気を付けよう 進出する際に甘い投資の誘いに乗るときっと泣きを見る

2021年1月27日(水)

この所スーパーで見かけることが多くなったある食品。値段は割高だが健康に良いそうで人気もあるみたい。これを見てふとよぎったのがある相談事です。
数年前のこと。大阪でベトナムセミナーでの講話後に、HCM市で大手企業の責任者として長く駐在した知人がさる企業の役員と来ており、彼の話を聞いて欲しいという。知人は事情を先刻承知で見解の整合性を確認するべくこの方と同道したのです。
ベトナム進出を検討していた所、社長の親戚が現地の日本の公的機関の元職。
社長は彼を信頼して現地企業と話を進めているので安心し切っているという。だが実務を進めて来たスタッフ。其処は長年ビジネスをして来た勘が働いて、元職氏が現地を充分に見知っている程でないと直感、不安になった次第です。

HCM市南部のメコンデルタ。此処に合弁を予定している現地企業がある。
この地域は農作物の大生産地。これを原料にして製品化する訳で、HCM市からは離れているが原料は大量に手に入り易く土地代も安い。現地で加工するのなら輸送コストも人件費もリーズナブル。そこで先方の持っている土地に工場を建て、其処で事業を始めるのが当初のシナリオでした。
ところが暫くしてこの企業から、HCM市の隣接省に土地を持っていて、この物件の方がHCM市に近くて何かと便利なので・・と嘯く。これを聞いた彼の役員が今さらと疑念を持った訳です。もちろん現地の状況は殆ど分らないが、長年の経験でしっくりこない。そこで同郷である私の知人に話したところ彼も最初の工場建設から手掛けてきて、退職後はHCM市恋しさに日本語教師として再来越した人物。並の苦労はしていない。ピンと刺さるものがありました。

即ち、隣接省の土地はと問うとまだ原野。取り付け道路は無く、地盤がどうかも分らない。この辺りは水はけが良くないため農地にも適さないが、知っていても話さないだけ。道路敷設と土入れ、工業団地とはいかないまでも整備するとなれば造成の資金がかなり必要だし、電気や上下水道も無いから引き込まなくてはならない。
その費用はと言えば、現地企業に金が無いというから進出を予定する企業が払わなければならない。都合よく相手を利用しようとするズルは見え透いている。
地元企業だからこそ人民委員会も積極的に支援してくれる。おまけにこの当時、此処まで来てくれる日本企業など聞いた事がありません。しかも省が異なるとなれば手続きには何かと不便が伴う人脈社会。そう簡単に開発できるものではありません。また時間が掛かれば事業化は遅れるため容易く受けられない。
知人も私も同意見だが、この話、担当者が初めから仕組んだもので、現地事情が分からない日本企業に親切ごかしで吹っ掛け、おこぼれに与ろうとする魂胆がまる分かり。計画性も無く当初の約束を反故にして、乗りかかって未利用地を何とか宝の土地に換えたいという狡猾な本性を発揮。よくある話です。
落ち着いて考えれば誰でも分るのだが、善に考える日本人がこれに嵌れば餌食となるだけ。相手の話を鵜呑みにせず、分らなければ現地に日本人弁護士なども居るのでしっかりと信用調査、安全に金を掛けるべきです。
後に社長に会ったけれど親戚に頼りっぱなし。トップはこれではいけません。真の現地事情を知らない身内より社員を信じ、自分の目で確かめるべきです。
因みに製品のラベルをみると国内製造と書いてある。とすればどうもこの話、うまくは行かなかったみたい。それ以前にこの企業が進出したとかのニュースを見た事はありませんでした。危険を回避したのか、途中下車も時に必要です。
コラム126「怪しい投資話には気を付けよう 新興国にもウソが溢れている」と示した。相手がれっきとした地場企業でも、怪しい話は迷わず断つのが大切。

この他にも進出相談での怪しげな話 信じる企業があるのがオカシイ

・メコンの土地にレアアースが埋まっていて、これに投資しないかと持ち掛けられたので大丈夫?と聞いてきた。はて、そんな話題など聞いた試しは一切ない。共同開発というけれど、こんな大規模な投資なのに相手は金に技術、経験など端から持たずにおんぶに抱っこ。第一に政府は採掘を認めません。
・ある生活工業製品を現地で売る話。通訳に来てくれた女性に話をすると自分がぜひ代理店をしたい。親戚の××がいてこの仕事に詳しく打って付けと持ち掛ける。この親戚総動員が曲者、金は山分けの算段がミエミエ、底が浅すぎる。

・実習生が3年の期間を終えて帰国する前、帰国後に商売をしたいので支援して欲しいと来たが大丈夫かと相談。彼は北の人物。だが事業をしたいとする地はHCM市。土地勘やその地域で事業の可否を分かっているワケは無いのだが、現地事情を見知らないのを良いことにオネダリ。駄目で元々、平気の平左。

・この他に幾つかあるが、所詮何れも金がないので出してくれとの無心。事業や商売をするのに事前調査も行わず、計画性も無い。事業・資金計画をきちんと作り書類があればまだしも、話だけで煙に巻いてしまう錬金術師と同じ手口。サギも数撃てば当る寸法。事業として進出する際には気を付けようが合言葉。
仕事に結びつけようとする通訳もいるが、数か国語を話す真面目な人も居るし、会社設立に名義を借りて上手く行っているケースも。旅行先で通訳した大学生に「初めて会ったその日から一目惚れ」とテレビ番組の様に猛アタックで落とした年の差10歳、何とも幸せ独り占め男の話もある。女性は日本へ働きに来て後に結婚、「ハッピー ターン」物語。だが人気菓子の事ではありません。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生