2番目の住宅への課税が論議 日本でもセカンドハウス課税が

2023年3月16日(木)

昨年論議を呼んだのはHCM市がセカンドハウスに税金を課すという話題です。
発端は市に入ってくる金が足りないということ。大都市だから有名企業が多く予算があるというものでは無い。何しろ人が地方からどんどん集まって来るが、このために必要なすべての社会インフラ整備が追いつかない。
ならばと、目を付けたのが、取りやすい所から確実にということではなかろうかと推測している。一般的には地方税であるとの解釈が出来るが、かと言って国を無視し、法的根拠なくして市が勝手になることなどできないが、幾つかの記事でもこうした法源が書かれていないので、ご教示いただけば深甚です。

国際的には土地家屋などの不動産には固定資産税や都市計画税が課されるのは一般的だが、ベトナムでは土地制度が違うため、誰もがこんな話が出て来るとはよもや思っていなかった。試験的というけれど、まだ計画段階で何時、どのように行うのか決まっていない。また反対論が出てこないのはセカンドハウスというから有耶無耶。もし全ての物件が対象となれば事情は全く異なってくる。
実施するとなれば一番の問題は課税標準をどのように決めるのかだと考えるが、こういう仕事は行政が全く分からない。土地の価格に関しては鑑定価格とされるものがあるのだが、これとて国家資格など無く鑑定手法も鑑定するとされる人物もいささか疑わしいと思っている。市当局は計画的に順序を踏んでいるものでもなさそうだし、では国が事前に了承しているのかも良く解かりません。

また副次的には投機を抑制し、未使用の物件を無くすためとあるのだが、これは上手な言い訳に過ぎない。これが原因で不動産市場を混乱させるとか、市場に深く介入する事で悪影響が起きる可能性があればどう対処するのか懐疑的。
しかし万一HCM市が実施したとなれば右へ倣え、瞬く間に何れの省、市や村までこれは良いと実施するのは目に見えているから、行政のなれ合いや公聴会では合意に達するけれど、市民や民間企業は絶対反対するに決まっています。金持ちだから二軒目を持てるとあるが、しかし賃貸として家賃収入を生活費に充てている人への配慮があるのか。やめれば2畳一間の掘っ立て小屋の住人は行き場がない。企業が保有する寮はどう判断するのか。他省・市の人がHCM市に持っているならどうするかなどなど、誰もが予想できる疑問は多々あるが、開示しているかと言えばそうではなく勇み足、準備不足の念も払拭できない。
さらにこの先の大きな目論見は、将来崩し的に所有する物件に課税が必ず及んでくると推測します。行政は成り行き任せ、無為無策。こうなると国家として土地制度を根本的にどの様に捉えているか考えるのは大げさでしょうか。

・首相は不動産市場の問題を解決するため行政機関に指示

チン首相は急激に冷え込んだ不動産市場の問題解決に政府機関がこれを行なうように指示。建設省は不動産、住宅、都市プロジェクトの開発を妨げる規制の変更を提案する様に命じられました。同省では兼ねてから進めている今後10年以内の100万戸の労働者住宅の建設目標達成のため、このプロジェクトを開発する主体である投資家の選定を行うことを求めている。
また財務省は社債を見直し、進行している問題を解決する策を出すように指示。
国家銀行の総裁には、商業銀行に不動産会社への資金供給を妨げる管理コストと手続きに関して簡素化する様に要請しました。
銀行はローンを返済できる適格な不動産プロジェクト、特に社会住宅案件とか労働者住宅、などに手ごろな価格で、迅速に融資を実行する様にしたという。
さらに不動産開発業者には、購入者にとってより便利になるよう顧客ベースで、価格など再構築する必要があると述べています。
こうした各関係先が市場の障壁を除くために、作業部会を設置したとある。
しかしこれらの動きは行政への指示はともかく、聞こえはいいけれど民間事業者へ手頃な価格で販売する様にとか、融資を迅速になど言ったところで強制力はない。政府が土地価格の高騰に関して何の策も講じなかった責任を転嫁して、今さら顧客優先でなんて虫がよすぎる。ベトナムの行政機関など市民サービスなど鼻から考えていない。1億人の人口になるのは時間の問題だし、こうした中で大都市への一極集中が続いたことは即ち住宅や土地価格に影響する訳なのだが、判断が遅く手をこまねいただけで政策の誤りでしかありません。
一度目の不動産バブルが終焉した段階で、普通に考えてもこの国は成長過渡期にあり、ビジネス・事業拡大に伴い人の移動や海外から駐在者が増え、人口も増加している。近いうちに二度目の波がやってくることは予測できた筈です。
このような事例は先進国に幾らでもある。一度ならず二度までとは先例や海外事例の精査が出来ていなかった。ではどうして多くの役人が動かなかったのか。
これは現地の人の話であるが重い。特定業者の幾つかのプロジェクト予定地で用地買収について黒い噂が幾つもあったけれど、テーブルの下で金が動いたとかもあり得ないことではありません。

