大きく変わろうとしているベトナム 一連の流れを整理する

2026年8月5日(水)

筆者は先の14回全国党大会で国の方針が明確にされたけれど、この時点から流れが大きく変わったと見ている。ラム書記長の思想と国家観、中国との緊密関係が中国訪問でより明確になった。また高市首相の訪越でベトナム側の日本への態度の微妙な変化を筆者は感じ取ったけれど、これら今までと姿勢が明らかに違ってきた印象は払拭できないのだが、高市氏は気が付いたのか?多分無理でしょう。
確かに成長は続いており、都市の様相からも発展を感じることが出来ます。
だが解決しなければならない問題は山積。専門家、高度人材の育成、地場企業の技術やノウハウの革新は無く、先進工業国を目指し裾野産業が大事であると理解しながら出来得なかった訳で、原材料に精密部品など今も輸入しなければならない。産業の基本である製鉄、石油プラントも自国の技術力では覚束ない。
新幹線計画、原子力発電所計画は復活したけれどこれも技術やノウハウはなく運営するにも専門家はいない。まして資金が無いことは何時ものことで外資系企業の進出、投資を未だに受け入れなければならない状況なのに、自国、地場企業の自助努力は見えてこない。個人所得、インフラ整備は急速に進んだが、現在の立ち位置はどうなのか、これを考えたい。
簡単に党大会で決定した方針を挙げるなら、2030年を一つの区切りとして、国は新たな発展に向け、10%の成長目標を設定。ヴィジョン、目標、推進力、行動計画を明確に確立、発展を続けるだけでなく突破し、飛躍、統合と地位を高め、成長するだけでなく持続的に国民生活を向上させる新しい歴史的機会を切り開いたとしているが、時はラム氏が74歳を迎える。人事の刷新が必要。
政府はIT、AI、DX、グリーンビジネスなどを興し、産業構造を変革する基本方針を持っており、各国に支援を要請しているが、どこまで可能なのか。
実現するため祖国、国民、憲法に対する政府の絶対的な忠誠、党中央委員会の指導の下で団結を表明し5つの主要な方向性を示したが主要部分を要約すると、政府は近代的で柔軟な経営思想に基づいて統治を行うことが大切で、法体系を整備し、行政手続きを最小限に抑えてボトルネックや障害を排除、言行一致の強力で効率的、効果的にする、国民に奉仕する近代的で建設的な構築を行う。
さらに経済を高水準かつ持続的成長へ導くため、年平均10%の成長率を達成することを公約としてあげ、そのために科学技術とイノベーションを生産性、競争力、戦略的自立性を向上が原動力だと位置付け。国の経済が主導的役割を果たすように促進し、民間経済を最も重要な推進力とし、全ての自治体、企業、市民が平等に貢献し恩恵を受ける機会を確保すると、本気度は高いと思えるが。

・人事に観る変化 フン新首相は我が国にとって重要人物となるか?

今回の人事では、ラム氏が書記長と国家主席を兼任する事となり、首相は交代して親子二代の政治局員でサラブレッドと言われる若手のホープ、レ・ミン・フン氏が国会議員495人全員の賛成で首相に選出され、2016~2021年の任期で書記局員と中央組織委員長を兼務するとした。これは極めて重要で、彼の経歴を知れば理解できるが、再確認する。
フン新首相は北中部ハティン省出身。1970年生まれの56歳、この歳での首相就任は、ホー・チ・ミン主席の片腕というファム・バン・ドン氏(49歳)に次ぐ2番目に若い。因みに父親はレ・ミン・フォン元内相・公安相、言わば親子二代に及ぶ政界の純血種だが、公安関係でラム氏の心証は良く経済・金融面でも頼もしく信頼していると考えて間違いない。
彼の経済センスは、ベトナム国家銀行に勤務、2016年に史上最年少で総裁に就任した。2020年までの任期中に、柔軟な記入政策を実施、為替レートの安定、インフレ抑制、不良債権の処理に力を発揮したことでも分かる。
さらに金利引き下げ、生産・ビジネス分野への資金流入政策をも促進して企業や経済が発展する基礎を造ったとされており、稀に見る能力の持ち主との評価。
1993年に国家銀行では国際関係部門でのキャアリアを開始しておりIMF関連の業務も担当、市場経済と金融分析の研修も受けているから、これまでの首相の中で最も経済に精通、また唯一の金融通、専門家であると考えてもいい。
2011年、副総裁に任じられる前はアジア開発銀行部門で責任者、国際協力部門でも局長を歴任。人事、組織部門の担当や、業務にも精通しているというからこの上ない人財。こうした顕著な実績と実務能力が評価され、国が今以上の経済発展をするためには経済学、金融理論も熟知している逸材であるため、ラム氏が最適任者として首相に登用したのに違いありません。
また埼玉大学大学院へ留学し、公共政策の修士号を得ている他、フランス語も達者なグローバル人材であり、HCM市とダナン市で開設される金融センターも彼に拠るものかも知れない。今後の日本との関係性と活躍を期待したいが、切れ者との噂が高く只者ではない。本音が見えず今まで通りに行きませんぞ。

