日本企業の製品が選ばれる理由①

2021年8月20日(金)

・ベトナムで圧巻の存在感を誇る日本製エアコン

20年ほど前、最初の事業を始める際、何の商売が良いかスタッフと考えたのが白物家電とエアコン。元三洋の現法社長Tさんにこれから良いね、とお言葉を頂いた。時に新品は高根の花、中古品が売れていた。一見すると型式は古く日本の下取り品の様だが、性能は悪くなく此処では立派に現役で頑張っている。現在は輸入不可だが、当時の経済事情を反映していました。憧れのエアコン、いつかは我が家にと誰もが渇望。
このところCOVID-19禍に関わらず、市場はクールダウンどころかヒートアップしていると言われ、日本企業の製品が最も人気とあります。
バイクに続きエアコンも圧倒的に日本製が強く、中国ネットにまたも日本企業が市場を制圧するのではとの記事を掲載している。
この頃、旧サンヨーがHCM市の隣のビエンホア市の工場で現地生産。東芝もパナソニックも参入。他にも主なメーカーの製品がありました。蒸し暑く気温が高い所ゆえ、特別な機能は必要なく安くて冷えればいい。
本体は200ドル位からあったが、配管と工事代は日本と事情が違い別途見積。
人気があったのはこの時分でもダイキンだが現地では製造していない。輸入品のため他社より高いが、評判を聞いて品質を重視する消費者からリクエスト。
韓国や中国にタイの外、ベトナム製も何やら日本語らしき怪しげな社名で販売。部品や生命であるコンプレッサーは造れないので日本から輸入したと説明していたが、搭載するのは寄せ集めた品、何処の製品なのか社員も分らないというアバウトさ。こんなところにベトナム製造業の宿命でもあるもの作りは不得手、「組み立て」産業国の事情がみてとれるのです。
また、偽装で問題になったのがアサンゾという新興家電会社。中国製品を輸入して、そのまま再輸出しました。また自社製品として国内でも売るのだから、全くの詐称行為。これには流石に消費者が怒りの鉄拳。自国の製品を買おうと政府は煽るが、消費者が信用しないのはこんなことがあるからです。
さて、この記事には世界一の売り上げを誇るのがダイキンであり、これを筆頭にして日本企業の製品は世界一(の品質と機能)だと論じています。
ベトナム国内販売高はパナソニックが25~30%、ダイキンが19%となっておりこの両者でシェア半分。この理由、日本企業は現地のニーズをよく理解している。都市と地方とでは事情が異なるにしても、日本製は主に都市部で健康志向が強い市民に選ばれている、地方は安ければいいとしています。
急速冷却、空気清浄、湿度調節に換気機能。インバーターやスマホで操作などのシステム。他にお掃除機能など芸の細かさを挙げればキリがない。
こうした高機能は他にない。高くても所得が増えたため、買え替え時が来れば折角ならこの際にリッチな気分、上級機種を選ぼうとなる訳です。だが10年以上前でさえ事情通はイオン清浄機能が良いと機種指定がありました。
これに対して地方はこだわらない。消費電力の少なさ、故障の頻度が低いなどの理由から、結局は日本製の新型モデルがオトクだがイニシャルコストを優先。
またかつてHCM市内に大きな看板を彼方此方に設置。市場への浸透を図った中国TCLなどは存在感が殆んどないと伝えています。
ならばタイや韓国に国産品?はどうなのと心配するが、余計なお世話か。

このダイキン、今では市内1区にビルがある。ベトナムでもハノイ近郊の日系第二タンロン工業団地に2018年、100億円を投資しエアコン工場を建設。いよいよベトナムに乗り込んできて圧巻のシェア拡大を図ると言います。
アジアではタイ、マレーシア、インドに続いての稼働。この地域での販売額を3800億円(2018年時)とし、経済成長が続き所得が増える事を見込んでアジア各国へ展開する戦略とかで頼もしい。
メーカーの事務所があれば現地の事情が把握でき、戦略も立てやすいし消費者と直接つながるのでマーケティングもできる。セールス的には販売チェーンの拡大が可能となり、現場で作業をするスタッフの教育訓練ができるため、よりサービスや修理などが速く確実にできるメリットが生まれ、良いことずくめ。
ベトナムの電気屋はチェーン系列、いわゆる特約店は無い。従って設置などについて、メーカーの指導や訓練を受けられる訳ではありません。こういう所に標準化された適正な技術力があれば、安心して工事が任せられる訳です。現在ベトナムの消費者にとって、製品への信頼度と品質の高さが重要なポイント。
前にも書いたけれど修理に出せば部品をB級品に摺り替えられるとか、新品で買ったのに内部の(見えないし、分からない)部品が中古品に入れ替えられていたなど、とんでもないことがありました。これは日本人宅で実際にあった話。現在のように大型電気量販店がないため、街の電気屋で奥さんが購入。恐らくしこたま値切り倒したためなのか、敵もさるもの、一筋縄では行かない曲者。
ベトナムの気候は湿潤で高温な日が続く。日本と違い室内機・室外機の汚れは酷いし、年中・四六時中機械は動き続ける。こうなると製品力の差が出て来る。機械洗浄とか冷媒の確認などメンテナンスは大切。冷却力が落ちるうえに電気代の負担も増える。こういう顧客満足サービスは日本企業の得意技。高品質で長持ち、信頼度が高く安心。プラスの連鎖が続きます。
元は大阪金属工業という社名。堺に生産拠点があったのが、今では世界に雄飛。東欧に進出し近隣国へ供給と踏んだところ、余りの人気でその国だけで手一杯と嬉しい誤算!という話もあるほどの超優良企業。今後の活躍が見ものです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生