急速にリゾートへ変貌するフーコック島

2021年7月23日(金)

何気なくテレビの旅番組を見ていたら、ベトナム・フーコック島へ若い女優が取材(というか説明役に)に行っていました。最後の楽園とか!
漢字で書けば富国島、カンボジア国境のキエンザン省に所属する島。地図を見る限りベトナム最南端にあるのだが、ほぼ淡路島位の広さと思って間違いない。この島、形から見るとどうやらカンボジアから離れたと考えられます。

何時もの定番ウヮ~スゴ~イ、キレー、オイシーの三大決まりフレーズの連発。これしか言いようがないのかと思うけれど、所詮この程度しか浮かばないのは自分で考えてプランを立てたわけでもなく、仕事だから行くだけのとんぼ返り。とんでもなく高いホテルのスイートに泊まり、豪華な食事も視聴者に発信するためのもの。本人も面白くはないだろうと大きなお世話を思ってしまった。

ガイドブックには、ベトナムで一番美しい夕日が見られる島だと書いてある。
無人島にこの夕陽を見るためだけにわざわざ造った施設があり、此処へは夕暮れ時を狙ってホテル専用のボートで行き、長い木製の桟橋を歩くという演出。デッキチェアーに横になり、酒を飲みながら水平線に落ちてゆく真っ赤な残照に感動させる(金をとる)仕掛けがあります。
豪華でお洒落な夕食も値段が字幕に出たが、ワン・プレートが日本円で5千円ほど。ディナーならこれだけではないから総額で考えると、多分一人1万円で済むはずがない。さらに部屋代を加えると一泊4万円はくだらない。
若い女性が部屋へ案内していたけれど、恐らくこの島の出身だろう、この地域の方の給料は2万円までは到底いかないはず。今に始まったことではないが、仕事とはいえ一泊+食事だけでも2カ月分の給料を悠に超える訳で、此処なら家族が生活できなくはない。貧乏性の私としてはこちらの方が気になる。

と思っていた矢先。日経電子版に東南アジアの有力な観光地として変貌を遂げようとしているとあり、なんでも開発ラッシュが続いて4月に東京ドーム20個分もある敷地にベネチアをイメージした巨大な街が出現したとニュースに。
話題のビングループが開発したという、その名ブランワールドというリゾート。
眠らない街として、365日、24時間様々なサービスが受けられるという。
14年以降28億ドルを投じ1万2千室のホテル、カジノ、ゴルフ場、遊園地が開業し、1000店に及ぶ飲食。雑貨・土産物店、アパレルショップがある物量戦略に驚き。既に連日連夜、光と音楽、噴水が織りなすアトラクションが行われショーを楽しんでいるとある。
また他の観光資本は海上ロープウェーを開通させ、眼下に海を見ながら楽しめるという。これが今までこれという楽しみが無かった新興国流遊ばせ方なのか。経済的に豊かになった表れでしょうが、金さえ出せば人工的で受動的な遊びに満足。個性や多様性が無く何か違うのではと思えるのだが。まあ、人それぞれ。
バリやプーケットに対抗心を燃やし、東南アジアで一番にすると目論むという。
COVID-19禍ながら今年は300万人の観光客を当て込むのだが?

・急速に開発が進んだ胡椒とヌックマムの島

前首相のグエン・タン・ズン氏はカマウ省の出身。南部地域経済振興のために、この島は2013年に経済特区に指定され、観光開発に火が付いたのが発端。
このズンさん、地元のメコンに錦を上げたきらいも無くはないが、カジノには寛容で、HCM市のホテル、ダナンに外国人専用のカジノを初めて作ったほど。
実はこの島、世界一の胡椒とベトナムで一番美味しいというヌックマムが特産。
天与の魚と気候に恵まれ、何よりもこの島の塩が余所と違うのが秘訣だとか。度数表示の高いのが色も透明で臭みは殆どない高級品とされます。
十数年前まで週3便の小型プロペラ機で一時間以上かかったココナツ愛欄土。新国際空港が完成してから観光客は増えたが、それまでの旧空港は飛行機から降りるとターミナルへ歩かされる。飛行機が止まっている間は農民が牛を引っ張っての横断で近道をしても誰も文句を言わない位、長閑な超ローカル空港でした。
当時、観光資源などは殆どない。外国人観光客が泊まれるようなホテルも無く、2004年位に初めて行った時に選んだのがマンゴー・ベイ。海浜リゾートとあるが名ばかりのコテージ型。空港から30分ほど北へ上がる入り江にある。人里離れ手つかずの敷地に牛が草を噛み、誰もいない渚に通り過ぎる風が心地よく完全ワイルド。ファインダーを覗けば如何にも絶海の孤島に見間違うほど自然が盛りだくさん。何もない贅沢な余韻に浸るが、日本人にはどうかしら。
此処へは赤いテラロッサの土埃を上げ、胡椒畑を縫って走るバイクタクシーかオンボロのタクシーが移動手段。一泊20ドルくらいだったと記憶がある程にリーズナブルで若いスタッフはフレンドリー、推しでした。
この時、他に客は居なく借り切り状態。先ほどのリゾートとは違って夜は漆黒、波の音と星空だけの静寂さ。従業員も余計なことは一切しない。

この島に土地を持つ経営者から将来儲かる、と土地を買う事を進められ、観に行こうと声を掛けられたけれど、そのままに放っておいた。
多分、資金が続かない。オーナーは日本資本と一緒に開発したい意向だが開発事業経験のない甘い見通しの青写真、辛いコショーの島なのに。
国の方針で開発を行い観光客の誘致を図ろうとするが、歴史は無く積み重ねた事績もない。しこたま金を投入して無理やり施設を整備して、話題を造ろうと思えるが、何れ飽きは絶対に来る。知名度はまだ低く付け焼刃にならないようにと思うのだが、この国のビジネスの特長かもしれません。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生