経済成長と人口増に伴いふえる一方のゴミ。量だけでなく種類もドンドン変化しています。環境面からも何とかしたい。だがどうにも収まらないのが現実。
ベトナム資源環境省に拠ると、都市部における全廃棄物は一日平均4万トンに達していますが収集能力は85%しかなく、また農村部でのそれは半分に満たない状況。収集された廃棄物の約42%はリサイクルされているとありますが、残りは焼却されるか埋められているとのことです。
都市部のゴミ処理は限界といわれるほど。HCM市でも埋め立てる場所が無く満杯となっていますが、最新焼却プラント設備は稼動していなく未整備のまま。資金にノウハウがないのだが、日本の環境省の支援でゴミを燃料にする実験が昨年夏からHCM市で始まりました。
では生活をするうえで、日々ゴミに関する実態はどのようなものでしょうか。
アジア各国から来日した人にとっての驚きと戸惑は地域のゴミ収集の煩雑さ。自治体で異なるけれど、難題となるのがゴミ分別や場所に時間が決っている。スーパーなどは小型家電までも回収。裏返すと母国ではいい加減なやり方が罷り通っており、誰も気にしていません。
一般の家庭ゴミはほぼ週に2回町内を回って収集します。HCM市にはHEM(ヘム)と呼ばれる幅1M程度の細く狭い道が縦横に張り巡らされていますが、こういう所にも手押し車で集めに来てくれるので有難い。だが年中暑いHCM市、車が通った後には汚水が滴り悪臭が酷い。おまけに雨季にはとんでもない大雨が降り、地盤の低い所では冠水する事もありますから、収集する人の苦労は並大抵ではありません。このゴミ収集は無料でなく毎月各家へ集金に来ます。
詳しい分別要綱はなく、シールを貼るとか、専用のゴミ袋もない。各家庭ではビニール袋にアレやコレやと詰め込み放題。パンパンに膨らんでいて玄関前の路上に置くか塀に引っ掛けてぶら下げているのです。漢字で書けば護美だが、厄介なものでしかない。ポリバケツには入れないし、水分をたっぷり含んだ生ゴミまで放り込んでいるためハエや蟻がたかりっぱなし。また、とんでもなく大きいドブ鼠が食い散らかした残飯が散乱していても、放置のまま片付けない。不衛生極まりないが注意を払う人はいない。粗大ゴミは夜中に空地や道路脇に素知らぬ顔でこっそり捨ててある。公衆マナーにルールもないのが実情です。
ところが要らなくなった生活用備品、空き缶にビン、紙類、ペットボトルからプラスチックなど再生利用可能な資源ゴミを玄関に置けばおばちゃんが持って行く。れっきとした商売でリサイクル原料屋が買ってくれるのです。日本の様に処理費用など不要だし、綺麗に分別しなくても構いません。しかもその場に居合わせれば少額だけれどお金をくれるので嬉しい。日本は電気製品、日用品などを勝手に持って帰ると窃盗になる場合もあるが、そんなバカな揉めごとは聞いた試しがありません。
捨てれば見向きもされない只のゴミ。使い回せば資源、金になる。文化の違いは何処にもあるけれどこれが普遍原則。だが此処でもプラスチック原料(ゴミ)は輸入を停止。自国で持て余すほどなので当然です。
市では分別規定を公布。これには分別や梱包をしていなければ収集をせず、繰り返し注意をしても守らないと最高10万円程の罰金を課す。また色の付いたビニール袋に入れ内容物を書くことを推奨とある。此処までは流石に不可能でしょうが、いよいよ始まった分別収集です。
筆者:IBPC大阪 ベトナムアドバイザー 木村秀生