・小売業各社も電子商取引で成長を継続
今年1月での電子商取引売上高は、例年よりもプロモーションが少なかったにも係わらず、パンデミックの中で昨年同月比の30%増しであったと商工省が発表しています。
特に米、乾物、缶詰めという生活必需品、粉ミルクや紙おむつなどの育児製品への注文が多かったようで、これは混雑した場所には感染の心配があるとして行きたくないという顧客が増えた事に拠る。取り分け2月のテト(旧正月)が近づくに連れ急増しました。
スーパーマーケットやレストランでは販売促進のため、持ち帰り商品を開発して提供。フェイスブックやゾロなどのSNSや、自社のウェブサイトを通じてオンライン・ショッピングを推進。配達も行っています。
こうした成果として、Co.opmartの一部店舗ではオンライン客は前年同期比20%強増えているとします。またビッグCでもオンライン顧客に対し、20万VND(千円弱)以上の購入で無料配送を実施。これに拠り電話予約が前年比200%と大幅拡大。VinMartでは自社のVinIDアプリにオンライン・ショッピング機能を導入するなど、各社とも店販だけでなくオンラインに望みをかけているのが実情です。
こうした小売業者の新しい販促努力が実を結び、オンラインでの販売額が各社20~25%伸びていると報じられ、品切れを防止するため在庫を通常よりも30~40%増やした業者もあるとされます。これは企業として当然で顧客に常に対応でき機会損失を無くす方策であるが、今まで腰を上げなかっただけ。だが利益を目算する余り、市場の見誤りと過剰在庫にならないよう注意が要る。
この結果、小売企業のオンライン販売高は総売り上げの5~7%を占めるに至り、各社オンライン会員は昨年比で15%程度伸び、このまま推移すれば販売高もオンライン会員も増える可能性が高いと考えられます。
・2020年度の世界電子商取引指数ランキング 順位が上昇
国連貿易開発会議によると、2020年度ベトナムのEコマース指数はアジア地域で1ランク上昇して発展途上国・移行国のトップ10に残りました。
この年度の上位10位までは全てがアジアの経済圏に於ける上位・高所得国であるといいます。
また上位10ヵ国にはシンガポール、中国、香港がランクインしているけれどスイス、オランダに続きヨーロッパ勢が占める。
ただ意外なことに中国とアメリカは世界最大のBtoC市場を持つが、指数では中国12位、アメリカが55位となっており上位に入っていません。
アメリカは巨大市場であり消費大国でもあるが、インターネット普及率は経済上位国より低い。中国も世界一人口が多く絶対的指標は高いがインターネットに関して世界87位。したがってオンライン・ショッピングにあっては普及も遅くアメリカが12位、中国33位となっている。
アメリカは商業流通が最も発展した先進国で、過去日本の流通企業各社の手本となりそのシステムを導入してきた歴史があり、近代化に貢献したと考えます。また通信販売も国土の広大さ故に必然的に生まれて発達した経緯がある。だがCOVID-19禍で世界的巨大流通企業であったJCペニーは破産、二大巨頭であるウォルマートもその権勢はあっという間に低下している。
調査通り新興国のEコマースが急発展している理由は、商業流通が段階的発展をしなかった事が逆に功を奏した。通信手段も例えば固定電話が発達せず設備投資が簡単な携帯電話やスマートフォンの普及と、これに伴うモバイル決済が可能になったのは皮肉なこと。またこれらを簡単に操作できる若い人が多い国だし、経済発展で所得が増えた事もあると考えられます。ある意味Eコマースはまさにベトナムが時流に乗った歴史の申し子です。
COVID-19禍では感染拡大を抑えるため検疫措置を強化した事で新しい商品流通のカタチが広まっている。こうした局面で人との接触が低減でき、即座に対応が可能であるオンライン・ショッピングは、電子商取引の進化を促進することになるが、現在のところ国・地域での格差があるため、これを標準化するにはデジタルトランスフォーメーションを整備しなければなりません。
新興国の弱点は、急速な普及・発展とは裏腹に物的流通がかなり遅れを取っており技術やシステムについて先進国を見習う必要がある。
また企業活動は明確な理念に基づくものとは思えず、歴史と事業経験の浅さに未熟さゆえ、取扱う商品に関しても真に消費者が品質や性能に満足できるまで至っていない現実がある。この背景には地場の工業力の低さがあり、どこまで改善されるか真摯に受け止めなければなりません。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生