この先のベトナム経済発展に関連する諸事項

2022年7月7日(木)

統計局の外郭団体は、今後の経済発展への原動力となるひとつが製造業と見ています。これはベトナムを万年赤字体質から黒字に転換したのが携帯電話製造。もちろん韓国企業の進出に拠るものだが、国内企業でもこの所生産を開始して海外に輸出している。部品さえあれば組み立てはお手の物。さらに若い技術者がどんどんと生まれているので、価格競争になればMADE IN VIATNAMの優位性は発揮できると考えられるが、大学教育と海外留学者の成果と言えます。こうなると他にも完成品を作ることが出来る可能性は他に幾らもある筈なのだが。
さらにハードだけでなくこれからは特にソフト。有能な人材が帰国して起業しているので、ここに注目したいと思います。これまでも多くの日本企業が委託とか外注でベトナムへ部分的に発注していたのだが、もはや自社で全ての工程が可能になる訳で、こうなると日本市場は得意先。既に複数のベトナム企業が日本国内に事業所を設立し日本人スタッフが営業している実態があり、これからさらに増えると考えます。これ等の企業はトップ自ら日本語・英語が出来るため日本を足掛かりに世界へ進出。グローバル戦略も可能となる強みを持つ。
ベトナムへの進出も魅力はあるが、視点を変えて如何にそれぞれの事業能力に適した環境や分野で共通した事業を行なえるか。これもひとつの合理的で効率を追求できる海外進出への有効なステップで戦略転換期かと考えられる。

製造業に関してはやはりサプライチェーン構築が究極の目標であり、そのためには様々な課題があるが、いかにこれを乗り越え、今の中国にとって代わるか。
これが最大の難関。しかしこの所の中国の動きと、ベトナム国内での動向から見ると、研究開発、製品の高精度化などに関して、痛みは生じても自助努力を払わなければならないが、どうやら徐々にその体制が出来つつあるように考えられます。正直あと何年かかるのか、また素材・原材料調達R&Dができるか。企業態勢、もの作りへの精神性は十分とは言えないが、COVID-19を切掛けに、或いは大きなターニングポイントとして真摯に認識し、産業構造と態勢変換への姿勢を官民で行う必要があると考えます。ところがこれが上手く行かないのも事実だが、本気で変えようとする試みが随所に観られるようになりました。
また農業、小売業、エンターテイメント事業も加え、今後のベトナム経済発展を占う試金石になると統計総局は予測しています。

但し、今回のロシアのウクライナ侵攻で、この先経済成長率がどの様に変わるのか懸念する所だが、世界経済に及ぼす影響から逃れるのは難しい。リスクをどの程度考慮しているのか分らないが、世界から見て基盤は脆弱と言えるので6,5%達成を厳しく捉え、新しい挑戦として褌を締め直すことが重要です。
政府は公共投資、インフラ整備を進め、輸出拡大・加速、継続的なマクロ経済の安定化を行う必要がある。世界的値上がりの中で生活必需品の価格監視を行うこと。インフレ傾向を伺いつつも国内の生産と消費のバランスを取り、内需拡大を促進して経済の安定を図ること。様々な障壁と除き、このところめったやたらと起きている役人の不正や汚職を徹底して取り締まる事。さらに不動産価格の安定化を図り市民生活の安寧と勤労意欲の活性化が肝要なのだが、企業のやりたい放題、まかせ放しでは益々乖離するばかりでしかありません。

先ほど最低賃金の引き上げが2年ぶりに決まり、都市部(第1種)では5,9%アップして468万VNDとなります。これは地域によって第4種の6、9%増の364万VNDまであるが、いずれにしてもCOVID-19の影響で据え置かれ、この間物価上昇に見舞われ労働者は生活が困難になった状況にあるとします。
この引き上げ案は国会で承認を受けるが、承認されると今年7月1日から23年12月31日まで適用される予定となっている。ところが異を唱えたのは、かねてから延期を要望していたVCCI始め日本商工会議所などの8つの雇用者関係の協会。未だCOVID-19の影響が続いており企業は困難に直面している。最低賃金が予定通り引き上げられた場合そのコストが製品に転嫁できない。
そうなると多くの企業は生産規模を縮小するか、また労働者の削減を余儀なくされ、従業員が火の粉を被れば元も子もなくなる。延期できなければ倒産する他ないと主張しているが、経営側としては無理からぬことに違いありません。
これまでベトナムは政府自ら主体となり海外各国・地域と経済連携協定を締結し、徐々にその成果が表れていた。だが加工(労働生産が極めて低い組み立てに拠る、労働集約型単純労働の)貿易主体という輸出構造。しかも海外企業が輸出総額の72%以上を占め、毎年比率が上っているのが実態です。
さらに繰り返しになるが、製品力の問題に加え一番の泣き所は素材・原材料の調達。自国生産や製造できないものが多く、これ等は輸入するしかありません。
これらの依存体質は一向に変わらない。このままだと先進工業立国として真の自立は出来ず、先進工業国入りという呪縛から解き放されません。
また多くの若い人材を労働輸出と称して、派遣目標を設定してまで海外へ送る事業から、個人的にはこの方式から転換しなければ何も変わらないどころか、人材ロスをしているだけでしかない。受け入れ国側にも問題はある。だが投資せずに目先の外貨獲得は得られるものの、廃止する方向になければ自国産業の成長に支障をきたすのは間違いない。
こういう状況のなかで統計総局は農林水産業の安定を指摘。多くの製品が需要の拡大で高価格が維持されているとしています。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生