越中間の具体的方向 ますます中国との関係が鮮明?

2024年5月23日(木)

フエ議長は双方が政治的信頼を強化し、ハイレベル会談を増やすと共に、党、政府、議会、外交、公安、防衛などの重要な協力を促進することを提案。
また二国間の新たな機運創出、貿易促進、両国の開発戦略の連結を強化、鉄道、高速道路、航空機リンク、金融、デジタルトランスフォーメーション協力促進、さらに人的交流と社会的コンセンサスを生み出すコミュニケーション活動での促進などあらゆる分野での双方向の協力、両党と国家が相違点の管理を行い、超越して解決する精神で適切に処理する提案をしたとあります。
これでもかと云わんばかりの盛りだくさんな内容。此処まで来ると常識的に考えても、「オマカセ定食を食い放題」なんていうのと同じで危険この上ない。
かつて中越紛争が起こり、鉄道を撤去。双方に抑留された兵士を解放した際にはベトナム兵士は国境を越えた瞬間、中国側が用意した服や靴などの用品を脱ぎ捨てたという気概は何処に行ったか。中国に組み込まれても良いから共産党と社会主義への道を共に歩もうと言っているのと全く変わりません。
片や一方で帰国した外相は西側諸国や日本の要人、また国連のグテーレス議長などと会談。如何にも八方美人のシタタカ外交を繰り広げているという矛盾。
何処に軸足を置いているのか良く解からない。こうした状況がこれまで進出してきた海外の国や企業はどう見るのか。
中国は不動産を切掛けに国内経済は暗黒とも報じられ末期的。リッチ層は国外に資産を移し、移民までしようと目論んでいる。お陰で日本の不動産は中国人の金持ちに買われ、円安もあるけれど値段は上昇。法的制限を未だに整備しようという気が無い政府。一時的に不動産業者は儲けるけれど、管理費未払など多くの問題が近い将来起きるのは必至です。それでなくても生活習慣や国民性の違いからマナー違反は多く、近隣トラブルを起こす可能性も高い。
ベトナムにとって中国の進出、企業浸食はどうなのか。本気で捉えないと墓穴を掘るだけで、チョン氏の意向で国が動くのも奇怪です。

こういうフエ議長の提案に対して習近平国家主席は歓迎の意を表し、党チャンネルを通して戦略的交流を維持、高官級の会談レベルを増やし交流と協力を惜しまず、国家統治の経験と理論を共有して実践的な協力促進。とくに国境でのスマートゲート導入をするとした。これは入境の簡略化であって、エネルギー、鉱物・産物、新興産業の分野で交流促進を意味。さらに中国の思惑はベトナムの協力を得て地方開発と結びつけることであるが、こうしたベトナムの提案は水を得た魚であり、中国のベトナムへの経済開放よりも自国の発展に寄与するというわけなのです。
フエ議長は早速雲南省昆明で両国の投資貿易振興に関する法律政策フォーラムに参加。双方の実業家450人が出席したとある。
今回が二度目だがフエ議長は両国の地方間での潜在力を上げるとし、ベトナム国会はベトナムに進出している中国企業などの海外投資家に有利な条件を提示するため、複数の政策、明白で公平な法的枠組みを行なってきた。新たな党と国家関係構築のため長期的な進化をすると発言。様々な産業分野での覚書締結や合意書に調印したと報じられています。

・29年までに越中高速鉄道2路線着工

訪中の最中に、ベトナム政府は2029年末までにベトナム北部と中国を結ぶ2路線の高速鉄道を着工する方針を発表したのです。
予定されているのはラオカイ~ハノイ~ハイフォン~クアンニン省。ランソン~ハノイ。の2路線という。この路線はフランス植民地時代、ハノイ~ラオカイ、ハノイ~ランソン、全長167キロで敷き設された、中国側・広西チワン自治区、憑祥市に接続するが、両路線は老朽化が進み、さらに中国側の鉄路と接続するにはゲージ幅が合わないという問題があるので有効利用できない。
新案ではラオカイ~クアンニン間441キロを時速160キロ、ゲージ幅1435ミリで当初の提案としている。タイミングよくというか、まさに習近平国家主席と会談が行われた最中、発表はお手盛り。この鉄道建設は中国鉄道建設公司が行うとなっており、既に習主席訪越時にチョン氏との間で決まっていた内容だが、今回の議長訪中で面談したところ資金も中国側の拠出に拠るもの。

・バック・ホア・サン社、中国異企業に5%の株式売却

大手小売企業の同社が中国の投資会社CDHに株式を売却したとの報道。まだ設立2年の新しい企業だが、現在270億ドル以上の資産を管理、様々な業態へ350億ドル以上を投資しているという。具体的金額は明らかではないが、開発と運転資金にするという。だが小売業の競争は激しく累積赤字が8兆VNDもあり、改善を要していたとある。
これまでにも中国企業のベトナム進出はあったが多くは製造業。特に繊維産業はM&Aを重ねてきたが、此処に来て状況には変化がみえるのです。
隣国であり、多くの部品・原材料を中国に依存してきたベトナム。だが小売業は他の外資系企業が参入、最近はタイのCPグループの投資などが急速に増え、これはベトナム国民の所得向上と、モノは揃ったが今後は高級品への買い替え思考が高くなって、押しなべて三次産業が好調。将来的にCDHはこれを足掛かりに多方面への投資・事業参入も目論んでいると考えるが、いよいよ以って中国企業の進出加速がさらに続くと考えます。

・フエ議長の解任

ところが4月26日、フエ議長は辞意を表明。VOV5に拠れば党中央委員会本部で第13回中央執行委員会の会議でフエ議長の政治局員、国会議長の職を本人の申し出で解任する決定を下し、5月2日の臨時国会で議決しました。
中央検査委員会、当局者の報告でフエ氏は党規約を始め、幹部党員の模範を示す責任、指導者としての責任を負うことに関する規定に違反した。とあります。
また党は彼が国の重要な指導者である事を強調したものの禁止事項違反、国の幹部として国民の模範とならなかった。党と国家、国会議長として尊厳を損なった責任を問われるべきとも報道されています。日本の国会議員連中に、爪の垢を飲ませてやりたくなる。
とにかく僅かの期間で国の最高機関の内3人が解任されるという異常事態だが、チョン氏のコメントはなかった。
ゲアン省出身の67歳、チェコの経済大学卒で経済学博士。ハノイ財政大学で副学長から財政相、副首相窓を歴任。2021年3月に国会議長就任。

そこに来て、中国は5月1日から3カ月間に亘り、南シナ海でベトナム漁船の漁獲禁止を通達。これに対してベトナム外務省は抗議したと報じられています。
これはホアンサ諸島に対するベトナムの主権を侵害するだけでなく、国連海洋法条約にあって排他的経済水域における主権も侵害するとしているのです。
先に書いてある通り海洋問題は、両国首脳の合意と共通認識を厳格に履行し、南シナ海における関係国の行動宣言を厳格に遵守し、海洋法に於ける国連条約に基づき南シナ海行動規範を締結することが重要としたはずなのに、舌の根も乾かない内に度重なるこんなやり方。
政府は状況を複雑にさせることなく、南シナ海の平和と安定、秩序維持に貢献するように要求したが、なしの礫で狼の遠吠え。漁業協会も一方的かつ不合理と非難しているが、聞く耳を持たない中国。舐められたものです。
外相と国会議長は何しに中国へ行ったの?

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生