モデルルーム

2022年2月1日(火)

このところ中国の企業・個人が日本の不動産を購入する動きが目立っているとある。北海道の山林、京都や有名温泉地では高級旅館、また東京などの都市部でマンション等々、その取得数は想像以上に多いとか。日本は外国人の取得に規制がないためこうした状況がまかり通るのです。
日本に居住する人も居る様だが、本土から金持ちが物件を見に来て買っている場合もあってその理由は様々あるみたい。すでに改装して旅館を経営している会社もあって外観をそのままに内部を改装してある。
100年以上経つ古い家は持つだけでも維持費が掛かる。後継ぎは他所に居て戻る予定もないので売るとか、歴史があり文化的にも保存すべき価値を有しても、行政は何の対策もせず取り壊さざるを得ない深刻な事態が続いている。
これら家屋は貴重な伝統様式を受け継ぎ、生活の知恵が詰まった風格ある社会的財産、見るだけで圧倒される。
外国資本の方が、得てして事業として利用するがまだ保存という観点では価値を評価していると思える。役所ではこの様な物件は他にも沢山あっていちいち支援できない、と言い訳がましい。そこに付け込まれる。
その結末、何百年続いた地域丸ごとが更地にされ、挙句の果て外国人観光客を狙ったホテルが林立、という古都の乱雑を目の当たりにするのは忍びない。
中国のツイッターでは、もはや中国でみることがかなわない唐代の建築様式が日本の国宝として千年以上に亘り残っており、往時の遺産を観たければ日本へ行けとの記事を掲載するが、街を築いてきた町衆文化は消滅の危機にある。

かなり以前、大阪に中国総領事館を設置するとの事で会社が保有していた市内一等地を担当していた筆者が案内しました。
結果は他の物件になったが、直接視察に来られた総領事は温和そうな上品な方、日本語を話し不動産事情や規制もご存とは驚きました。
今、中国の不動産業界は大変な危機的状況。万が一債務不履行があれば日本のバブル崩壊よりも影響は桁違いに甚大。もろに影響を味わった者として、余りにも被害の裾野が広く日本も無傷でない。何とか収拾できればと思うのだが。

さて日本ではオリンピックの後に不動産の価格破壊が起きるなんて事を盛んに週刊誌が喧伝していたが、地域差はあってもむしろ値段が上がっています。
こういう中、在日中国人がマンションを購入しようとあるモデルルームを見学に行ったとあります。で、其処でみたものとは、約70㎡の実物大の大きさで精巧に造ってあると驚き。担当者からは物件の詳細や生活環境の説明を受け、希望タイプや価格などを聞かれ、モデルルームを案内して貰ったとあります。
日本のマンションの特長は幾つもあるが、幅が約2メートルある広々したベランダ、引き戸を全開にすると部屋が一体になるリビング、各部屋に設置されているクローゼット、浄水器や食洗器やディスポーザーが付いた大理石で造られたキッチンユニット、デッドスペースを活用した収納、手入れが簡単な排水溝、可動式で掃除が楽なトイレの便座など、次々に紹介しています。
また特徴として、日本は天災・地震の多い国なので収納棚に災害用品が置かれていたことを挙げたほか、キッチンのコンロにグリルがあることについて日本人は魚を食べるのが好きなためと説明しています。
さらに浴室と洗面台あるいはトイレとが分けられている乾湿分離だとし、中国では一緒になっている場合も多いが、近年これが中国でも人気になっている。だが寝室は面積がどこも非常に狭い。小さめのベッドを一つ置けるくらいで、往々にして子ども部屋になる、主寝室もそれほど広くなくやや窮屈とする一方、クローゼットは完備されていて、タンスを購入するお金を浮かす事ができるとあった。記事の反応は大変多く日本の設計は素晴らしく機能的で気遣いに溢れているなど、コメントが一杯だったとあります。
一つ付け加えると日本で物件を選ぶ要件の一つ、事業主にゼネコン(建設業者)も選定の要件になる。不動産業者に建築会社も様々な業種や得手不得手があり、規模・能力によって大きな違いが出て来るが、一般の方はご存じありません。

ベトナムもアパート(日本でいうマンション)は急速に増え、日本企業も進出して地元デベロッパーとJVで開発していて人気がある。この記事と同じ様にデザイン、機能的な間取りに実用的な設備も大層好評です。
かつては日本製の設備は少なく、その殆どは中国製。ユニットはなかったので水回り設備などは現場施工をしていました。湿気が高く暑い気候風土、埃っぽいHCM市。だがサッシは施工方法も違うし隙間が生じる。おまけに室内の床とバルコニーのレベルは段差無くフラット、水切り勾配や溝が無いため部屋内に浸水してくる。クローゼットなどの収納スペースが無い。引き戸はなく全てドアで開閉など違いは沢山あります。だが生活様式や習慣の違いもあるため、取捨選択し現地化も考え企画しなければ文化の一方的押し付けになる。

モデルルームではこうした仕様・設備を確かめるのだが、知識が無ければ判断することは難しい。筆者は予算が無い場合はサンプルルーム、規模が大きければ構造見本を製作(これは多分日本初)したし、西日本で初の高級住宅地で1億円台マンションを担当したことがある。このプロ目線でベトナム企業の開発するアパートのモデルルームを見に行った事があります。
場所は7区、敷地が広い超高層マンション。何とモデルとして作ったのは2室。
かなりスペースが広い受付には若い女性が3名も居るが、ベトナム人と共に行ったけれど挨拶はない。詳しい資料やパンフレットも無い。期待した案内もなく勝手に部屋の中を探検。かなり綺麗にしてあるが生活提案という代物で無い。これはスタッフ自体がこういう住まい方をしていないためであり、恐らく建築や不動産に関する知識は無いと推測します。だから説明も提案もできないし、分譲主も教育訓練していないと見受ける。
これはノウハウが無い事の証明であり、全てのベトナム企業における課題でもある。さらに不動産を取り扱う上で全国基準となる国家資格が無いのも一因。これらが見えてきた。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生