・ラム書記長 高市訪越前に中国を国賓で訪問 如何なる意味合いが!

書記長と主席兼任はホー・チ・ミンさん以来であるが、心配されるのが高齢化。筆者は彼の後釜になる人物として選んだ(禅譲)のが新首相フン氏ではないかと思える。海外経験は豊富であり、国内外の経済・金融に大変強く実務を理解。若くて精力的に行動出来るし、何よりもフン氏の父親共々公安畑の出身なので信頼できる身内なのです。
ラム氏は前書記長が目指した汚職撲滅にも貢献したが、実のところ国民の不満に対するガス抜き、目線そらしであるが、路線は継承している。
公安の立場で閣僚の身元を調べ上げたのは元首相グエン・タン・ズンと同じ。主席と目されたけれども裏切りにより失脚したが、今回の人事でラム書記長はズン氏の子息を政治局員に登用した。この処遇にどんな意味があるのか。
要するに今の政治局員の殆どが北部出身者であるが、推察するに信用が置ける公安関係の身内で固めるという意図が明確に表れている他ありません。
ラム氏は今回の共産党大会の報告を習近平にするため訪中したが、李強首相等政府要人と会談。両国の共産党が国家発展を推進、包括的な指導力維持と強化は両国の社会主義近代化の推進、二国間の長期的かつ安定的、また健全な発展の保証であることを強調している。両国で協力関係、人的交流や貿易を促進、また鉄道を雲南からラオカイ~ハイフォンにまで同じ標準軌で結ぶなどが決定され結びつきを強化している。という事は、乗り換えや貨物の積み替えをせず、ベトナム国内を国際列車が走る訳で、全国的に流通を支配することを意味する。
ラム氏はまた中国との関係は、客観的で最優先事項であると表明したとする。
両国は同志である、という精神を守ることの重要性を強調。強い政治的信頼、実質的防衛、安全保障協力、深い実践的協力、強固な社会的基礎、緊密な調整、効果的な相違の管理と解決を行うことが含まれ、運命共有の越中共同体を実質的かつ効果的に着実に前進させることに合意。社会主義体制を守る基盤として対話チャネルを活用するとしている。大臣級ホットライン、高官級の相互訪問、民間交流など人的交流を深めるとした。これは社会主義における国家建設に関する相互認識であることを意味し、国民にも詳細を発信しているのです。
政治に関してベトナムは一つの中国政策を支持することを再確認。中国が正当な政府であると表明したが、これは明確に台湾を指すものであり如何なものか。また香港、新彊、チベットは内政問題で安定的発展を支持するとしたが、人権の政治化、工具化、また主権国家への内政干渉を口実として人権問題の利用に断固反対するとした。
ベトナムはこれまで全方位外交を展開して発展して来たが、ラム氏の中国寄りの姿勢が今回の訪中でより鮮明になり、合意は基本的に中国の意向に沿って進められた感じがするけれど、これまでのベトナムの発展に台湾が大きく寄与している事実をどう見るのか。裏切りとまでは言わないが、恩を仇で返すような印象を受け、ラム書記長に変わっただけで思想が先祖返りとは、先進自由主義諸国からすればリスクになる可能性もあると知るべきです。
ズン元首相、サン元国家主席は両名は共に南部出身。経済成長を図るため外資系企業の投資・進出を拡大、貿易も世界各国とFTAを締結するなど積極的。だがラム氏は親中派と見なされる。経済成長を維持するため海外企業の投資を否定するものでなくバランスを取っているかに見えるが目立つのは中国企業のベトナム進出が急に増えたこと。ラム氏が書記長再任後に訪中した際に中国鉄道企業と会いベトナム国内での鉄路敷設が一存で決定された程なので、これは流通手段をほぼ開放するのと同じ事。ベトナムのインフラ整備は中国の一帯一路構想に組み入れられたと見ていいかと思われる。

