工場移転があり、さらにトランプ氏の大統領就任で、今は明らかになっていないけれど、恐らく俎上に上るであろうと考える貿易の一方的なベトナム側の輸出超過、さらにドル・VNDの為替に関してだが、比較的楽観的であったのはベトナム。しかし中にはそうではないと警告した学者なども居たのです。
そこに時を得たアメリカ企業の代表団訪越。アメリカ・アセアンビジネス協議会(USABC)はハワイで記者会見を開き、ベトナムへビジネスミッションとして二つの代表団を送ったと報告しています。
一番目の代表団はヘルスケアとライフスタイルに焦点を絞った代表団なのだが、此の後代表団には、実はUSABC社長であるオシウス氏は元駐ベトナム大使であり、ボーイング、アップル、ナイキ、アマゾン、ベルなどアメリカの主要有名巨大企業の代表者が参加したというので、筆者には驚きがあります。
滞在中はベトナム政府の指導者と面会し、米越外交正常化30周年を記念する様々なイベントへ参加をする。ビジネスミッションは毎年訪越しているけれど今年は全く事情が異なるのだが、思惑は如何。
市場参入という機会目的もあるけれど、過去最高のメンバーを派遣するということはアメリカ国内の事情もあるが、世界経済の不確実性が増している中で、ベトナムに対しアメリカの位置付けが高まっているのではと推測しています。
オシウス氏は貿易リスクもあるけれどアメリカ企業がベトナムの将来性に自信をもっており、製造はもちろんだが、テクノロジー、金融、エネルギー、航空宇宙産業など主要セクターへ長期的投資を見ているとして、新たな段階にあるベトナムへの参入はベトナム企業にプラスになるとしている。ベトナムが目指す金融ハブへの目標達成にアメリカの支持、安定的で互恵的な貿易関係を育成するコミットメントを表明した。再生エネルギー大手パシフィコ社は洋上風力へ投資計画を明らかにし、フェイスブックは1000人のハイテク雇用創出、AI開発など長期的投資を発表したとあります。
これは中国のベトナム大進出への対抗とも考えられるが、ベト僑を先陣に二重国籍と投資を促したのはベトナム政府。目論見は彼らの資金と経済・ビジネスで発展に貢献して貰う為だが今にして大変化をみた訳です。中国はこの一連の動きをどう見るかだが、米中間のビジネス闘争の場として翻弄されるベトナム。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生