外国人観光客の受け入れ開始が間近に迫る

2022年5月12日(木)

今年ベトナムの観光業界は一昨年と比較して約50%復活するとの期待をしていると言います。だが一方で元のようになるまではまだ数年かかると業界関係者の見方もあり、政府関係者に後方支援を要請するとある。
テト期には故郷へ戻る人の国内移動で一見業績は復活したかの錯覚を覚えるが一時的なもの、本音はお金を落としてくれる外国人観光客に多く来て貰いたい。
手始めにベトナム民間航空局は国際便の制限を解除し、全ての国・地域を対象に2月15日から2年ぶりに運行を認めるとしました。感染の危険性もあるが、近隣国に後れを取ってはならないとビジネス客や観光客を受け入れ、経済優先の姿勢が此処でもみることが出来ます。確かに現地に工場や取引先などがあるビジネス関係者はやむを得ない事情があって有効だが、満を持して期待しても、この日を心待ちにしていそいそと観光に来る人がどれだけいるのかは甚だ疑問。
そこで文化スポーツ観光省は安全で効果的な再開ロードマップなるものを作成し政府に提出した。承認が得られれば外国人観光客の受け入れを5月1日から再開可能になるが、此処に来てオミクロン株急拡大中。さてどうなるのか。
出入国の規制を緩和し、2020年に適用されていたビザなし入国も復活させ、国際便を復活させる計画で、ベトナム航空も今年の夏便の就航予定を発表しているが我々にとって問題は航空運賃。COVID-19発生前の価格なのか、高いのか。
現在はワクチンパスポートなる接種証明書を持つ外国人の受け入れを行なっているが、このプログラムで入国した人は1月23日現在わずか8500人で、打撃を被った観光産業に潤いをもたらす数字では全くありません。
ではなぜ5月1日という日が解禁日なのか。これは関連する各省、旅行・観光業者が受け入れを行なえるに十分な態勢作りが出来る期間が必要としている。
日本ではゴールデンウイーク。連休が始まりますが、収束が未だ見えない上に旅行代金が分らない。多分これまでのようなパッケージ価格では無理。しかもいくら物好きな旅行マニアでさえ果たして完全に安全だとは言えない状況下、保健省が外国人受け入れ制限を提案したが、観光省は拒否したとのバトル報道。夫々立場があるが観光に依存する宿泊飲食業などのため、早期に復活させたい観光省。そこへ外務省はビザ免除を提案、首相決済待ちの状況と報じる。
これでも海外のツーリストと提携する大手旅行社が安定して収益を確保できる団体客を受け入れられるとは思えず、個人客をターゲットとするにしては些か手間がかかるだけ。慣れた客はネットで検索して旅行手段や安宿を決めるとか、観光客が連れて行かれる不味くて高い日本人向けレストランに行く訳はなく、孤独のB級グルメを好む派。余程でないと土産物も購入せず必要限度しか費消しないので期待出来ません。

・これからのベトナム観光市場

COVID-19が始まってから16か月。この間におよそ80%の宿泊施設が事業の停止を余儀なくされました。また観光事業に関わっていた200万人ともいう就労者が職を失ったとあります。
五月の外国人受け入れは朗報。航空企業、旅行会社関連、また各省の観光に関する管理委員会では受け入れ準備を進めているとのこと。
にわかに脚光を浴びてきたのがグリーン観光。ありきたりでないコト体験型で農家民泊など中身が超ディープ。特に若い人を中心として国内でも人気上昇中。
何処の旅行社も没個性で画一的。オマカセパックで単に有名観光地を巡るとか、高級ホテルに泊まり、美味しいものを食べて満足するなど、引き回され疲れただけの物見遊山には飽きが来た。人が滅多に来ない遺跡巡り、職業村や農漁村での宿泊、農作業や漁業体験など心を擽る非日常体験が未開発で宝の山。質的向上を目指した実体験型が今後喜ばれる。余計な手出しは無用、共感や感動が無いならば意義はなく、差別化と心を込めた企画力に優れた企業が勝ち残る。
これを実現、推進するため安全面の重視を行ない、国内外の観光客を誘致する。
そのため地域の理解、各企業と地元の観光行政機関、旅行業界など極めて幅広い協力関係を構築する必要があります。
取り分け欧米人にとってアジアの異文化を体験できることは大きな魅力です。
ベトナムに駐在する人が隣国のカンボジアやラオスへ休暇を利用して、しかもかなり奥地の村落へ出かけるという話も聞く。赴任中にしか出来ない事をやろうとする意欲や行動力は大きく、この濃いこってりマインドに習うべきです。
本来個人旅行的な要素があり、本当に貴重で面白い経験が出来ます。だが素人ではなかなか計画できない。言葉や文化を理解する必要もある。筆者の経験では孤児を養育している寺院を大学生が希望して訪ねたとか、高校の修学旅行中で予め希望者が施設を訪問する。果樹栽培農家や蜂蜜工場に海老養殖場を訪問するなど以前からサポートを行っていたが、これを現地事情が分らない日本の旅行会社が企画催行するのは絶対的に無理です。
今はネットなどで拡散され、個人でもベトナムの各施設へ長期休暇を利用してボランティアで訪れ、挙句の果てに刺激され国際関係の仕事に就いた方も見知っている。何が縁となるか、人生の起点になるか分からない魅力に富む。旅は即ち無形の価値の創造でもあるのです。金銭や名誉に馴染まない。
企業にとって新しい分野。ネットワーク化すれば結果として業界全体の利益になる。だが地元の機関と密接な繋がりが無ければ提供できるものはありません。そうすると其処に事業機会と需要が生まれる。旅はまた、最も本質的な人と人とを繋ぎ、言葉が通じなくても互いの文化を理解して、国境や人種を超え新たな発見と素晴らしい体験を共有できる。ようやくこれに気付いたのです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生