EQ 高度な技術革新とデジタル社会が進む中で

2022年5月2日(月)

海外に居て思った事。偏差値の高い大学を出たとか超優良企業にいてそれなりの立場で仕事をしたIQの高い人が必ずしも上手くいっている訳ではない。
自ら動いて現地を知り、現状を把握、現場が判る事が共通項。ビジネスセンスや商売感覚がないのも致命傷、机上の仕事では通用しない。
宿舎と事務所・工場と往復、食事は口に合わず日参するのは日本食堂。社員と飲食せず現地の家庭も知らず、慣れようと努力しない。これではスタッフから見放され事業が機能する筈がない。
日本企業はグローバル化が求められ、新興国に事業機会を求めて出て行った。この間、日本の海外資産は約357兆円と世界一となりました。
ところがCOVID-19禍で判明したのは、高度に国際的分業化が進んだが、モノの動きが止まったこと。また新興国で過度な市場競争がもたらした結果、一部の資金を持つ、技術の恩恵に預かるセンスがある人や企業に富が集中。明らかになったのが格差の拡大。この先どうなって行くかだが、進出は止まらない。

急速に拡がるAI化やIT・データ化という時代の流れに逆らえないが、現場を熟知し生の情報を得ることは何時だって絶対条件。
AIはこれまで人間が学習した知識の集大成をインプット。人間や行為の可否を瞬時に判断できるが、全知全能でなく理性や感性・感情を持つものでも無い。まして知恵がある訳ではなく善悪の見分けがつく道理は殊更なく、上手に使い分け道具として使いこなす力が必要と認識すべきです。

ベトナムでも政府が推進するのはデジタル化で経済発展させようとする思惑。技術革新で世の中が便利に豊かになることは必然です。一方で必要とされるのはEQ。人間力とも言われバランスやゆとり、揺らぎが大切。デジタルで置き換えられない価値の持つものがあると意識すべきだし無駄の効用もある。
ビルゲイツやスティーブジョブスが自分の子供にスマホを持たせなかったのは何故か。自ら考え創造する事が大切だと知るからです。

COVID-19が切掛けで、テレワークで働き方が変わる様な業種や職種が出て来た。自然の中で仕事とは一見かっこいいけれど、効率と結果は求められる。初めは良いとして、一人きりで人間関係が薄くなり孤立を感じてくればどう克服できるかがカギ。ズバ抜けた自制心と能力があれこそだが、目的を失くし、公私の別すら付かず、怒りや喜び 哀しみも楽しみもなく、人の体温や感情を忘れた世界に嵌り込み達成感すら覚えない人間になるのは恐ろしいと感じる。
最近は社会がおかしくなり他人へ無差別殺傷と理不尽な事件が相次ぐ。人との接点が希薄で不安に苛まれ共感が得られず疎外感を味わう、そして居場所を無くし絶望を感じる。全て社会の責任だとして攻撃的になり敵意を感じてしまう。
ポツンと一軒家が高視聴率で共感するは、現実やストレスからの逃避ではなく誰にも邪魔されず自己実現できるのが素敵だから。だが本質は本来の人間の持つ自然の下での生活能力や創造力の回復をみるからだと考えます。

かつて一緒に仕事をしたベトナム人の仲間は家を売って山林を購入。有機野菜を栽培するために重機を操縦して夫婦で開墾。都会での勤務と自分の別事業で精力を費やすのは嫌だし、人間関係も疲れる。企業を大きくするよりも自らが楽しみ人の為になる事をしたい。こんな理想を持って着実に人生を歩んでいる。顧客は多いが会社が求める営業力でなく、其の源泉は相手へ心を込めた笑顔と理解力、マニュアルにはないその場の臨機だから応変の対応力も魅力がファンの多い決め手。即ち人間としての感性が高く、テレワークでも成果は高い。
こんな両刀遣いが出来る人財、頼もしく誇りです。

・EQの実践

日本で在籍した会社。社長が北海道に支店を出す際、行きたい奴は手を挙げろと言って志願した若い社員。支店長に抜擢されたが慣れない土地で開拓の日々。営業は御用聞きでいいとポジティブさで成果を上げたが、トップは剛毅で肝が据わった事案を実行してこそ企業は伸びるもの。立場は人を変えるし、小さな金魚鉢では大きく育たない。無謀にもこれを実践。今ならブラック、ビルで一番早く出社し最後に灯を消すが、裁量度合は高くその分仕事はキツイけど楽しんで出来たため付いていけた。叱るとボロクソだがケアは上手く大切と心得え、頻繁に電話する。共に一軒宿に行った事もある山と温泉が好き、裏が無く生粋の大阪人創業者そのもの。人との関りを大切にしてケチらない。効率だけを求めず無駄は何かを発見する源ともいう。社長には色々と教えられた。

しかし怖がりが丁度いい場合もある。私の高校時分は山岳部、躊躇なく選んだ学校に近い山は府下最高峰。春夏秋冬、色んなルートを実踏で探っていた。
在京時に北岳に単独行。下山ルートは岩場で赤い〇印が路標。だがガスって来て全く見通しがつかない。引き返すのが良いと判断したが、本心は怖かった。そのまま進めばどうなったか。登山計画は状況を想定して入念に行うがそれでいてイレギュラーはある。現場でどう修正するかは危機管理力であり人の知恵。
この体験、無茶をせずに戻る勇気、またビジネスでは早めの決断と断わる度量が大切。見栄を張る筋合いなどありません。

・敢えて掲出 利他の心 漢字変換はもうコリタ

昨年11月に99歳で亡くなった瀬戸内寂聴さん。その著書に幾度となく出て来る言葉のひとつ、聞かれたであろうと思います。
この言葉、天台宗の宗祖伝教大師最澄が語ったもの。自分の利を暫らく忘れ、人を思いやる心が大切。周りの人が幸になれば自分も幸せになれる忘己利他の精神が求められ、ひいては世界、宇宙との交わりを意識し目を向けるのも必要。社会との接点をなくす事はできません。しかし寂聴さんは無理する事はない、思うがまま自分がやれる範囲で良いと書いてある。
天台のもう一つの教え、一隅を照らすという事を聞きます。華やかなで美しい表舞台だけが人生ではないという事でしょう。
高度に進化し続ける社会。何れの宗教も宗派を超えて、平和と安寧を齎す思想や叡知が、解りやすい言葉(真理)として伝わっているのは大切。高度に進化し続ける今の時代、悩める心を楽にさせます。

・ベトナムの若者へ 目標は実現する

訪日間近じかの実習生に話す事があります。
ベトナムの若者の多くが夢や目標を持たないのは金銭、精神に余裕がない為。そこである実験、五円玉に紙と糸を渡す。
先ず紙に円を画き、十字を書き入れる。30センチ程の糸を五円玉の穴に通し、暫しの黙想。次に糸を額に持って行き、円の中心に五円玉を置き、心の中で語り掛け、左右に振れ、上下、円を描けとか、大きく振れて、などなど。すると個人差はあるが意に従い五円玉はその通りに動くが、種などない、即ち心からの願いは実現すると伝えるため。何をしたいか明確にし、少しでも楽しく過ごせる様にと思い経験してもらうが、達成してこそ心願成就。

五円玉に描かれた稲穂。実るほど 頭(こうべ)を垂れる 稲穂かな。金を持っても決して奢らず、謙虚にとの戒めもある。また五円はご縁。ベトナム語でもDUYEN。だから五円玉は彼らへのお守り、大切にと渡します。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生