日本食レストラン逸話

2020年12月25日(金)

大阪に本社がある企業からベトナム進出に関する相談を受けました。
この様な時期にと思いつつ担当役員と面談。同社は複数の業態で全国展開して知名度も高いが、今後国内事業は伸び悩むであろうと予測しての計画。
海外展開は初めてではないがベトナム現地事情は全くの不詳。担当者が予断を持たずに真剣に聞いて戴けるのは有難い事です。
京都商工会議所でVAC主催のベトナムセミナーを開催した折、この企業の別の部署の方がお見えでした。社内に何かしらベトナムに関わる雰囲気が必然的にあったと思えます。

HCM市内の日本食店は‘17年度659軒。3年前から2倍に増えており、いまはあらゆる料理が食せられます。だが善し悪しに差があり過ぎ玉石混交。
経営者は日本人が約半分だが、ベトナム人、韓国人などもいる。また近年ではご当地料理もあるし、饂飩にラーメンはもとより北海道産の寒流魚介類が揃い、結構な値段なのに何時も客が一杯。此処まで成長したかと感じます。
所得が増えた事や、日本食は世界遺産に認定され健康的、というので人気は上々。人口は増加を続け、加えて食の洋風化が進み肥満に血圧、内臓疾患等の病気が増え、健康に良いと思う人も多く、参入機会は熟しているとみていい。
一流飲食企業が正真正銘の和の味を投入するが、淘汰も頻繁で栄枯盛衰真只中。
根付いて欲しいものです。
20年程前はHCM市に10指足らず、誰彼も知っているが専ら日本人御用達。どの店も大阪名物道頓堀のくいだおれ、食堂百貨の千日堂とCMにあった様に毎日来ても飽きない位にメニューは豊富で飽きない。日本語恋しさに隣接省から車を飛ばし連日通う人も居たが大体は顔見知り、噂話や情報交換が飛び交う憩いの場でもありました。

・現在は無いが盛況だった店 人生いろいろ

筆頭格は「おはん」、ご主人はITさん。何とHTVのコマーシャルに出る位の有名人。大学校友会設立の際には何かしらあって、ボトル一本戴いた事があるほどで、気前がよくかなり流行っていました。
カンボジアにも支店を出したけれど1年程で閉鎖。7区やハノイにも出店したが短期間で閉店。様々な周辺事情、ベトナム人コックが親爺の味を再現できなかったのも一因に在ります。展開は時期尚早であったのかもしれません。
「だるま」はKYさん。商社の駐在員だったが、帰国を命じられて在住を決意。素人から一念発起、手打ち蕎麦を食べさせた処で餃子の皮も卸していました。天ぷらも揚げられるまで料才を発揮。情報が少なかった頃、店に来た旅行者や新規出店の世話を焼いたほど。一声掛けると在住者が集まり知恵を絞りました。
「なごみ」。元大手家電企業駐在員STさんが帰国後、会社を辞めてまで再来越とは聞こえが良い。レタントン通り周辺が日本人街と言われる前から店を運営していました。本人は包丁も握ったことも無く任せっぱなし。

かつて旅行ガイドに載っていた「日本橋」。KD氏の店は影の日本大使館との噂。これは有名な奥様のお陰だったが、御本人も裏話をするので間違いないけれど、時が経てば縁も切れて神通力はなくなる。レックスホテル1階から市場近くに移転後、仕事を変更したが深入りは程々に。名前すら出てこなくなりました。
元大手商社AY氏は食堂と日本米を栽培。私は此処から米を仕入れアパート内でレストランを運営。超老舗「さくら」は閉店後に多くのベトナム人が独立。他にも懐かしい店もあるが、主人が歳を重ねると継続は難しくなってきます。

・今も健在 確実に根を張っている老舗もある

「どらえもん」は忘れてはならない存在。何でもありは創業時から、近年移転したが未だに健在。
ハイバーチュン通りの「Kカフェ」。サイゴン河で屋形船を就航させて人気。同じ場所で堅実に営業しているのは慶祥しかない。
今、第二の日本人街と呼ばれるファン・ビッ・チャン。一早くに移転したのが「くーろん」。こんな所がね~、何で?と古くから居る人は首をかしげる下町。
元サイゴン・プリンスH内、二店目は家主に追い出され同地に。店内は広くは無いが固定客が居るし、自家製魚の干物が有名。
「赤とんぼ」も料理は豊富で古くからの安定した馴染み客が多い。
「ルナ」、日本の漫画が気軽に読めるので潤いの場でした。今の店は3カ所目。
 ミルフィーユのトンカツは食べやすかった。
「SUSHIBAR」は数店舗あるが創業店は移転。先のKY氏が相談に乗っていたと聞くが、仔細はあるにしても他人より自分の店を心配しなくては。
焼肉文化を広げたのが大阪・福島に本店の「浦江亭」。大成功で支店もあるが、日本風焼肉店第一号といっていい。ベトナム風焼肉店はあるが、庶民が焼肉を普段に食べられるのは豊かになって来たバロメータです。

これらの皆様方、夫々に物語がある。初期に進出するのは大変勇気が要ります。
中国人は包丁一本あれば世界何処でも食べて行ける。だが日本料理は何本もの種類を使い分け。出汁は命だし料理も繊細、綺麗で美味。特に味に煩い大阪にある企業がほんまもんで真っ向勝負に挑む。おいそれと真似できない。
いま状況は様変わりし、専門化の傾向にもあり乱立気味の日本食レストラン。狙いは日本人でなく、どの店でも口の肥えた賓客はベトナム人。美味しい上物を食べ、お金をたくさん使ってくれる。多くの人が日本へ行き、本物の日本の味が分る人も多い。勢力図がどの様に変わるか期待したい所です。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生