COVID-19禍での経済成長に関して①

2021年4月20日(火)

・2月になって国内新規感染者が拡大 成長への影響は避けられないか!

ベトナムはCOVID-19の影響を受けたものの、いち早く水際での対応と徹底した感染予防策を講じて世界的な評価を得ていました。
何しろ絶対的権限を持つ首相の指示ひとつで迅速に実行されるベトナム。違反すれば有無を言わせず罰金が課され、最高は禁固刑に処せられるという厳格さ。この辺りの状況は日本と大いに異なり、善し悪しや賛否は分かれるところです。
だがベトナムのテト前後は毎年の如く何かが起きる潮目があるような気もする。
1月28日には国内で変異型感染が初確認され、このためホテルやレストランは早期にテト休業入り。またテト時の帰省は感染地域でなければ問題はないとされつつ自粛する様に呼びかけが行われ、感染拡大を予防するため2月10日現在HCM市では33カ所で封鎖して流入禁止。また一部の省では省を跨いで通過を認めない強い措置を講じ、保健省から連日感染状況が詳しく報じられています。

隔離措置を厳しくしたにも拘わらず、海外からの帰国者のなかに感染者がいて拡がりを見せ、北部のバンドン空港やタンソンニャット空港でも職員に多くの感染者が出たと報じられバンドン空港は閉鎖。とりもなおさず感染を拡大させる最大の原因は、人の移動という証明の他なりません。
2月9日からHCM市で人が集まる映画館やマッサージ、バーにカラオケなど娯楽施設は営業の自粛規制とイベントが禁止。学校は休校となり、テトの名物花火の打ち上げなども中止。この時節の楽しみである各所で開催される花市やフラワーロードなども夜間は禁止と現地から報告がきたほど厳しい。
在住日本人は予定のキャンセルを余儀なくされ、帰国は絶対無理だし何処にも行けず、独り身にはすることが無くふて寝を決め込み、侘しく時間を持て余す。
ところが、こんな状況の中でも郊外の飲み屋街は盛況、満員御礼どころか道路にまではみ出たテーブル席。カラオケ店も営業してお縄になり、2500万VNDの罰金とか。何処の世界でも飽きて箍を外す人はいてうさ晴らしをしたくなる。
また立ち入り禁止の公園でキスをしていた19歳の男女が、マスクを外した咎で取り締まりを受け400万VNDの罰金を課されたとある。マスクに切り口を入れておけば良かったのに?甘い蜜の味を吸った後の熱いおキュウは辛いもの。

・今年の経済成長目標の見通し

この様な状況が長引くならば経済を悪化させる可能性は否定できず、ベトナム投資計画省は、第一四半期の成長率は当初目標に達しない見通しであることを認めたと報道されている。仮に感染拡大が抑制されたとしても当初の目標から0,66ポイント下がり、第1四半期は4,46%となると見込む。
政府が設定した2021年度のGDP成長目標は6,5%。これを達成するためには、残りの各四半期の目標を修正しなければならず、まずは第2四半期を7,11%、第3四半期6,73%、第4四半期7,04%に上方修正する必要があるとしています。しかし同時に感染拡大は企業が撤退に及ぶ可能性があり、観光、サービス産業に一層の打撃を与え業績回復が鈍化する要因になります。
外国からの投資はこの国の成長生命線。これも減少する度合いが高く、今後の成り行きによっては長期的に経済へ悪影響を及ぼし懸念するところです。
併せてこの所目まぐるしく緊張が増す米中間の政治的駆け引きと覇権争いに、アジア周辺各国の混乱。ベトナムも渦中の他ならず他人事ではない状況もある。

こんな中で一月に入ってもインフレは抑制されており金融は安定。テト時期は国内消費が急増するため小売業は堅調。工業生産もテト需要があるので22%伸びたが例年の如く翌月に必ず反動が出てきますが、私も経験した何時もの事。
貿易収支は単月13億ドルの黒字。外国投資は前年同月比で約62%減の20億ドルで、新規案件は47件で約82%減、認可額15億2千万ドルと約70%減。追加案件は46件で40%減、認可額のみ4億7千万ドル・41%増加したが、今後の状況は進出や拡大意欲はあっても感染拡大下では不透明な状況にある。
この様に2021年の出だしは好調であったが、その矢先に感染拡大が急速に起き始め、目標維持への成り行きに少々気掛かりな気配が漂います。

・2020年 GDP成長率はこの10年で最低だがプラス維持

昨年のGDP成長率は2,91%。前年から大幅に減速したもののプラス成長をキープした事は、世界的にも近隣諸国に比しても、自他ともに評価できます。
この内訳は農林水産分野2,68%、工業・建設分野3,98%(製造・加工が5,83%)、サービス分野2,34%となっている。
また構成比は、農林水産14,85%、工業・建設33,72%、サービスが41,63%の比率で先進国に近い。
認可額推定値は約6293兆VND(約285億3010万USD)とされ、25%減。これは国民一人当たり(約9700万人)6488万VND(約2806USD)と計算されます。
またGDPを国民一人当たりの購買力平価ベースで換算すると8397USDとされ(*前年の2019年度、国民一人当たりの国民総生産は2715USD)、ラオスとほぼ同水準とあるが、タイは2,3倍、インドネシアが1,47倍、フィリッピン1,11倍と若干落ちる。ミャンマーは0,64倍となっている。

・これまでのGDP成長の系譜を考える

これ迄の経済成長の流れをおさらいしてみると、今好調とされるベトナム経済だが、その発展の歴史はそれほど古いものではありません。
ベトナムは植民地として長期に至り支配された過程を鑑み、段階的な経済発展が叶わなかったことが大きく圧し掛かり、国家として発達が遅れたと考えます。
前に書いたが、戦後社会主義の道を歩んだけれど国民は一向に豊かになれない。
経済・経営が解る人財に欠け、教条主義だけではメシは喰えなくなります。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生