・ベトナムの立ち位置

兼ねてからベトナムの経済は先進諸国から数十年遅れていると言われてきた。だがこの所は急速に民間企業も力を付けてきているのは違いありません。ではベトナムの経済社会の実態と変遷はどの様であったか。

ベトナムでビジネスは段階的発展をしてこなかった。多くの業態がわずか10数年でほぼ同時に進んでいったが、地場企業に戦略やノウハウなどなかった。
社会経済の年代的動きを分かりやすく、学問的に解説しているのが、マルクス主義経済思想家で現東京大学准教授の斎藤幸平さん。これを簡単に上げてみる。
1,第二次大戦後 これは産業資本主義の時代といい、大量生産・大量消費が産業形態。利潤は産業利潤とあるから工業製品を指すと思える。
2,1970~1990年代 商業資本主義時代 ブランディングやマーケティングで商品戦略。ビジネス・商売で利潤を得る。 
3,1990~2010年代 金融資本主義時代 金融市場が発展 利子信用   
4,2010年以降 テクノ資本主義 デジタルプラットフォーム産業
  生産や流通の条件を独占的に所有する事で得る利潤。
としているが、日本なども何となくこの様な流れにあったことは理解できる。
ベトナムは資本主義国でないけれど、如何なる企業形態でも利益を上げて行かなければ世界の中で飯は食えない。では戦争が終結してからこの様なトレンドを段階的に経て来たかと言えばそうでなく、現時点であっても混在したまま。
ベトナムは国を発展させるため先進工業国に成ろうとした。それには裾野産業を整備して部品製造をしなければならない。だが結果として失敗、外資企業の進出で製造国にはなったが組立産業の域を出なかった。
輸出構造をみると外資企業の割合は72%を超えており、これは自国企業の発展が見られず、進出外資系企業に甘えがあるということでしかない。
悲願であった国産車は何とかVinグループが工場を作って生産するが、外国へ完成車輸出までは行かない。
では各地場企業が明確な経営理念を持って消費者志向でマーケティングを行い、自社ブランド商品が作れるまでに成長したかと言えばそうでなく尻切れ蜻蛉。
金融はというと、株式は2000年初頭に市場が開設されたが、金融センターは今年になってHCM市にやっと開設。新首相は金融の専門家であるが、国際的信用度はまだ低い。現在政府は産業構造を変えようとし、IT化、DX化、また脱炭素社会、グリーンビジネスを目指そうとしているが、専門家がいるかと言えばそうではなく、科学技術者を外国から良い条件で招聘しようと試みているが、それだけ高度人材は不足している証明に過ぎない。
商品流通小売り業態と全く同じで、段階的発展がなく、勢い先進国に肩を並べようと焦っているのは分るが事は容易に進む筈がありません。
一般市民の生活から見ても分かるけれど、都市部に暮らす人と地方とでは大きな格差が開く一方。各省が外資企業の投資進出を得るため、工業団地の造成で市や省の収入を図った。国は地方へ交付金を払わない。都市部やその周辺部に外資企業が集まる、地方の人は現金収入を得るには出稼ぎしなければならず、学歴が無い仕事はなく収入も上らない。こんな状況だが筆者が1990年代後半の状況、格差は拡大してゆく渦中を見てきた。

