都市部の下水処理率は15%止まり

2022年8月23日(火)

ベトナム建設省に拠ると、都市部の下水処理率は僅か15%に留まっているのが現状だとしている。この理由はインフラ整備に必要な資金が確保できない。下水道の普及が一部の大都市に限られているのが原因だとしています。
首都であるハノイ市でも下水処理場31カ所の建設が基本計画にあるが、完成しているのは6カ所のみで、処理が必要な下水の28%しか対処できていない。
またHCM市の場合は11カ所の計画に対し、3カ所の稼働のみとなっている。
では未処理地域の他の下水はどうなっているのかだが、これは垂れ流しの実態。
建設省では下水に関する法的規定がない時代に造られた街区では普及が遅れ、また下水の回収率も低いと言います。下水道はおろか処理施設がありません。
HCM市はフランスの植民地であったのですが、この統治下でフランスは下水道整備に力を入れ、当時のアジアで唯一下水道が完備した近代都市であったとされています。しかしこのサイゴンと呼ばれた時代の都市計画では30万人が暮らせると言うのが前提となっているため、現在は実質1000万人を超える巨大都市になるとは想像の域を超えているので不可能。日本のODAで日本の建設会社が処理施設を建設していた時期があり、この時大手ゼネコンが来ていました。また市中心でも日本製シールド掘削機を使って下水管埋設工事をしていた光景を見ていたが、まだ市中心に近い一部の地域でしか利用できないし、古い工業団地では域内に処理施設を持っている所はそれほど多くはなかった。だからメッキが出来ない。これでは意味がありません。
HCM市の中心部で日本食レストランの工事をした際のこと。厨房からの排水が良くないので掘ってみるとほぼ詰まっている状態。こうなると屋内排水管を取り替えなければ機能しない。かなり大ごとになったのです。
他のレストランでもトイレの詰まりは結構あるが、よほどのことが無い限り、通りを良くすることなど考えません。その場対応。
一般民家の場合、直接放流ができない場合どうするのか。住宅を新築した際に、一階の床下に処理層を煉瓦で2層造るのだが、単に沈殿させてから放流。モルタルで仕上げはするけれど、煉瓦は脆くて水には弱い。経年変化で汚水がじわじわ地中に染み出てくる。HCM市の上水道はこれが原因で汚染されている。検査に拠ると大腸菌が基準をかなり超えているとのことだが、この様な汚水が土中に入り込んでいるのが原因の一つだろうと考えられます。
今は日本の汚水処理のメーカーがプラスチック製の処理層を販売しているので、これなら安全だろうと思えるが、問題は価格が高い。見えない部分に金を掛けたくなく、また自分にとってメリットは考えらないのであれば公共心など無く設置する筈が無いのです。
では従来型処理槽の清掃はどうするのか。これは処理業者が居て掃除してくれるので定期的に依頼することになります。

・建物内のトイレの話 汚水処理と言えばトイレは?

ベトナムの一般民家。各階にはもちろんだが、各部屋にも結構あるのは便利。日本と違ってバスルームはプラスチック製ではなく現場施工。シャワー(バスタブがある場合も)とトイレは一体となっており、このため内開きドアが多い。
日本では外開き。これは万一人が中で倒れた場合には容易に助けられるため。引き戸は殆どありません。また明かり用スリットもない。また強制換気装置がなくしかも部屋内であれば窓が無いので湿気がこもる。
建築内装の仕事を請けていた時、発注者に少々費用を掛けてもトイレは綺麗にと提案。日本製の機器を使い、明るい照明とデザインタイルを貼り、面台は木や大理石を使用、換気も充分行ってウンキ向上を心がけました。
清潔感と高級感、取り分け女性に気に入ってもらえる雰囲気作りが噂になればお客様のリピート率は高くなるのが必定。このような細かい気遣いの大切さは日本人に理解して貰えても、目先の儲けしか考えないこの辺りの感覚が欠如しているというのがローカル事情です。
ウオッシュレットも売っているが、多くの場合は簡易型の手動式トイレ専用のシャワーが付いています。近代的な新築ビルでさえ使用しています。ただ水の勢いがかなり強く、慣れるのに苦労するが、価格が安いのは嬉しい。
便器はと言えば日本製もあるが台湾や自国製が多い。だが日本と比べると床から高いので結構シンドイ。子供などは足をブラブラ。身長はほぼ変わらないのだが何故なのか。
先日テレビで放映していたのが「東司」は何?という問題。日本最古の便所があるのは東福寺とかで、この建物の中を写していたが、穴があるだけ。
カワヤ(厠)ともいいますが、昔はトイレが川に在った事から「川屋」が語源。音読みが違う漢字に変換されたのです。ひとつの部屋として独立したのは室町時代との説もあり、平安時代はお姫さまでも野外が普通で消臭は灰を使いました。日本の消臭剤売り上げは世界一とか、香水を使って誤魔化す西洋とは異なる消臭文化の所以です。隠語も様々あって、古くは雪隠。登山仲間だと「雉撃ちに」、女性は「お花を摘み」など直接表現を避けユーモアもありますが、大阪で子供の時から使ったのは「高野山」「奥の院」。ところで便所とは「鬢(髪)を整える所」というのが一説です。
トイレをベトナムではNha Ve Sinh、直訳は衛生所。またPhong Ve ShinとかNha Nho(小さな家)と呼ぶ隠語があるのは同じ。

しかし山間部の僻地では屋外にあって下で豚が餌にしているし、飯屋でも客のものまで再利用。完全循環です。HCM市内の一部でも池の中にポツンと囲いがある。淡水魚を飼っていて、餌をやらなくても自家用で間に合わせる仕掛けになっている。市内に住む知人などは絶対に淡水魚は食べないと言うが、こういう理由があるのです。聞いてみたり、自分で経験しないと分らない事ばかり。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生