日本の運送業者はプロフェショナル ~引っ越しから~

2021年5月26日(水)

日本の3月は入社や入学に合わせて家の購入や転居、また企業では転勤に伴う引っ越しが多い時期です。
私はこれまで国内で9回+単身2回、ベトナムは16年9カ月間に2回と相当多いが、企業の場合内示が出るのは1~2週間前なので慌ただしい。
自宅にはまだ封を開いていない幾つかの段ボール箱があり、複数の業者の箱がそのまま押し入れに収納している物もある。
また子供にとって県外への転居は、余ほどでない限り期待よりも不安と苦労が付きもの。親しい友達と離れるのもそうだが教科書や教えられる内容が異なるのは結構辛い。さらに遠隔地であればあるだけ、言葉の問題も転校する本人、受け入れる側にとっても、その歳では互いの言葉や文化は理解し難いのです。
給食にしても彼の土地の味付けや食材が違うのは当然。当人であれば興味が湧くだろうが、子供や外に出た事がない配偶者は気遣いでお手上げになる。
社交的な性格であればまだしも、他人と打ち解けたりできなければこれもまたシンドイ。長男は3度小学校を変わり、習う教科が重複したとか、習わなかったとかで難儀したと言う。
これが海外となれば憧れが悪夢へと転化。体調に変化をきたしてストレスから拒食症になって帰国したが、治らず死去した例も卑近にあります。ベトナムにも来て物怖じしなかった娘が!外見では計り知れない。
一方で私が転勤した場所が祖父の居た跡地。しかもそのビル正面にあった食堂の主人が転居前に居たご近所で豆腐屋をしていた人と分かり驚いたこともある。
規模が大きく支店が多ければ転勤はやむを得ない。しかし転機と捉え人生に何らかのプラスになればそれに越した事はないのだがそう容易ではない。

さて中国の記事には日本の引っ越し業者の仕事は究極のサービスでプロの仕事だと評価をされ、これは学ばなければならないと提言しています。
一言でいえば荷物を運ぶだけでなく荷造りと梱包、引っ越し先での家具の配置から清掃までやってくれる。靴や衣服、食器などは専用の箱があり、汚れたり壊れたりしないと絶賛している。
社員の場合は手当てが出るのでいいが、個人となれば引っ越し貧乏という言葉通り結構な出費が嵩むのは辛い。
私の経験から食器等は新聞紙などに包んで割れないように箱詰め、これを何度も熟せば慣れるけれど結構時間が掛る。だがこの時に余分なものや不要な物を片付けられるメリットはあるけれども、引っ越し先で梱包を解いて収めるのに何日も必要だしゴミの山と化す。
日本の業者は制服着用で清潔。アルバイトも含めて数人が重い荷物を汗だくになって運んでくれる。この時、エレベータを使う際には内部を養生し、入り口からはシートで覆って傷がつかないように配慮。室内も同様で白い靴下に手袋をはめて作業する。中国の人は日本人の細部にわたる配慮とし、あり得ないと歓迎。現地で盗聴器発見サービスはあるが、荷物が無くなったとか、壊れたなどのトラブルは結構あるし雑な作業だと言う。費用が高くついても日本は如何に安心できるか!その魅力を伝えています。

・ベトナムでの実態 トラブルは日常茶飯

ではベトナムはどうだろう。日本の業者や現地に日本人が居てサービスを行う所もあるが、現地の人に頼めばトラックを借りてくるとか、荷物が少なければ荷車を改造して動力を取り付けた三輪車が来る。これは引っ越し専用ではなく、なんでも運ぶため綺麗ではありません。
友人の親戚がこの商売をしており、何度も家でごちそうになったが気の良い男。
努力して中古トラックを買ったが社員もいない自営。企業として発展するまでにはまだ時間は掛りそうな気配。
ではどのような問題があるのか。まず物が傷まないように養生することはありません。順番を考えないで手当たり次第に載せて行く。もちろん段ボールなどは用意してくれない。従って自分で傷がつかないように新聞紙や不要になった毛布などで包んで紐をかけました。運び出しや転居先ではハダシ。壁や廊下もシートを張る作業は行なわず、終わってみると傷がアチコチに付いている。
これが普通だし雨の多いHCM市では濡れても気にしない。
仮にガラスが割れたとか、大きく凹んだなどの場合、日本なら補償してくれるがここではそんな事はしません。業者は保険を掛けない。要は単なる運び屋。サカイを見習え。物を運ぶんじゃない、まごころを運ぶ。と縫いぐるみパンダに徳井優の勉強しまっせおじさんのCM。

これは引っ越しだけではありません。無農薬野菜を中部の高原で生産していた日本人S君。冷蔵トラック便がないのでバスでHCM市へ送る。これをデポで箱詰めして購入者に配送するが、これを受けたのが先の日本人がマネージャーをしている会社なので安心した。ところが多くの顧客から苦情が出たのです。
商品は生モノなのに取り扱いが乱雑なため傷んでしまって使い物にならないというのです。結局は引き取らざるを得ないか破棄してもらうが代金は取れない。こういうことが続いて儲けにならないどころか配送が問題で、大消費地であるHCM市からやむなく撤退。預かり品を大切に扱わないといけない流通業なのに現地企業に心得がない。
この所ベトナムはEコマースが急成長。いわゆる小口の商品配達がそれに伴って事業拡大している。しかし配送中でのトラブルは後を絶たないという。

私の経験からも客船に乗っていたベトナム人の友人が、香港で買った贈り物を港に上陸した際に送ってくれた事があります。
だが郵便局に取りに行った際にガチャガチャと音がする。開けてみると茶器類が割れている。これを告げると、受け取りますか、放棄しますか、とくる。
何とも馬鹿げた話と驚きの連続。国内物流への期待は間違い。
壊したのは自分ではない。確かにそうだが、企業の一員としての自覚や責任感というものはありません。仕事すべてに於いてこういう傾向を見受ける。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生