・京都市でもセカンドハウスへの課税を行う予定

日本は空き家が800万戸もあって急増中。相続したくないが、不動産だけの放棄は不可能。空き家対策として政府は固定資産税の軽減を無くす方針です。
京都市は令和4年から市街地での別荘やセカンドハウスへの新税導入を進めており、令和8年以降に課税を開始する予定としています。

京都市中心部はそれほど広くない盆地。だが寺社仏閣に大学が多すぎて非課税、税収の妨げになっているのも悩みの種。この面積は市の半分にも達するそうで、市に拠ると市域以外の持ち主がかなり多いとある。筆者も京都市内に不動産を購入したい地方の人に物件紹介した事があります。京都に住みたい、との憧れを持つ方は多いが、これは様々な理由があって否定するものではありません。
都市計画の見直しも進められているが、ただでさえ超高層ビルが建てられず、土地は周辺地域より高騰している。このため固定資産税が高く、幾世代も前から暖簾をあげる家人でさえ市外へ転宅。京都に居を構えたい人があっても高過ぎて敬遠せざるを得ない。即ち新税導入とは、こうした非居住型住宅が市内に居住したい人への住宅購入が妨げられているという論理なのです。この他にも住民への行政サービスが低下しているのは事実だが、管理不十分のため防犯上・防災上、または景観上に悪影響が出るとしている。

人口減少が続く中で人が住まない家宅の課税は一つの効果になる可能性はある。だが根本的に次世代に残すべき貴重な歴史遺産や古い文化、取り分け高等教育を担う所が多い地域の共通課題。課税の仕組みと徴収・分配を考え直さなければ単に一市だけの問題に収まらない。中古住宅流通の促進・整備も極めて重要。
かつて寺社仏閣に観光税を徴収する動きもあったが彼らの強い反対でご破算になった。世界的観光地ゆえ難しい所だが、市民の負担が大き過ぎ観光収入から得られる税金だけでは還元できていないと確かに感じます。
もちろん歴史的価値のある物件など、幾つかの免除対象とか、猶予期間の設置など課税への素案は出来ているが、様々な事例や課題に関しては実施後に出てくる可能性が高い。問題はこのところ急速に増えてきているのが外国人に拠る物件購入、これをどう考えるのか。所在不明のまま税金を徴収できない羽目になる可能性は極めて高い。しからば強制的に収得できる法律を作れるのか?

京都市には高収益の優良企業もかなり多い。しかしこれらの企業が得た利益に対する税金も国に持って行かれる。なら行政は他に産業や新しく起業、今風に言えばスタートアップを支援するなどで税収を増やす可能性を模索したのか?
大学生から税金をとれないが、何れ知的財産として何倍にもなって戻ってくる。これ等も企業が少ないと首都機能のある周辺に人を吸い取られる危険性もある。
赤字が続く理由の一つは地下鉄の存在。走るほどに赤字が嵩み減便が続くが、これは必要なかった。市電を廃止せずそのまま活用すべきだった。こんな便利なものはなかった事は、広島や富山などの都市交通を見れば分かります。
市長が羽織袴で伝統文化の発信も良いが、金の入る算段に欠けるのが市役所。
交通を見れば分かります。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生