今年 山で遭難が多かった

2023年8月25日(金)

8月11日は山の日。ことさら必要と思わないけれど、何でこの日になったの?と思っていた。しかしさして理由は無いというのも可笑しな話。
お盆が過ぎると海は波が荒くなって土用波なんて呼ぶし、山の気候もこの頃になれば急に変わりやすい時期になるので、登高には最後の機会だからかもしれません。記憶では夏山登山はほぼ7月下旬から8月中旬迄に集中していたが、これはこの時節は天候が安定しており、学生や社会人が夏休みになるため勇んで出かけたのです。
山小屋が営業するのは大体6月~10月の間が多いし、大学医学部が常駐する診療所も幾つかの小屋にあったが、ほぼこの時期に開設していた。

今年の夏、気になったのが何時にも増しての遭難の多さ。富士山の弾丸登山のような山での常識を無視した行動は目に余って論外。ベトナム人の団体が数百人規模で全国から集結。リーダーはマナーを守ってなんて呼びかけていたが、こんなに大勢が一度に登ること自体、言語道断で完全なマナー違反。皆が小屋に泊まらず登山道で野宿とは迷惑千万。服装や装備を観れば単なるハイキング。
挙句の果てに高山病にやられ青息吐息で何とも人騒がせ。ほぼ年中暑くて高山が殆ど無い所から来て、若いからと無謀無知すぎて子供以下。計画性の無さと無責任な行動を如何なく発揮。多くの他の外国人も同様に高地の怖さを知らず、全く平地と同じ感覚では事故が起きて当然。これは自己責任でしかない。
また3000M級どころか数百Mクラスの低山でも遭難死亡事故が数件あったのには驚かされます。これは森林だからこそ迷うのだが本人は分からない。
遭難者の多くは60~70歳台が多いようにも感じるが、20~30歳台も居るとある。昨年の統計でも全国での発生件数は3015件、3506人が遭難、327人が死亡か行く方不明とあり過去最高。今年は恐らくこれを上回るかも知れません。遭難理由でも疲労や骨折、道に迷ったなど、どう考えても筆者の経験からみて殆ど考えられないのだが、これに関して山を甘く見すぎた結果で、
近年多くなった素人の俄かキャンパーが、何の訓練も受けずに安易に山に入り、自ら計画せず、考えず、アプリに頼り切った無責任な行動も考えられます。
流行っているグランピングやソロキャンプ、車で来て設備のそろった野営場でステーキなど殆んど自宅。何処がキャンプ飯?これでは経験のない人が、山で通用するわけなど全くないのに勘違いも甚だしい。
かつて好日山荘やロッジなど本当の山好きやプロが集まる店があって専門度も高かったが、今や売らんがため素人への甘やかしで機能よりお洒落優先。メディアもいい加減。熟練度に応じたコース、時間配分、装備品を選ぶべきです。
また高齢者はそれなりの装備をしているが、体力(耐力)、気力、さらに脚力に腕力が衰えているにも関わらず、単独行であるならば過去を過信したためとも感じます。こうなると難易度が最も高い釼岳、北穂~槍の大キレット等へ再び挑戦したいとなるがもはや無理。昨年母親が滑落して亡くなったが子供は助かったなんてことに成り兼ねません。携帯電話が通じたから良いようなものの、私の時代はこんな便利な物はなく、横型のキスリングだったので足を滑らすか、リュックが岩に当たるとか、浮石や落石等でバランスを崩すと谷側に真逆さま。ルートは目印だけで道など無いから、冷静さと判断力が求められる。
などと思っていると、誰もが思うのか新聞記事になっていました。

・専門知識に技術と体力の欠如が事故のもと

高校山岳部の部員が増えているという。元々数が少ないので何処まで正しいか。新聞にもキャンプ人口が増えたからとある。だが割と山で知られた出身高校で廃部になったし活動している学校も少ない。一つには顧問に経験者が居なくて技術を教えられない。都会ではボッカやザイルで訓練する適地が無く、運動量は相当なモノ。こうした普段からの基礎体力作りや技術訓練があるからこそ、事故や怪我無く行動できる訳です。だがこれが積雪期に行動するとなればこんな程度では済まず、並大抵ではありません。
また意外と金がかかる割には何かに付けシンドイ。行程や天幕で野営するか小屋に泊まるかで装備は異なるが、何十キロの荷物を担ぐとなれば歩き方に呼吸法も習得しなければなりません。おまけに気象通報を聞いて天気図が書ける、地図を読んで地形から位置が判断できるだけの能力も必要なのです。
事前の計画で7~8割成功する。情報収集と部員の能力に応じたルート選定。朝は6~7時に出発、2時には目的地に到着の予定をたてる。献立(昼は行動職が良い)と食糧計画や団体と個人備品表を作って出来る限り重量を減らすが、沈殿などに備えた予備も考慮しなければ務まりません。新人や体力の無い者に順次食糧や燃料が減るよう配分する必要もあります。野営や縦走なら野営地と水場を確認するのも大切なリーダーの役目であり、全員に周知させることです。
そして現地での判断力、場合に依っては撤退や、容易ではないがルート変更や下山する勇気も求められるのです。
これまでの経験の中で、ガスに巻かれルートファインディングが出来ず戻ったことが2度あります。特に岩場では水分で湿ってくると滑落の危険もある。
また12月のクリスマス。伊吹山でのことだが、隣のテントで火災があった。石油バーナーがテントに燃え移ったという。冬用テントなので軽いが燃え易くあっという間の出来事。テント内でご飯を作るのだが、けが人が出なかったのは幸いかも知れません。
もっとも薪で火を起こすとか、美味しいご飯を炊けるのは野営で最高の醍醐味。出来ないなら資格はない。基本が出来てから必要なコンロの扱いに慣れること。
なぜご飯なのか。かなりのエネルギーを消耗する登山。必要なのは炭水化物、即ちご飯。山小屋での食事がご飯に味噌汁(塩分)、夜にカレーが多いのは理に適っているのです。山では気圧が低くなるため小屋では圧力釜を使うがテントで野営の場合は料理下手では芯が残る。これを無くするためには経験が居る。

・怖い高山病と怪我

都会に住む人や訓練されていない人は高山病に罹りやすい。空気が高地になると薄くなるので心肺機能が重要。このためには順応するための歩行や勢い高い所へ足を進めないのが良い。また事前に何度か訓練のために近くの山で意識して足慣らしをするのも大切な準備です。
高山病は高度が上がる程、次第に頭痛、吐き気、眩暈、倦怠感や食欲不振になって行きます。また顔の色が無くなり、脈拍も上がってくる。こうなると無理をせず下山が適切。応急の措置としてはゆっくりと呼吸する(はく時が大事)とかツボを押さえること、水を飲むとか薬をのむなどで和らぐこともあります。
さらに重要なのは登山前の休息。寝不足なども一因だと言われる。
落石が原因で手に負傷した新人部員が居た。この時は幸運にも三俣小屋の診療所まで2時間ほどだったか。先に私が彼を連れて行き、荷物は分散。手当を受けてテントに入ってきた彼、安心したのかばったりと倒れ込んだ。
これ等は誰にも当てはまること。だが体調不良になれば誰かに迷惑がかかるし万一事故となれば救難費用はとんでもなく高額。無理無謀をしないのが一番。
時としてパーティーを組むが、煩わしくて単独行、ロマンチストなのだが我儘で偏屈な人が山屋には意外と多い。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生