最近の現地ニュースでは、イオンが全国出店を積極的に展開しているという。
中部で初のイオンモールがフエ市にオープン、これはベトナムで7番目です。
ダナン市ではなくフエ?と思わなくないが、何しろ敷地面積が8,6ヘクタールもあると云われ半端な広さではありません。この近代的ショッピングモールに国内外の有名ブランドが140店入るというのだから、すっかり時代が変わったと思わざるを得ない。モールの建設には1億7千万ドルを投資したとあるので力の入れようが分かるというもの。因みにダナンは計画中とある。
このモールはイオンによれば文化の家、というコンセプトがあると現法社長が述べたとあるけれど、日本とフエとの文化的価値観が調和、融合しているとか。
確かに中部地方は日本と歴史的な結びつきが強く、またベトナムがフランスの植民地時代にあった時、日本軍はフエに駐留し最後の皇帝バオダイを保護した(名目上は)など古老はこの当時をよく覚えているが、概して日本に好意的、協力的であったように捉えている。だが戦争時にはテト攻勢があり、我々世代にはこの当時の生々しい内戦での惨禍の想いは避けられません。
南学日本語学校も二校目は此処に置かれたし、地方都市では日本語が最も通じるとか、都が置かれ歴史的に文化度と教育は先進的。これは今も変わらない。また街の真ん中をフォン河が流れ、王宮が残された観光地で京都そっくりと、門川元市長が会議に参加した。なるほど、そう考えれば何となく理解できるか。
何れにしてもモールが観光客を惹き付けるとか、雇用などの地域経済・社会面、文化発信で大きな利点があると思え、市としては大歓迎。ひとつの起爆剤になるのかと、この地をよく知り、思い出が沢山残っている者として、感慨は深くあります。だが発展の半面、失うものも大きく、この地の貴重な伝統・文化を如何にして保存し後世に繋いでいくのか?開発とは裏腹の関係にあります。
またイオンはHCM市8区に7000㎡の店舗を出店。郊外への展開を始めているとしているのです。
さらに地方への展開も加速の兆候。タインホア省(中部)では当局の許可を得て10,5ヘクタールの用地を4兆2千万VND(1億6700万ドル)で取得。ここに第一期として5階建て、二期で4階建てと7階建ての駐車場を開発し、これを2年以内で第一期を開業する計画。
省はイオンが地元経済を活性化、地元の農産物の消費を促進し、日本や海外へ輸出できると期待している。
すでに日本へは多くのPB商品をベトナムで開発しており、このため地場産業に事業の指導育成をしている経緯から行政が期待している訳です。
またメコンデルタ地域で初めてのモール1号店をロンアン省タンアン市に設置するとし建設を開始、2025年に開業するという。
此処は水産養殖と加工も盛んに行われており、イオンにとってPB商品の海外輸出の拠点としてメリットがあるのではと考えられる。
現在イオンは国内にショッピングモールが9施設あるけれど、これまでHCM市、ビンユン省新都市、ハノイ市、ハイフォン市など主要都市に建設してきた。
これを郊外や地方にも積極的に投資して、モールやアウトレット店を展開し、今後20モールを開発する計画だが、これまでにも12億ドルを投資してきた。
さらに日本で流通するベトナム製品の輸入を拡大する方針であり、人材育成のための奨学金を提供する、とイオンの代表者はチン首相に述べたとある。
首相は人口密度が高く、観光地である都市や省での建設を期待し、多くの強みを持つベトナムの農水産品、靴履物、アパレルをグローバルに展開を依頼した。
またベトナム消費市場は日本に次いで2番目に重要であると、イオンベトナム代表が語っているとしていると報じています。
だがイオンがベトナムに事務所を開設した頃は、こんなに順調なものではなかったのです。
初めに露払いで来たのがPB商品を作っているイオンの子会社A社。この現地担当者とは仕事上でお世話になり話をした所、イオンの進出は決定済だった。
だがベトナムに関して、現地に来た担当者(現法社長)はまるで知識がない。家が偶々近くだったのでスーパーに買い物に来た時の事、用地取得の相談をして来ました。事前にこの国の不動産事情を調べていないようで、全く事情が分かっていない。いとも簡単にHCM市内で8カ所を開発するとか、寝もの物語。
広い適地は国や省、軍隊が持っていると他国の企業のスーパー用地事例を話し、これに詳しい人物を紹介したほどだし、HCM市不動産協会へ連れて行ったが理解できなかった。他にベカメックスの担当者にも会わせたけれど、彼の前任地、日本の地方のスーパーバイザーからベトナムなんて無茶過ぎ。マレーシアとかタイなど他のアジア圏の国と同じ様に見ていた訳です。
さらに地方の業者を集めた集会をホテルで行なった。これはVCCIの肝いりだったけれど、相手はまるで関心がない。資金援助だとか生産の支援、買い取など自分勝手な事しか考えていない。要するにベトナムで地場業者のビジネスに取り組む姿勢を他国と同じ様に見ていたのかも知れません。
これらはもう15年ほど前にもなって時効。すでに海外に事業を展開している大企業でさえこんなほぼ能天気状態だったのです。今では地場企業も発展し、イオンの担当者も代替わり。だが海外進出は事前に現地事情を充分に把握しなければ、初動で躓けば時間の経過とともに事業運営面で機会損失を招く。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生