費用だけでなくそれ以上に問題となるのが思わぬ時間の掛ること。さらに親父さんが社長の小規模工務店。良い仕事は出来るがこれまでの様には行かない。こうなると彼らは淘汰され今まで以上に戸建て住宅の大規模企業化される可能性は避けられないと感じます。在来工法の技より強度が出て地震にも耐えられる構造材の工業化と省エネ化が進む。研究開発費が嵩むので大企業しかできず、益々工業化が進み画一的になり、美しさとか個性が消えてしまう危険性がある。
そうなると伝統技法は衰退し、職人も減って行くのが目に見えている。政府は並行して伝統工法の保存と技術伝承を進める必要がある。聖徳太子の御世から続き、世界一古いと誇れる会社、大阪にある寺社建築の金剛組は世界的に有名。
この会社が持つふたつとない歴史的建築技法、日本にしか居ない宮大工の伝統技術保存と育成を民間事業者に委ねるだけでは無責任。国家として若い技術者や職人への伝承と就労への機会と事業の安定などを保証する必要があります。
30年ごとに行われるお伊勢さんや出雲大社の式年遷宮などは、こうした古代より延々と続いてきた技術を後世に残すための職人育成法の知恵であり、木材調達にしても寺社林の営林はその調達のため。国内での林業活性化は重要だし、今後はこうした天然ものの建材の調達が一層困難になることに違いありません。
此処までの話だが、木造住宅が地震にめっぽう弱いというのではありません。
このところ木材を利用した建築物が増えている。代表的なものには東京オリンピックで新築された国立競技場は日本国内各地の木材をふんだんに使っている。
当初はザヒさんの設計案が選ばれたが、工事費が高くつくこととか、突拍子もない斬新なデザインにイチャモンを付けられたために変更になったが、であれば初めから日本らしいデザインをと課題を与え、国際コンクールなんてやめればいいだけのこと。日本には世界的な設計者が何人もいて事欠かないのです。
これが切掛けなの知らないが、此の所は高層ビルとか官庁の建築物でも木造が増えている。さらに名古屋城を木造に建て替えるとか、江戸城を木造で建設する案も出て来ているが、一般住宅でも温かみのある材木を使って断熱等級を上げている。これからの住宅選びが変わりそうな気配も出得て来たと考えます。
地震は重量物への影響が大きい。したがってこれまでの日本瓦を軽いものや、ガルバニュウム鋼板に変更するのはこのため。だがこれはこれで別の問題もあるのだが、木材使用の場合、コンクリートに比べてその重量とは約十分の一とも云われている。さらに木材を使用すればコンクリートに比べて二酸化炭素はほぼ三分の一で収まると計算されている。日本の林業に問題はあるが気候風土に合った国内産を使用するのが一番よく、林業の健全化を森林保護が見込める。
もう一つ日本人への警鐘だが、筆者が不動産に関わって感じるのは多くの人が新築物件を希望するということ。今は建材の高騰と職人さんの手間賃が急上昇しているので適切な中古物件が売れており、リニューアルすれば安価に仕上がるし何ら問題なく住める。建築後50年ばかり経った公団住宅の改装物件に人気があるのは望ましい事だと言える。今の住宅の多くはベタ基礎で木造の場合はリニューアルし易いので、政府は中古住宅市場の活性化を政策として積極的に取りいれ、購入者へは資金面での支援などを行う必要性があります。
筆者が担当したニュータウン開発での住宅だが、50年近く経って家族構成などの変化で減築するのはやむを得ないが、気になるのが30年ほど経ってからぼちぼち建て替えをする方が増えた実情を見て来た。自信を持って言えるけれど設備や内外装を変えればその必要は殆んどなく多くは社会的な無駄なのです。
さらに中古住宅の評価にも些か問題がある。一般的に20年以上経てば住宅の評価など殆んど期待できないとの査定項目がある。不動産仲介(媒介)担当者の多くは建築知識に乏しく経験も実力も無い素人。いわゆる近隣事例を挙げて機械的に経年係数を入れるだけの比較法。これでは真の評価でなく評価基準を技術者や行政を交え根本的に変えなければ価値の正当性はないと言えるのです。
ベトナムで住宅を建築する場合、役所への届けは行なうけれど、構造計算などありませんでした。柱や梁の大きさや間隔はこれまでの経験則に拠るのです。
木造建築よりラーメン構造で壁がレンガで出来ているのが主だが、内部の造作は須らく現場合わせ。詳細図面や展開図を書かないから取り合い部分はかなり雑に出来ていてほぼテキトーで仕上がりは誠に汚い。専門職人が日本ほど居ないので、何でもかんでも一人で行なうやっつけ仕事が多いからこうなる訳です。
だが室内の天井や壁はプラスター仕上げなのでハウスシック症候群は起きない、床は殆どがタイル仕上げなので汚れは気にしなくてもいいのは大きな利点です。
これを伝統的建築と言っていいのか分らないけれど、日本にもあるように地域によって各民族の象徴とされる特徴のある伝統的家屋も数多く存在するけれど、これは後世に残せるような方法で適切に保存するべきだと感じます。
しかし仮に地震が起きれば脆くも崩れてしまう危険度は高い。今の所は大きな地震が無いので一応は安心とされるけれど、全く地震がない訳でもありません。
またハノイにHCM市という大都会。これはデルタに出来た沖積地に建物が建っているので杭工事はそれなりに行っている。だが旧い建築物は対策が不十分であり実際に隣接地に大きなビルが建てられるとか地下工事が行われるとなれば傾く心配がある。都市計画図にはこの様な地盤が明示され、住宅でも確実に着工前に検査を行ない、適切な杭を打たなければならないが、工業規格が無いので現場製作となっているので品質的にはいささか問題だろうと考えます。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生