農業・畜産分野で進化が②

2021年7月15日(木)

・北部 ハノイでの現況とは

悠久の大地、メコンデルタで採れる豊饒の米・野菜・果物などのイメージが強いベトナム。
しかし首都ハノイ周辺では近郊型農業も実は盛んに行われているのです。
私が行っていたHCM市での事業パートナーはハノイの旧隣省ハタイの出身。今はハノイ市に合併されたが、この地の農家の長男。当時は貧困度が高く早朝採った野菜を市内まで自転車で運んで街中を売り歩いたと言います。売れるまで家には帰れない貧しい生活。他に手にする技術や学歴などは殆どの人が持っていない時代に家族を食わせ、弟妹を学校に行かせるため糊口を凌ぎました。
此処でも日本人が農地を借りて有機栽培や減農薬栽培を行い人気はあったが、日本人社会向けで手が一杯。需要は高いが現地の人に回らなかったと話します。
その理由、専門家が指導して年間約300種類を収穫するが人手は現地の若者。しかし朝は早く、休めずシンドイ地味な仕事を彼らは敬遠する。早い話、新型バイクを買えず、彼女が出来ないし都会へ出て行き遊びたい。
農大出で有機栽培の指導もできる私の友人が採用して、手を取って仕事や知識ベトナムにはない技術やシステムを教えようとしたが、他に何もできないのに向上心に欠け、仕事を覚えようとする意欲や気力もない。飽きっぽくどんどん辞めて行ったと言います。
こうした状況からこのところ変化があると聞きます。それは意外にも農業従事者が増えているというのは驚きだが、中でも畜産業が注目されているとのこと。

・畜産が伸びている

ハノイ市の調査による状況は、生産農家は2020年度に3800軒と5年間で1150軒の増加。ホンマかいな、とびっくりする位。養殖場75カ所と、これを加えた5400hrが農業面積だと当局が発表しています。
市が特に力を入れているのがこの畜産という。所得が向上して美味しい肉を食べたい、本物で安全な乳製品もというので、この所は消費量が増えている。
ハノイ市76の県(日本でいう区)、地区で大規模な畜産業が増えたとあります。
このため食肉加工や加工食品製造、物流整備も並行して行われているとされ、同市の畜産は国内シェア約45%を占め、生産高では60%だと行政の報告です。
大都市の消費市場に近いメリットを活かし、安全性を強調する生産者は目敏くサプライチェーンを構築しているとあります。これは特に鶏肉を生産する業者で、規模の大きな所では食肉用5万羽、鶏卵用に1,5万羽を飼っている。
従来型で育てた肉は美味しかったが、需要が増えてタイから冷凍輸入するほど。現地の知人はこれを「アメリカのトリ」と呼んでいた。これは後で知ったが何とブロイラーのことで、放し飼いでなくケージで飼われ早く出荷したから。
日本の様に色んな部位に分けて売っていません。市場では丸一羽か精々ムネかモモ肉程度しか買えず、スーパーの冷凍品でも変わらない。
市当局は畜産振興に熱心。農業発展センターが中心となって畜産農家への技術的アドバイスと、販売支援を行ってきました。この理由は基準を設定し安全で品質の高い食品を生産し出荷する目的。さらに産地や生産者が分かるシステムも確立したと言います。
また市の農業農村開発局では地域の行政区と、生産、保存、加工に必要な技術と人材育成。経営者にはブランド化や管理方法を指導し、市場動向などの情報提供を行って需要供給のバランスを取るとしている。さらに大規模化と生産の効率化のために資金面で協力。農業基金からのローンを組めるように支援したと報じています。
これらの農業経済に変化を伴う畜産ビジネス振興に拠る支援策が成果として、生産農家の生活水準が向上、労働者の賃金も引き上げられたとしています。

・牛肉に人気

畜産はベトナムではそれほどの歴史はなく、食文化は中国を起源と同じくするため豚肉が中心。また牛肉を食する習慣は元々無く蒙古軍がベトナムに侵攻した時にもたらされたと言う。
だが食の洋風化がもたらした焼肉やハンバーガー、フライドチキンなど時代の流れの中で新しい畜産ビジネスへの変換が成功しつつある実態があり、美味しい牛肉に人気が出ています。
牛肉の消費量増加は一般市民の生活が豊かになった証明でもある。HCM市にアメリカンステーキ店が以前からあり結構賑わっていたし、神戸牛のステーキ店もあったが和牛人気が出る前に閉店、時の流れを感じます。
従来の国産牛肉は脂身が無くヘルシーだが柔らかさと旨さに欠けていたので、日本産牛肉は人気で土産にもした。来日した友人などは焼肉、しゃぶしゃぶを堪能する程で火が付いた。日系焼肉店の進出から店が増え、HCM市郊外でも和牛を肥育する牧場が出来きて、数年前は出資した話も聞いたがその後は?
ベトナム焼肉、ベトナム風しゃぶしゃぶもあり、これは鍋にココナツジュースか酢を入れて、沸騰したら牛肉を泳がす。臭いが消え柔らかくなるのです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生