ベトナムは中露に歩み寄るのか

2024年5月5日(日)

日本やアメリカとも包括的パートナーシップに関係を引き上げ、全方位外交をみせたけれど明らかな方向性が露見してくれば水を差しかねない。これはどういうことかといえば、この国の経済が持たないということを意味します。
これまでは政治的に安定している、と進出セミナーでも喧伝されていたのだが、チョン氏はプーチン大統領に3月26日に電話で会談。この時に安全保障などについて議論しているという。大統領再選を祝し、ベトナムへ招待しているが、もはや全体主義者同士の話。チャン氏は個人的にアジアの国の中でベトナムが同盟国としての仲以上に親しくしたいとノ想いを見受けるのです。
また中国外務省は4月5日、ベトナムのブイ・タイン・ソン外相が中国を訪問、王毅外相と4日に中国南部の広西チワン族自治区で会談したと伝えました。
ソン外相は昨年12月の習近平国家主席のベトナム訪問を踏まえ、両国関係は新しい発展の段階に入ったことを強調し、台湾や新疆ウイグル自治区などの問題では中国を指示する立場を伝えたとなっている。そのうえでソン外相は人権や民主を利用する他国への(中国を念頭に置いて)内政干渉に強く反対すると述べたとあります。この発言は他国での広い意味での一般論としてならば理解共有できなくないが、この場にあっては親中国的発言と思わざるを得ません。
またこの発言は本人というよりも、恐らくはチョン書記長からの伝言であって幾分かはリップサービスという意味合いがあると推測できるものと考えるが、此処まで露骨な表現が出来るというのは一介の閣僚の一存では済まされません。
また王毅外相は、対立するアメリカを念頭に、地域と平和と安定を破壊する動きに警戒しなければならないとし、ベトナム間の投資拡大の促進やエネルギー分野などの協力を確認したとあります。これはベトナムの産業事情を分かっての上から目線的であって、しかも中国企業の進出を意味するものであるのです。
ベトナムは得意の八方美人的全方位外交を展開。中国ではアメリカのイエレン財務長官一行が訪中して、5日に広東省広州市で何立峰副首相と会談している。対話できる関係を維持しつつ融和的ムードを演出。しかし過剰生産や国家安全保障に関連する経済活動に懸念を伝えているのは未だ強硬姿勢は崩さないとの姿勢を強調しているとある。だがトランプが次期大統領に成るとどう変わるか。
さらに報じられているのは進出した外資系企業の多くの駐在員が帰国できない状態になっているなど極めて深刻な事態が生じていると云われています。
自国経済に火が付いているにも係わらず、孤立を深めつつ傾向にあるとも云われている中で、ベトナムを始めとする社会主義諸国との連携を深めたい、もしかするとそれ以上の過去から引き摺ってきた、表には出さないにしろあたかも朝貢時代の復活を願うような中国の必死の思いが言下に感じられます。
ベトナム国内に於ける真の実情を熟知している人は、こういう近年のベトナムの傾向にある種の危機感を持っているというのです。
現地に長く在住している人など、国内の反政府組織の存在に目を付け国家予算に言及している。すなわち国防と警察予算が増額されているとあります。
これは世界の現在の情勢をみれば、デタントの中で当然かもしれず近年の日本もご多分に漏れません。
だが然るにどこに対してかと言えば、日本など西側諸国の様に中国やロシア、北朝鮮といった国へ、ではなく国内のこうした組織のためだとあります。
現政府の中枢にいる人と同様、彼らも歳を重ねた。となれば、行きつくところ内紛が高じてテロではないかと伝うのです。考えすぎかもしれないが、此処までに発展してきたのは目指すところの社会主義国家建設とは遠く離れ、もはや自由経済への道程であり、これを担ったのが海外投資。要は外国の資金と技術で一応は発展したのだが、この国が提供したのは若い低級な労働力のみです。
しかしこうした状況にも変化が起きており、現政権は旧態依然で心もとない。
統計からは高齢化社会に突入する傾向になったことが明らかにされている。となればこれまで進出に有利とされてきた神話が崩れてしまう。さらに賃金高騰状態とインフレ懸念がでてくれば、外資企業の進出メリットなど無くなります。
またこれまで書いた様に政治的混乱が続く中、一般市民でさえ真の事情に疎いという訳では無く、検閲や統制などをされる状況にあっても一定程度の正確な情報は入ってきます。これは戦時下でもBBCから発せられるラジオで戦局を逐一理解していた当時の状況から、さらに進化しているため分らない訳がない。
また相も変わらず外資頼みに資源や原材料も中国に大きく依存している状況。大きく産業構造の転換もしなければならないはずなのに、掛け声だけは大きいけれど、教育水準が遅々として追い付かない状況は改善されていないなど問題が山積しているだけで一向に解決を見せない。
そんな中でこうした抗争が起きかねないとするのなら、明らかにデメリットや弱点の露見オンパレードだとしか思えません。

2000年に入ってから、かつての貧国は急速に貿易黒字国へと転換したが、これは自助努力ではなく外資系企業に拠るものであるのは明白。だが勘違いをしているのか、地場企業の実力を過大評価しているのか、足元が見えていないのに拘わらず、こうした権力闘争とも評されるのは何処かに隙が見え隠れ。
誰もが元の苦しい状況には戻りたくない。ますますチョン氏の考え通りには行かなくなるどころか、高度に発展するためにはチャン氏派は不要となります。
論理を飛躍させれば、何らかの形で変化が起きる可能性を考えているのだが、外国人が肌で感じる心配事はまんざら杞憂と言えないのです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生