日本企業の有望投資先(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー 木村秀生)

2019年2月5日(火)

日本政策金融公庫が昨年末に公表した、海外現地法人を持つ中小企業の中期有望投資先トップはベトナムで29,5%。2位中国(11,9%)、3位インド(9,5%)、4位タイ(7,8%)、5位インドネシア(7,6%)を大きく引き離し5年連続とのこと。また進出企業の業績は概ね好調でほぼ60%が黒字、28%が赤字と改善傾向にあり、今後は事業拡大を計画、利益の増加で明るいとみています。
ところが国際協力銀行に拠る製造企業(中堅・中小)調査では、ベトナムは前年の3位から4位(33,9%)に後退。1位中国(52,2%)、2位インド(46,2%)、3位タイ(37,1%)、5位インドネシア(30,4%)となっています<複数回答可>。
既進出中小企業と進出を検討する製造業等との相違はあるが、共通する理由は①労働力が豊富で安価 ②市場の将来・成長性 ③優秀な人材確保 と同順位。今では様々な情報が各種媒体から発信されているため、現地事情に関して一定の理解は得られますが、問題はないのでしょうか。
経済発展が続き毎年の成長率が6%を越える中、ベトナム進出で直面するのは概して地場企業の経営力不足、生産・品質など管理能力が低いこと。スタッフはビジネス経験が未熟で、海外との関係が弱くレベル差がある。現場では賃金上昇が続き、外資企業が増えると管理職の人材難が厳しくなるのが実態です。
経験上、製造業はモノ作りの歴史が浅く技術力に劣る。伝統を守り精緻で良いモノを作ろうとする職人の精神や気概(意地)は受け継がれていません。
また投資・進出して欲しいのだが、法整備が出来ていなく行政も時間が掛る、インフラや物流整備不足などの現状を知るべきです。
一方、所得が伸びれば市場は変化。3次産業が中心になるが戦略的発想は弱くマーケティング力に欠ける。伝統的販売は根強いが、地場企業は店舗を急拡大。商業流通変革、海外勢との競争が激化している状況下にあります。
政府は裾野産業が立ち遅れている事を認め、促進のため民間企業を強化したいと考えますが、実際には育成が遅れ産業全体の4,5%しか占めていません。このため部品や原材料の多くは輸入頼み。組み立て産業が多く生産性は低い。外資企業の輸出割合が70%近いという致命的課題を抱えています。
国内調達はアパレルで約40%、だがハイテク産業では僅か5%。この原因は技術が近隣先進国のレベルに至っておらず、優秀な人材が不足しているとして人的能力の開発、科学技術を推進する政策を講じるとしています。
データだけや現場を知らない人の話を鵜呑みにせず、経営者目線で現場を直接確かめ、事業経験や勘も働かせ利点と弱点を総合的に判断することが肝要です。

(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー 木村秀生)