売り上げを伸ばし始めた国産?自動車①

2021年7月2日(金)

・初めに ある記事から:知った被りをする似非専門家 恣意的か?

某証券会社の市場調査部に在籍と称する女性スタッフ名でコメントが掲載され、其処にはベトナムの新興コングロマリットであるVINHグループの自動車に関し、ホンダや米フォード抜く?と気を引かせるため大袈裟な見出を掲げていました。
何かと思いきや技術的論評でなく、VN企業がアメリカで初めて目論むIPOで巨額資金調達のことが書いてあり、20~30億ドルを調達する予定で同国最大とある。同国は財務諸表等の整備が遅れているため審査に時間が掛るとの記載もあるが、要は話題として巨額融資を取り上げたが可否は海千山千の話。

この報道はベトナムに関係する人であれば既に先刻承知だが、現地事情を知らない人の感想では「手先の器用なVN人なら日本企業が抜かれるかも」と無知さもいい加減にしろと思うほど完全にこの記事に足を引っ張られています。
現地が分かっていれば何の事はない、自国で賄えないからアメリカでとの話。ところがたった2年程しかない自動車造りの経過に加え、典型的な部品を寄せ集めた組み立て作業。しかも国内では機械や素材に部品等の調達ができない。おまけに独自技術などなく全てを外国の企業・技術者へお任せ実態などはつゆ知らず、読者をあおっている感じが拭えない。何でもいいから国産車を買おう!と、特段価格が安いわけでなく、車マニアも居ず何処が取り得かも分からない愛国者に頼る国内オンリー販売でしかないため比較すらできず意味がない。

恐らくこの方は現地の産業構造や事業実態など、理解がないまま報道を知って書いたのでは。社名を載せ署名入りの記事は如何にも信頼がありそうに映るが、この某証券、ベトナム株をかなり以前から扱っていて個人の小額取引株主には人気がある。このためVN株投資を魅力的に見せ誘導するとしか思えないのは穿った見方か。それにしても株屋さんとは視点が違い過ぎて恐れ入る。

VINHはリゾート開発で時流に乗って財を成し、名を馳せたが、自動車に資本を集中してでも一台売る毎に万ドル単位で赤字を出す始末。ここにきてエンジン車でなく、開発や構造が簡単で部品点数も少ない電気自動車にバトンタッチ。
そのため急展開させていた小売部門を現地大手食品製造業に譲渡、経営資源を車にぶち込むがコスト圧縮も命題。
そのため急展開させていた小売部門を現地大手食品製造業に譲渡。経営資源を車にぶち込むが自社開発力が最課題である事を忘れてはいけません。トヨタが24Hラリーで完走させた水素エンジン車はカーボンNT。
地方での小売多店舗展開。爆進して売り上げはあがったが利益を出せないし、多岐に手を出したが、航空事業、TVもスマホも製造中止に追い込まれました。
自動車は現在相当な赤字でこれを向う5年間で黒字化するとあるが、具体性に欠け楽観的すぎる。国内市場だけではたかが知れているので勢い海外に狙いを定めたが自動車だけに暴走。表向き一見好調だがクールな目で評価が必要。

経営的にはいつの間にかのし上がって手を広げた印象。ソビエト在住時代での成功体験はあるとされるが、謎多き人物ともされ実像は明らかでない様だし、特段商業流通に長けているとも思えず、事業売却が証明。ビジネス事情に詳しい現地の人は不動産開発にしてもかなりのブラックさを指摘。でなければこの国で一気呵成に一介の民間人が出る杭になれるものではない。
以前に旧ソ連へ働きに行った人、留学したベトナム人は結構身近にも居るが、最近の国際ビジネスや貿易状況から見ると影に隠れたままでパットしない。
運気には恵まれたが頭脳的戦略を発揮したと思えない。時流をうまく掴んだ才と身変りの速さ、己が出来なければプロに任すのは正解だと認める。自動車を自分が製造するとの情熱と意欲も尊敬するが、何処かに無理が生じてくるとか、落とし穴に落ちる、罠に嵌る、或いは足許を掬われるのは必然的で世の習い。やっかみもあるだろう、やり過ぎれば自滅。今はスピードが速すぎて何もかもを素通りして周りが見えないだけ。イケイケ・ドンドンと小売業の躓きからしても、見かけの好調さゆえに注意すべきと思えるのは古今東西同じ事です。

小売業を買ったM社は無理に拡大したツケを払うため不採算店の整理に追われ、さらに韓国企業のVN国内商業流通へ資本参加のため持ち株を売却。アリババなどの投資機関から4億ドルの融資も受けるが、災い転じて福となすか。

さる大学教授がベトナムに長く関った事が評価されたのか、ある証券会社HPでVNに付いてのコラムを連載したが、何時しか終了しました。
多くの先生は現地に足を運んでヒアリング。論文等もこれが元ネタだが状況の把握が正しくないと分析も狂う。それらしく難しく書いても生活体験は基より会社経営や従業員を使った経験がある訳ではなく、読めば現地に精通していない事が丸分り。ビジネス現場では如何ともし難い問題が多くあり速くて的確な決断が求められ金も要る。実務が分からなければ信頼に値しない。肩書をもっても理屈だけでは何ともコトが運ばす、論語読みの論語知らずでは無駄の骨頂。
TVを観ていて有名な元司会者の解説にしても、ベトナムは自分で解らないため現地コーディネーターに全部お任せ。見れば判るが尻馬に乗るだけで如何にも分かった振りをするワカッタちゃんを信じちゃいけない。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生