・高市氏訪越に意味はない

高市氏は5月の連休に訪越。幾つかの協力文書に調印をしたと報じられている。だがこの前に韓国のイ大統領が国賓でベトナムを訪問。250人もの政財界から参加があった。
高市氏は新首相の招きによるもので、ベトナム国内での記事は多くなかった。ラム書記長がこの後にインドとスリランカを国賓で訪問が決まっており、関連する報道が多かったが、彼女の影は思う以上に薄かった。
韓国のイ大統領にはラム書記長が自らインフラ開発、スマートシティー、半導体に原子力発電所などの優先分野に韓国企業の投資を拡大するよう要請したが、日本でこの様な現地発報道をみることはなかった。どうみても可笑しくない、というよりベトナムの冷めた気配を感じる。
では何故このように思うのか。高市氏とは南北新幹線、原子力発電所の話などなかった様だが、その前に日本の対ベトナムへのODAは約3兆円で世界一という巨額であるのは誰もが承知している。
ベトナムにはJICAを通じて高速道路、橋梁など大型協力の建設、HCM市初の地下鉄、既設国鉄の古くなった橋梁や保全補修、発電から脱炭素などなど様々社会基盤、文化、教育、農工業振興等あらゆる支援を行ってきた実績があっても食傷美味、仇花になった。
ベトナムはインフラ整備が進み、安全で豊かな生活を享受できたが、現在ではベトナム側に拠るとODAには日本の企業が付き制約を受けると不満タラタラ、内心ではうっとうしく思っている。出来れば自国でとか技術やノウハウだけでいいとか、韓国などの国へ鞍替えなどを考えている訳です。
だが地場企業にそれだけの自社技術があるというのではなく、JVで日本企業と組む事でこの国にはなかった必要な機械が導入され、高度な技術、ノウハウが蓄積されてきたのは事実だが、もはや円借款に無償支援は迷惑で、袖にしたいという意識が常にあり高市訪越が切掛で不満が噴出した。甘えるだけ甘えて腹一杯になれば乗り換える。信義も報恩もありません。
しかし未だ以ってこの国に世界が必要とするだけの精密部品の製造能力があるとかプラント技術などがあるかと言えばそうではない。さらに常に資金や人材が不足している。高等教育機関が少なく高度な技術を教えることが出来る教員も足りないのが現実。そこで高市は500人もの博士人材育成協力を申し出ているなど目出度い限り。この国がサプライチェーンを目指すのであれば多様化と戦略的に整備しなければ世界から信用を失うだけ。
確かに経済成長をし続けて来たが、この要因とは海外の企業がベトナム国内で生産するからで決して自国企業の生産力が上ったとか、自国企業が世界で通用する技術が開発したというものではない。これを理解せずに勢い南北新幹線を自国企業の技術で建設するなど無謀極まりない。さらに原子力発電所の再設置が決まったけれど、日本は建設期間が短く危険と断念。ロシアが一号炉を建設する可能性が出て来た。しかも運用するには人材も不足していることが分ったが、建設期間中に育成できるのかは疑問でしかありません。

