新空港着工へ

2021年5月19日(水)

2月5日、HCM市に隣接するドンナイ省でロンタン国際空港の第一期工事が着工され、首相自らが式典に立ち会ったとの報道がありました。
何しろベトナム最大・最新の空港となるもので、この一期では全長4000m、幅75mの滑走路1本、高さ123mの管制塔、年間2500万人が利用できる旅客ターミナル、貨物処理能力120万トンという施設などがPPP方式で(官民パートナーシップ)建設されます。工事費は日本円で4900億円とか。
開業は2025年で国際線80%、国内線20%が利用する。
最終的には三期工事を経て4本の滑走路、年間1億人の旅客と500万トンの貨物を扱う東南アジア最大級の国際ハブ空港になる大国家プロジェクトです。
だがHCM市からは40キロほどありかなり不便。ヴンタウへ繋がる国道51号線は拡幅改修され、市内から近くまで高速道路も完成しているが、空港へのアクセスをどうするのか。鉄道敷設も必要かもしれない。かつて7区のPMHからモノレールが新設されるという噂があったが、整備に資金の捻出は厳しい。
本来2020年に第一期工事がしているはずだった新空港。既に2008年にはPPP方式での事業概要書、ベトナム環境省のガイドラインに沿った綿密な環境アセスメントが日本側より出されています。
現在のタンソンニャット空港は拡張され便利になったが、市内の住宅地にあり危険だし増大する需要に対応するためには新空港が必要。
ただでさえ莫大な資金が掛かるのに周辺には鉄道がなく、人や物を運ぶための新設費用等の負担が大きく、予定通り着工とはならなかったようです。
だが新空港の完成により経済成長が3~5%増えるとされ、南部地域への発展と活性化、また物流の改善が見込めると地元も期待する巨大インフラ整備です。
この近辺には工業団地が多く、日本の企業が運営する工業団地も最寄りにあり、ますます価値が高まる。数年前に進出した大阪の企業へ勧めたのがこの近辺。
地の利がよく、港にも近くて、将来を見越し空港も大きなメリットになります。
この地域にはビエンホア空港というのがあって、戦争中に使用されたが、ここから毒薬成分が大量に含まれた土壌が見つかって問題となり、アメリカの手で除去された経緯もあります。清水建設の最新技術も貢献。周辺は何もなく一部滑走路だけだったが、新空港用地も不発弾も見つかる可能性が高いはずです。
将来的にHCMタンソンニャット空港は国内線とLCC国際線となる見込み。

・良いことずくめではなく問題もある

新空港の着工は経済やこれまでの空港に過密状況解決、地域活性化などに対するメリットもあるが、問題がないわけではありません。
地元で出ている最大の懸念は資金。国内最大級のインフラ整備事業となり期待も大きいが、今回のCOVID-19禍で観光人口は減少が続く模様で回復には時間がかかる。そうであるなら市場の変化を見極めて建設を今行うか、遅らせるべきか考えるべきという意見もある。投資する側の資金調達、これほど巨額の投資を賄えるかだが、いずれ必要であれば建設事業はすそ野が広いため、先行投資を行う事で有効需要と考えれば問題は少なくなる。また空港完成後、運営には大量の人員を採用する必要があるため、雇用機会を創出することになります。
現在は周辺に工業団地が出来て交通・道路インフラ整備は進んだが、10年ほど前まではただの野原。ここに空港ができることで様々に重要なエリアになる。
空港への取り付け道路案は幅60m、4車線の大通りの主要幹線となり、空港貨物と人の移動で大きな産業が形成されロンタン地区は宝の山です。近隣でも高速道路の新規建設計画と橋梁の建設ですが、これらは空港とベトナム最大のカイメップ港とを結んで輸出入品の物流に貢献できるはず。

大手不動産会社の見解は、こうした公共事業はポテンシャルが高く、いずれも不動産市場の活性化を示唆しています。民間企業が倉庫やトラックターミナル、事務所、従業員住宅などを建築するため需要があるとみています。
数年前に知人のベトナム人が近くの工場に異動となり、私はその際に当時住んでいたPMHのアパートを売り、この近くで買い替えるのが得策と話しました。
因みに、今の価格は㎡/2000~3000万VNDとかだが、これが先行き1億~1,5億VNDになると業者間で囁かれています。利用形態により商業地なら相当の収益を得られる期待が高く、それ以上に騰がると考えて間違いない。

空港用地のほぼ半分はゴム林で、その他農地、田畑、果樹園、林、河川などに施設・建物や人家が6村で約5400戸も点在しており、補償と移転先をどうするか。日本と異なり時間をかけて土地収用をしないが、巨額の費用が掛かるし、その間にも値が上がる。地下鉄工事の様に二の舞にならないか案ずるところけれど、桁が違います。

巨大新空港を建設するための設計は、日本の事務所が2社参加したが、韓国の事務所がベトナムのハスをデザインして採用されました。
この空港を建設する際はこの設計に基づいた技術者の訓練と労働者の安全教育の実施。特に土木工事は大規模となるので環境管理計画に基づいた施工管理を確実に行えるか、能力開発と現場監理が求められるとしています。
また空港を運営するため空港会社スタッフには、比較的新しい分野となるため環境管理へいくつかの技術的要請と訓練が必要とされます。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生