4月1日から実施された入管法改正に拠る外国人の受け入れ。職種が限定されるにしても、これまでの実習制度だけで無く、より専門的な仕事が長く続けられる特定1号への移行、また特定2号という技能制度。これがどのように活用されて成果が出るのか。人口が減少して行く中、国力を維持するため論議を必要とする移民政策や登用へ如何に影響して行くのか。様々な業種で人材が足りないという切実な業界からの要望に拠る単なる間に合わせでしかないのか?ですが、見切り発車と言われながらも、日越の各関係業者は色めきだっています。
今までの実習生ではなく、長期間安定して就労してもらうため、即戦力の大学生採用に特化した特定2号の人材獲得を目論み、新たに人材斡旋事業の申請を行なう企業が出てきている状況にもあります。
この様な中で日本の建設コンサルタント会社がベトナムの建築系大学と協定を締結。日本の高度な建設技術を学ぶコースを昨年10月に開講し、半年の講習を終えた第一期生28人に修了証書を授与。このうちの6名は日本企業に就職が内定、他も面接の予定というニュースが掲載されました。
これまで実習生に日本流の建築各職種の実技を講習する講座はありましたが、大学生向けに高度な建築技術を指導、本格的に移転する場はありませんでした。
ベトナムでの建築方法は日本とはかなり異なっているのが実情で、短期大学や職業専門学校で時間を掛けて勉強しても使い物にはなりません。実際に現地の学校を視察すれば分りますが、日本の事情を知らないのに送りたいとの意気込みだけ。これでは何ともならない。そこで日系不動産会社が自社向け職人学校を作った経緯が実際にあります。
しかし今回は専門分野での建築技術・土木施工、建築概念、測量・ドローン、CAD製図、および日本語・日本文化と多岐に亘ります。日本語は現場で意思疎通が取れるようになるまで教育。日本文化は、礼儀作法、挨拶と日本社会で生活するための心得を習得。来日後はスムーズに社会に馴染める様にして国内建設関係企業に就労支援を行なうという次第です。
日本の建築物や道路・橋梁などの構造物は老朽化が進行。メンテナンスや建替えが必要なのだが、オリンピック関連工事が終わっても技術者不足は深刻度を増すばかりとの予想。さらに3K現場とされる技術系に進学する学生が減少するなど、高度人材は一層不足する懸念がある。その解決と人材の採用先としてベトナムに目を付け、日本で活躍してもらうとした訳です。
ベトナムの建築物をよく見ればその技術レベルが分りますが、かなり差があります。また大学のレベルも日本と比べると低く「ランキングWEB UNV」に拠ればランク1位のハノイ国家大学は世界1093位、日本では37番目に相当。HCM建築大学は世界11925位、日本では566番目に該当します。進出日系企業に就職は出来ても昇任昇進は難しい。また現地企業と日系企業の合弁が多いのは技術力の差が大きいと思えます。
今まで日本の大学・大学院で建築や土木工学を学んだベトナム人学生は相当数いて、中には有名なアーキテクチャーになっているケースもあります。きちんと基礎から鍛えれば本来は有能だということが証明されていますから、この案は成功する可能性が高く大いに期待できると考えます。
この業種以外も技術系人材の幅広い育成と然るべき評価と登用はグローバルな視点から重要だと感じます。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生