進むプラスチィック製品の使用禁止と増々高まる取り組み姿勢

2020年1月8日(水)

ベトナムのプラスチック製品消費量は1人当たり41キログラム(2015年)となっていて、1990年の3、8キログラムから経済発展と共に急増、年々10%程度伸びています。
ローカル食堂やビアホイ)でも机に椅子、箸や食器に至るまでプラスチック製品を大量に使っています。
HCM市内にある大手工場はあらゆる日用品を製造しており、トラックが頻繁に出入りするほど需要は旺盛だし、外資企業向け電気製品、車・バイク部品、化粧品容器などの製造も好調で24時間フル操業。こうしたプラスチック生産品は毎年180万トンを超えますが、リサイクル率は僅か27%に留まっているのが現状。
この他、輸入する廃棄プラスチックは年々増加し、2018年には前年の3倍にもなるほど深刻な状況で、外国から輸入される廃棄プラスチックを止める動きがあります。こうした廃棄プラスチックを専門に製品化する再生村が市郊外にあって、生まれ変わった製品はまるで新品。しかし国内各所にある廃品買取り屋から集まってくる廃棄物を合わせるとその再生量は計り知れません。
プラスチック製品使用を減らす、廃棄物を削減する両輪の行動を起こさないと、2050年までにベトナムの海は廃棄物で埋まってしまうと、環境問題専門家は深刻に捉えていますが、誰もが何の意識もせずに普段通りに使っているのが現状です。

こういう現状に政府が対策を講じ、2021年までにはまず都市部のスーパーマーケットや伝統的小売市場、一般商店での使い捨てプラスチック袋の使用を停止し、2025年には使い捨てプラスチック製品を全国的に禁止すると報じています。
ハノイ市ではプラスチックゴミ廃止運動が発足し、首相がこのイベントに参加してプラスチック製品の使用を控えるように呼び掛けています。さらに各組織、機関に対して使用中止に向けたスケジュールを策定するよう指示を出し、報道機関にも使用を控えるよう求めています。
関連する省庁では規定を見直し、使い捨てプラスチック製品に代る環境に優しい代替品の開発と使用、ゴミの分類、プラスチックゴミのリサイクル事業に向けて法整備を行う。さらに将来的には分解が難しいビニール袋の輸入と製造を禁止し、現在行われている廃棄プラスチックゴミを輸出先へ返還するとの方針を明らかにしています。
TV局ではドキュメント番組で国内海域のプラスチック汚染を報道。マイクロプラスチックによる魚や海への影響、さらにドブさながら濁った河川では家庭ゴミが入ったレジ袋の多さと汚染の酷さを映し出しています。
世界遺産として有名なハロン湾。此処では湾を管理する委員会と観光船事業社15社がプラスチック製品を試験的に廃止する合意をしました。
ハロン湾クルーズは人気のある観光トリップ。1~3泊ツアーもあり、船上で飲食をします。そこで合同でプラスチック製ボトル、コップ、ストロー、袋、ウエットティッシュ、ミネラルウオーターまで廃止して代替商品に切り替え、環境保全に取り組むというものです。
写真で見ると綺麗なハロン湾の光景ですが、実際には海の水は綺麗と言えないところまで濁ってきており、環境保全は時間の問題でした。
日本でも同様ですが、一般家庭から出て来るゴミの量が一番多く、一部地域ではようやく分別収集が行われ始めました。しかし何でもかんでもゴミをレジ袋に詰め込んで捨てる習慣が直ぐに改まる訳ではありません。
一般市民の反応や関心は薄く、雨の時バイクに乗るために欠かせないポンチョ(アオ・ムア)。通り沿いの店で買う野菜に果物、魚なども薄いビニール袋を使っての持ち帰り、日常生活では簡単に代わりそうにありません。
河川や海で清掃ボランティアが行うゴミ回収量は驚く程とんでもない量。汚水まみれの場所での作業を行っていて、環境保護はようやく認知され始め、高まりつつあるように感じます。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生