訳が分からないことばかりのベトナムの不動産

2022年12月28日(水)

この所、HCM市の不動産の雲行きが急に怪しくなってきています。
HCM市でのアパート販売数は第二四半期にピークを迎えた後、減少を続けて7月に819戸と前の四半期から大きく割り込んでいると報じられている。
この原因だが不動産市場の価格変動を警戒し、銀行が融資を引き締めたため、投資家の心理に影響したと言われているが、実はこの傾向は既に数カ月前から兆しがありました。このため投資家は銀行の引き締めと、政府の市場支援策に悲観的になったとされ下落を見越して売却、市場がつられたと見ています。
また不動産大手Batdongsan(不動産)社の調査でも、一般の購入者も同じ考えであったとし、大手他社でもこの状況が続けばどのような状況になるかの予測は難しいが、今年の市場は悪影響を受けたままに推移すると懸念している。

この金融引き締めは、政府が投機防止に関する命令を出したことに拠り、銀行がローンを絞ったことで4月以降に供給が減少してきたことを受け、投資家が物件購入に消極的になり、取引件数の減少を招いたとしている訳です。
これが既存の不動産物件に影響し、物件によってはある程度の損切り換金するのはやむを得ない。資金を利益が見込める次の物件購入まで保留するとなれば流動せず塩漬けのままになる可能性は否めません。

複数の現地報に拠れば、多くの投資家は多額の資金を銀行から借入。業者間の情報を源に不動産物件を購入した。これまで通りに毎月利息を払ってきたが、この様な動きが顕著になってから売却できなくなり、保有するアパートなども売りに出しているが下落傾向が高まり焦りが出ているという。もはや利息さえ払えなくなり生活にも支障が出てきた。と散々儲けて、勝手な言い分。
不動産協会でも、過去8カ月間で不動産市場は信用収縮と販売低迷にあって、雨季の状況と評しています。

こうした出来事に関して首相は、銀行は合理的な理由なしに不動産部門へ信用引き締めをするべきではない、と警告しているとあるが、訳が分らない話。
政府機関に対して不動産の発展を促進するために新しい提案をするよう指示しているともするが、平均所得をはるかに上回る価格や、不動産に関するデータベースの一貫性のないことなどの問題を解決するべき。銀行は労働者やその他の低所得者へ住宅建設のために信用を優先する必要があると述べたとされる。さらに市場を投機、または操作しようとする不動産会社へは資金の規制。財務省と国家銀行は不動産会社の債券発行を厳しき監視することを期待する。全国の当局はバブルを防ぐ必要があるとしているが、これまで状況を見て見ぬふり、今さら何を言っているのか。銀行が勝手に引き締めをなど出来るものでは無く、バブル関して初めてならまだしも二回目。全く教訓にしていない。

不動産がどういう状況下にあったか分らない筈はなく、不動産高騰の諸要因は一部の投資筋による投機によるものだと誰もが知っている。また開発企業が市の入札で驚く価格を入れたのは、ニュースになった程で皆が知ること。銀行とグルになった開発業者をさんざん儲けさせておきながら、何もしないで為すがまま任せた責任逃れでしかなく、能力が追い付かない事を公言しているだけ。
価格規制が行なえた、一定規模以上の不動産売買審査は出来た、譲渡税導入もできた。であれば適正価格として確認でき、購入者もある程度納得が出来る。
オマケに以前から大手開発企業に付いて、用地取得や建築許可などの不透明な肩入れの噂も飛んでいたけれど諸悪の元には踏み込めない。それを今になって低価格物件を勤労者にとは口先だけのその場凌ぎか。

HCM市では2021年から22年6月まで、1㎡当り3000万VVD以下(約18万円)のアパート分譲は無かったとされ、高値安定が止まらないのと、ハイエンド物件が74%を占め、これでは中堅管理者クラスが幾ら無理をしても一生購入できない事態が続いたとされます。
また建設承認が遅れ、これはアパート建設を減らしたいとする恣意的な事情にも拠るが、伝家の宝刀を抜かれた開発業者にすれば、何時になれば着工できるのか、販売開始できるか分らない状況にありました。
このため優良事業者が保有するプロジェクトへ資金を供給し、信用回復すべきと政府に求めたと報じられるが、不動産を取り巻く環境に混乱が生じている姿そのものと大手不動産企業のコンサルタントはクールにみています。

この状況で重要な事は、彼は市場の浄化が必要とされているとの見方を示し、昨年から今年にかけ起きている不動産フィーバーへ警鐘を鳴らしており、恐らくこのまま今年末までこの状況が続くのなら、市場と多くの不動産企業は危機を迎えると警告を発している。即ち価格下落に歯止めがかからず、ベトナムの不動産全体へ及ぶ影響を心配しているが、業界の自業自得、言い訳に過ぎない。

不動産協会はこれまでの混沌とした動向を分析した結果、関心が低下していると懸念している。無計画・無策に終始した政府・行政、金融機関に不動産業界が自ら首を絞める状況だが、翻弄された一般市民へどう責任を取るのかだが。

因みにベトナム国家銀行に依る不動産分野への融資残高は、2000兆VND(約12兆円)を超え全融資の20%を占め、今年の融資の伸びは10%程度と、高い水準であったと考えられるが、焦げ付きは出るのでしょうか。
しかし賃貸相場においては経済回復に比例してアパートは入居率が改善、増加傾向にあって今年7月間で35%急増。賃料も前年同期比で6%程度上昇した。
またオフィス物件はアパートに比べてペースは遅い様だが、今後の経済回復に併せて比例してゆくと考えられます。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生