・国家インフラ事業としての新幹線と原子力発電所建設

これらの詳細は幾度となくコラムに挙げているが。サン国家主席、ズン首相のツートップ時代に計画は立案されたが国会で否決されている。確かに必要性があるかと言えばなかったので極めて常識的な判断が動いたけれど、けだし正解。
原子炉が急に復活した背景は、この国が中所得国になり国の威信をかけてという想いもあったかも知れない。だがそれだけでなく実質的に経済面からみれば、外国人観光客が増え、産業も発展してきた。新国際空港も今年には稼働するし、国が科学技術国として様々な新しい産業を構造的に変革しようと共産党大会で決議しているけれど、AIや半導体、データセンターなど電力需要が逼迫する。
計画停電など絶対に許されないが、2030年には今の発電能力の3倍が必要とされる。そこで慌てて稼働をする必要性が出来来たけれどベトナム側の拙速さで日本は無理と断った。無知の知、これが分らないベトナム。
ロシアに第一原子炉は任せるが、第二原子炉は2035年の稼働を目指し韓国大統領訪越の際に支援を要請したのが真相。すでに韓国電力公社や韓国輸出入銀行が素早く動き、国営ペトロベトナムと覚書を交わしているが、韓国はWH社との間には解決すべき問題があるが可能か。
ベトナムは、技術は元より巨額資金を賄えない。自国で細々と準備して来たが、実績と経験が無ければどうにもならない。日本は巻き返しを図り次世代型小型モジュールの原子炉で攻める様だがどう見ても上手く行くとは思えない。
新幹線はと言えば、降って湧いた様に地場企業で行なうとし、幾つかの企業が乗って来た。現地報は新幹線と共に地方鉄道の敷設をニュータウン建設と併せて行うとある。技術・ノウハウは積み重ねた経験から生み出されるものでだが、地場企業にこれ等は全くなくベトナムらしく見切り発車。
こうした事業、建設から車両安全運行、信号システム系統、運転士等の訓練、ATSなど技術はなく全てゼロスタートで海外に依存するしかないのが現実。だからこそVinグループは断念したが経営資源の集中と正論を吐く。
そこで韓国にサウンドした。既存の鉄道は東欧の支援で車両を輸入してきたがこれら友好国との関係を絶って新幹線を着工しようとしており、仁義すらない。スペインとかドイツ企業の名前が挙がっていたが、ラム書記長中国訪問で急遽中国企業に決定したかのような現地記事も見受けられた。というか何の情報も事前に無かったのだがもはや出来レース。何故ラム氏の一存で決まったかだが、即ち中国への土産であったのではと勘繰ってしまう。
ラム氏は南寧市を訪問した。移動手段に使用したのが高速鉄道。もちろん中国側のデモントレーションだが、中国の実力を見せつけ、嫌とは言わせない暗黙の了解をさせた。だがインドネシア、ラオスの様に無理矢理に建設した結果、債務の罠に嵌ってしまう結果となったが、ベトナムもこの例に落とされる危険があることを知るべきです。
中国は、ベトナムに対して戦略的インフラの連結を加速させ、その為に両国を結ぶ3つの標準軌鉄道案件の積極的実施を求めた。これは中国から列車が直接乗り入れることを意味する。ベトナム製品の中国市場への流入の増加を歓迎し、生産とサプライチェーンの連携強化を図り、主要分野で協力と投資拡大を約束したが、これは懐柔策にしか過ぎない。ふたを空ければいつの間にかベトナム国内には中国企業が乱立し、街中には知らぬ間に中国製品が溢れる結果なんて状況がリスクとして見えて来る。
また中国から強力な投資、技術移転、基幹産業の発展とベトナムにおける生産とサプライチェーンの確立、エネルギー確保を中国にすがりたいがため調整を求めたいけれど、中国は絶対に紐を緩めるなどあり得ない。

