日本のメディアはトランプ氏が大統領に就任すればどのように日本経済へ影響があるのか、などと経済界、大手企業の社長などにインタビューをしています。
多くは不確実性を挙げており、何を要求してくるのか分らないのは不気味に違いないが、一方でほぼ大きな問題は無さそうな気配を感じさせる期待もする。
彼の言動を見れば、また側近となるマスク氏も自己第一主義。挑発や荒唐無稽で奇々怪々の発言は計算されたものだろうが、愛国者向けと国威発揚のデモンストレーションかと思えなくない。勝つために手段を選ばない、意に沿わない人物や事象に対して敵意を露わにするとか、感情むき出しのパフォーマンスは複合民族国家故のリーダーとして高圧的やり方か。そこにはすり替えの理屈とでっち上げに恫喝の繰り返しで優位性を保とうとし、扇動しまくった末にわざと喧嘩を仕掛け、負けを認めない駄々子振り。移民国家でありながらトランプ氏は移民を排斥、強制送還すると脅しをかけるが、家族共々そのルーツの延長。マスク氏との温度差が時を経ずして何れ対立する可能性は否めません。こうなるともはや自由と民主主義の破壊であり、亀裂と分断でアメリカは弱体化して行き、中国との覇権争いとかAI競争への勝利なんて問題ではなくなります。
真似放題の暴言で如何にも虚勢を張っているのはUSS買収問題も同じ。狡猾さでバイデンの判断を正当化しようと計るけれど、その実は自社、自身の利益だけで利他の精神など欠片もなく本音隠し。悪意をもって日本をネチネチ攻撃。世論を誘導し如何にも彼らが正しいと主張し、事実を隠蔽するやり方は須らく共通している。正義などあろう筈が無く思い上がりも甚だしく支離滅裂は焦りからくるのかも。政治家というよりもビジネスマン・トランプ氏、リーダーの素養とは喰わせる事。司馬氏の項羽と劉邦からだが、食わせられなければ戦意喪失で兵士は離れます。4年間辛抱して後、世界の勢力版図や経済がどう変化しているのかだが、何れにしてもかき回されるだけでなく動静を注視し、清濁、賛否、是非を含みながら対抗的パフォーマンスを講じなければ勢いに流される。
ベトナムでこの様な自国に及ぼす経済への影響に関して、企業側からにしても何らかのコメントがあっても不思議ではないけれど、見た覚えがありません。
それどころかロシアの首相が来越、ラム書記長は両国の関係を一層深めるために幾つかの方針を直接提案している風見鶏ぶり。各分野での協力を拡大して、特にアジアにおける包括的優先パートナーと位置付けている。またロシア側も今年にロシアへ訪問するようにとのプーチン氏からの招待を告げたとあります。
それよりも発展の準備が整ったとか、科学技術の開発が進化した、地場企業の海外投資が増える見込みだなどと威勢のいい提灯記事が発せられています。
またベトナム政府は、今年のGDP成長率を国会目標の6,5~7%を上回る8%~10%とする方針を明らかにしたと現地紙が報じている。
このため体系的な法制度の整備やマクロ経済安定化、国営企業の経営効率化、戦略的インフラの開発などを推進していくと意気揚々の印象を与えています。
では実際に経済への影響など考えていないのかとか、企業は何も考えず対策も講じていないか。など思っている矢先、現地経済紙でアメリカへの輸出リスクは?という記事が出たけれどベトナムに都合の良い内容。果たしてそうなのか。
ベトナムにとってアメリカは最大の輸出相手国であり、統計総局の報じる所は昨年の輸出額が1196億ドルに達したとあり、一昨年比で23%の増加。これはベトナムの全輸出額4055億ドルの約30%であり、アメリカにとっては8位の相手国。此の主要品目は靴・履物、木製家具、機械設備としています。
ベトナムはアメリカにすればこれまでも輸入を大きく上回るくらいの完全な貿易黒字国だが、これ実態をトランプ氏が黙って見過ごす訳などありません。
しかも為替に関してベトナム通貨VNDは信用されておらず、為替監視国となっているので、何らかの措置があるとみておいた方が良いと考えられる。
バイデン氏が訪越した際には、中国との関係から何とか引き留めておきたい意向がありパートナー国に昇格したけれど、この国は全方位外交だし先記の通りロシアとの関係は同じ社会主義国として深く緊密。これは絶対的であるけれど、中国との関係もこの数年かなり密接な関係を構築しているのが事実。
何時まで経っても東西の間に挟まれている。これは地政的、歴史的に長い間利用されてきたのが実態であるが、アメリカとの戦争に北が勝利した結果、現国家体制が敷かれているのは周知の通りです。だがそれでは成長できない。
このためドイモイ路線に切り替え、社会主義は捨てないけれど、資本主義的企業経営に委ね、西側諸国の投資と進出を得て経済発展を続けて来ました。
1996年の国会決議で先進工業国化へ踏み出したけれども、実の所は全く上手くいかなかったし発展も成長もせず磐石でないままの地場企業力です。
そこへこの所、中国企業のベトナム進出増加。さらにベトナムの高官や国会議員が訪中。中国側との折衝で貿易や人的交流の促進などを決めているし、鉄道建設でハノイから昆明直通が決まりかけ、新幹線も名乗りをあげてくる。
経済発展の原動力は西側諸国のODAに投資と企業進出。これは否定できない事実。赤貧であった国家も外資系企業の輸出で黒字に転化、外貨準備高も増加の一方。これで通貨も安定し始め、VNDの切り下げをする必要が少なくなった。証券市場も整備が進んで、何とHCM市を金融の中心にするなんて欲ボケた考えが出てきたけれど、現地の金融機関を使った経験があるのなら分かるけれど、レベルが低くてそういう状況には全くないことが分ります。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生