高齢化が進むベトナム だが老人ホームが不足する理由とは

2026年1月22日(木)

ベトナム人の看護師、介護士が日本の病院や施設で働いています。筆者が行っていたところでも介護棟に二名が配属、その後、毎年何人かの職員が入っていると機関誌に在りました。
2000年が始まって間もなく、日本からベトナムで将来介護施設を運営するという計画を持った大手の施設が実情を視察に来た。この時ベトナムでは未だこの様な施設はなく、チョーライ病院を訪問して院長、医師や医療スタッフにヒアリングを行い、現地事情も聴いたけれど機能回復訓練の要領に機械器具は全く揃っておらず、日本の新しい設備や器具が欲しいと言われた。またこの時、日本の大学病院から派遣されていた先生からも実情を聞いたことがあります。
この先生は作業療法の専門家だが、当時この国にはそういった思考は全くない。帰国後、ベトナムに来て活動され、政府から叙勲されたほどだが、何しろ任期は決まっているし、資金は充分ではない。現地ではようやく入浴の介助世話ができる職員を訓練したし、その後、担当部局に様々な提案をベトナで海外留学した同僚としたけれど、監督官庁の高官はまったくやる気がなく、何も進まない状況にあったのです。

かつては自宅で家族が介護するというのがこの国での一般的な考え方であり、社会の風潮。HCM市の郊外に富裕者層のホームがあったけれど、入居できるのはごく僅かで、これはとにかく費用が掛かるからという理由からでした。
HCM市当局は日本から来た視察に対して、施設を計画しているという土地を教えてくれ、我々は此処を見に行った。郊外の川沿いに在り、対岸はドンナイ省、今ではすっかり変わったが、この当時は何もない荒れ地、ぬかるんだ地道を行くのです。まるで姨捨捨て山感覚としか思えない。だが都市開発計画ではこの近辺にバス車庫など市の施設を持ってくる予定でもあったマル秘計画図、であったのです。
またダラット近くにも土地を見に行ったけれど、此処はもはや山、平地ではないので土木工事費は高く付く。
さらに別の施設からも知人を通して要請があり、筆者は帰国時にその施設を見に行ったのだが、専門学校も持っており、既に結婚してベトナム人スタッフが働いているくらい熱心であった。
この時点では何人かのベトナム人は日本の看護師試験を受験することが可能、合格してそのまま日本で働いていた人もいたし、積極的に受け入れていた病院もあったのです。しかし一定の年月で帰国しなければならず、この時の資格と日本語力を活かして現地で活躍した人も多く居たのです。
現在は、ベトナム人は介護士試験も受けられるようになったし、これからどんどん必要な人材になって行くのに違いなく、また帰国すれば日本で得た技術に資格と経験がそのまま生かすことが出来る訳です。
この当時、HCM市に在住した大阪出身、アメリカでナーシングホームを共同経営しており、この計画に興味を持った人が居たので話をして一緒に土地を観に行きました。専門家という立場から見て貰うのもいいのではという考え。
しかしこの時点で、ベトナムには社会的に介護に関する関心は殆どなく、仮に施設を建設して介護人材を採用しても金が掛かるばかりで利益は出ない。
相手に土地はあるけれどそれ以外の資金は全くない。建物に設備、機会に器具、専門スタッフを雇わなければならない。これでは黒字どころか赤字しか見えてこない。慈善事業をする訳などないので、利益が出なければとても事業に踏み切るだけのメリットはなかったのです。

では現在のベトナム、高齢化により老人施設の需要が高まっているという。
しかし実際には高コストであり、文化的障壁があるし利益が出ないという状況が開発者を悩ませているというのです。
今のベトナムの高齢者人口は1610万人で、人口比では約16%。だが2038年までに20%、2050年には25%になると推計されています。
こうした状況から見て高齢者介護は国の問題であり、また不動産や三次産業部門にとって将来的に事業として成り立つ可能性が高いとされる。
ベトナム不動産協会の資料によると、国内には公的、民間の介護施設が数十カ所しかないと言い、またその殆どが基本的なケアしかできない。医療、栄養、活動など専門サービスの提供は不可とされているのです。
またHCM市には2024年までに7カ所の施設と、13の民間施設があって、このうち6カ所は無料でドナーの資金で運営されているという。

一部の大手開発業者の中では、広い土地と資本、さらに専門的で高度な医療、社会的ケアができるスタッフが必要な施設に対して関心を持つところもあり、利益が低下するけれど、事業は継続でき社会貢献ができるという観点から開発を考える企業が出て来たという。
ビングループグループは日本のウェルグループと提携し、ハノイに高級施設を開発した。
サングループは病院、高齢者向け施設、コミュニティースペースを備えた案件をハノイ市内で行なうサン・アーバン・プロジェクト計画を発表している。

チャンアングループはロンアン省に高級老人ホーム建設のため20ヘクタールの土地を割り当てた。
ノバランドとビナリビングは、ファンティエットとクイニョンでノ計画を発表。

だがこれら大手開発業者の動きに、HCM市の不動産業者は、これら退職者向けの施設開発の最大のハードルは法的枠組みの欠如だと言っている。
もう一つの障害は、昨年末の平均月額年金額が620万VND(約230ドル)だという高齢者の低所得がある。
不動産研究所によると、主要都市の基本的な高齢者介護サービス費用は、少なくても月額1000万VND(380ドル)だし、プレミアムなら1600~2000万VND(610~830ドル)必要というので、年金では全く施設に入所できないという訳です。また年金額は年間5~7%上がっているけれど、介護施設の費用は10~15%上昇しているというから、ますます格差が付くだけでしかありません。先進国は介護に関して国の支援とか保険があるけれど、ベトナムには家族が負担しなければならないので、これが大きく、施設に入居できる人は限られており異常に少ないのが現状なのです。

需要はあるけれど、この様な事情や社会的背景があるのなら、投資、即ち施設をどんどん作ればいいという話にはならない。さらに研究所では一貫性のない施策や行政の規制が投資家のキャッシュフローと利益を懸念する材料になる。
施設が自続可能であるためには、収益が無ければ成り立たない。でなければ、公営住宅と同じ問題に直面するとしている。
すなわち現在の所、ベトナムのこうした施設には政府からの資金支援が無く、投資家は尻込みする。さらに急速に高齢化社会に突入しているというベトナムの人口問題がある。これを認識していないのです。
こういう事情や条件があるのだが、施設をつくる市場に投資家、開発企業参入するだけの機会を生み出す訳がないとする。専門家は政府が彼らに土地、信用供与を行い、減税を行うなど法的枠組みを改善するべきと提言している。
また高齢者が短期に滞在できる中小規模の施設を人口が密集する地域の近くに設置するべきであるのも解決策の一つとしている。これは医療ニーズを満たした基本的なサービスと共用スペースの提供を可能にする必要もあるわけだが、即ち日本で普通に行われているデイサービスセンターとかショートステイに該当するが、運営どころか計画すらできていないのが現状で、30年遅れている。
政府の会議では、ラム書記長が成人向けのケアセンターは、ベトナムの高齢化社会に適したモデルなのだが遅れていると述べ、民間業者の参加を奨励したが、家族が仕事に入り間高齢者は自宅で取り残されている現状を語ったという。
だが何時もの通り、なぜ、何にしても政府は自助努力で建設を先にしないのか。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生