・レアアース 国家戦略品として扱われる可能性

今回の高市氏訪越の目玉。もしかするとレアアース調達?とも思えなくない。
日本の新聞等の記事ではこの希土類調達に関して、ベトナム側と合意があったように書かれている。だが現地メディアには全く記載がなく、本当に新首相やラム書記長との会談でこの話が出て、協力文書に書かれたのか分らない。この理由に関して現地の報道から読み解くならば、ベトナムのレアアースに関して最新事情を先ずは知っておく必要があります。
現地経済記事にはベトナムは鉱物資源の宝庫、鉱物によって埋蔵量は世界最大。中国、アメリカの合計の4倍にも相当する量があるとしている。
政府はレアアースが重要鉱物資源であり、戦略物資として国家の管理下に置き、法律の改正や通達を発令する事、また資源の全国的調査を行ってデータベースを作成し、探査と試掘を行うことなど、戦略鉱物産業の発展と基盤を築く必要があるとしている。
また地場企業に付いては十分な採掘や処理などの技術が確立されていないとし、課題を解決して戦略的自立性に貢献する事、財政と投資、国家と官民協力及び投資家による開発、高度で適切な技術を習得する事、官民協力にはDXに基づくスマートマネジメントを導入する事、を指示したとある。
先進工業国家を目指してきたけれど、希土類の発見でこの国は鉱物資源国家として降って湧いた様に世界有数の埋蔵量を保有することになった訳で、鼻息は荒いと思える。現在はマサンの関連企業が鉱山を保有しているため大きな利益を上げているが、民間企業に好き勝手させることには絶対にならならず、国家戦略品として国が管理するようになって行くに違いないと思えます。またラム書記長の政権が中国企業とも協調することも考えられなくない。
どのような資源があるのか。ますはアルミニウムの原料になるボーキサイト。ベトナムの埋蔵量は約31億トン、これはギニアの74億トン、オーストラリアの35億トンに次ぐ世界3位とあるが、中国でさえ7億トン弱しかない。
ベトナムのボーキサイトは主に中央高原地帯で産出され、高品質だとされる。
この他にも6億トンのチタン資源を有し国内92%を誇っている。
また数百という鉱物資源、非金属鉱石、珪砂、ジルコン、錫、金鉱に鉱泉鉱床がある。また海域には大規模な石油、ガス田もあって、政府はこの地域を国立石油ガスセンターとして開発する計画があるとするが、まだ始まったばかりで埋蔵量は正確ではない。
またベトナムは中国、ロシアに次いでタングステンは世界三位の埋蔵量があるとされ、北部タイグエン省は国内最大という90%を誇っていると云われる。
今最も必要とされるのが、リチウムイオン電池で重要な成分となるニッケル。ベトナムにはタインホア省が国内最大の埋蔵量を誇っているとされ、この地域で300万トン以上。またソンラ省に42万トン強、 カオバン省に14万トン程度の埋蔵量があるとされ、合計で360万トンが確認される。
こうしたことからベトナム政府は、ニッケルの価値と可能性を充分に認識しており、昨年には金、銅、モリブデンなどと共に鉱石の探査、採掘、加工に利用計画を発表。この計画とは先進技術の適用、付加価値の向上、そして開発過程における環境保護の要件確保を強調している。
現在希土類について採掘から製造に至るまでの工程では環境汚染があるとされ政府は、企業が大規模鉱山開発に深層処理と同時に投資をすることを奨励。
さらに注目すべき鉱物だが、国内で最大の埋蔵量を持つとされるカオバン省の銅鉱山採掘権を民間企業が保有するが、推定埋蔵量は1,400万トンとされる。年間60万トンを処理、稼働率は70%というが他に新たに発見される可能性もあります。
ベトナム政府は単に経済的に重要というだけでなく、これまで国内では資源を調達できないとされ、その多くを輸入してきた国から、重要鉱物を世界に供給する資源国家という立場に大きく変わろうと自信を付けている。
エネルギーやデジタル化などで需要は急速に増える一方の世界的戦略鉱物資源だが、世界的な埋蔵量を誇る割には鉱物や地質学、冶金や金属を専攻する学部を持つ大学は無く、専門家が政府、大学教員にいるなど聞いたこともないが、唯一秋田大学鉱山学部卒の人がいて、当時は鉱物に関する仕事など無く日本語を活かして外務省の通訳兼インスペクターをしていた。
地味な仕事だが極めて重要な学問の領域なので、専門性の高い高度人材の養成を早急に図る必要があると考えられる。
現在まで日本や韓国、台湾や他のアジア諸国などがベトナムの求めに応え投資や企業進出。さらにODAを受けて経済成長と国の発展を続け、過去の政権が経済連携協定を行い、世界各国と協調姿勢を取って来たけれど、ラム氏の姿勢は掌返しの恩知らずと見えて来る。
書記長は中国と社会主義国同士の関係強化しか頭にない模様で、思考はまさに中国の一帯一路構想、回廊一体の枠組みの強化に与するものでしかないと考えられます。
共同声明の中身を読むほどに、記載された文言の裏を読めばベトナムが中国の属国的立場になって行くのではないかと思わずにいられない。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生