別の話題があります。幾度かカントー大学の事を書いていますが、昨年に叙勲が決まっていたボ~・トン・スアン元カントー大学教授への旭日中授賞を4月にベトナムで叙勲式を行ったとの記事がありました。
日本に留学し、稲作研究で九州大学より農学博士号を所得。また京都大学でも客員研究員として日本の農協制度を研究。カントー大学教授として日本人学者と共同研究や論文を執筆。日本の農業紹介や日本の農業制度を採り入れるなど、長年の日本への協力や交流、相互理解に貢献した功績とあります。
これまでもクア博士など日本留学者や研究者を紹介したが、このほかにも多くの日本の大学に留学を行なった若手の優秀な研究者もこの大学などメコン地域には恵まれているので、人材の活用と交流は日本にとって有益だと思料する。
4月にメコンデルタ地域開発会議が2度行われ、党政治局はGDPの12%を生産する農水産品の重要な供給地と認識。各省では夫々独自の優位性を持っているため、2030年を目途にグリーン農業の中心地で世界レベルの付加価値商品の大生産地となる目標を掲げました。
・その他国・地域への輸出
ベトナムは農産物の輸出を増やそうとしています。これには新たな開拓先も含まれるが、ローカル企業が積極的にITを活用し見本市などの情報を提供するプラットホームの立ち上げを行なっています。
これ等の成果とも言えるが、昨年はライチと竜眼を初めてオランダ、ベルギー、イギリス、フランス、ドイツへ輸出に成功。さらにドリアンをオーストラリアに輸出したところ2日間で完売し盛況だったとある。
緯度の高い国はこうした南国の果物は珍しい。人気があっても当然といえるが、EUへ向けてはFTA・自由貿易協定締結の発効に拠る関税引き下げの効果が大きいと考えられる。
また多くの国・地域と経済連携協定に参加して、独自の国産品を売り込もうとするとか、国を挙げてデジタル化社会を目指しIT技術を積極的に輸出に採用する合理化策も特色だと感じます。
EU加盟国の中でも北欧諸国はコーヒーが好まれ、国民一人当たりの消費量も多いがアラビカ種が主。しかしベトナムではロブスタ種がメインで生産の80%以上、しかもインスタント用の輸出が95%なのでショアは限られています。
この様に相手国の嗜好の問題、生産する品目のずれ、また安定した供給と高品質化など、求められる課題が輸出の増加とともに浮き彫りとなって来ています。
欧米ではこの所急速に企業へ課される環境保護の認証の問題、生産管理上では食の安全を保証するために、G-GAP基準を満たすだけの革新性が求められるなど改善項目があるとしています。また輸送コストが高い、この解決は難しいが輸出にとって大きなコスト要因となっている。
しかしベトナムにとってEUも大きな有望市場、年間輸入額は350億ユーロあり、世界の45%を占めるのでこれを放っておく手はありません。
・ネスレ社に付いて
云わずとも誰もが知っているスイスの世界的食品・日用品企業。1995年に進出し、一度はお世話になっている天然水LAVIEや、日本でもお馴染み「強い子のミロ」も現地で販売している。
日本でも同社のインスタントコーヒーを飲んだことがある人は多く、ベトナムで産するコーヒーの20~25%を購入している最大手。その金額は年間7億ドルにのぼる程。このため商工省が唯一コーヒー製造で承認している外国企業なのです。
このネスレが今後2年の間で1億2200万ドルを投資して、高品質コーヒー工場をドンナイ省で建設し、日本・アメリカ・欧州各国への輸出を倍増させる計画を決定したと報道がありました。こうなると世界最大のコーヒー製造企業となり、ベトナムは世界一のインスタントコーヒー輸出国となる筈です。
さらにスイス企業ならでは。リサイクルも積極的に推進して、先記のミネラルウオーター・ラビーをこの容器に変更と発表。プラスチックの削減に取り組む姿勢を表明したのだが、何とベトナム・パッケージ・リサイクル協会なるものまで設立。循環型経済に近づけ、護美を資源として、リサイクル・リユース・リデュースする目標を掲げたが、これは政府へプラスのアピールにもなります。
・米の輸出価格上昇
今年3月のベトナム産米の輸出価格が420ドル/トンとなり、最高値を記録したとあります。前月に比べ1トン当たり16ドル上昇した。
これはウクライナ問題に依る食料に関する今後の世界的不足を予想させると言うものでは無いけれど、万一この動きが明確になればこれからさらに価格上昇は考えられると思える。
管轄する農業農村開発省に拠ると、今年第1四半期の米輸出量は148万トンに達し、その輸出額が7億1500万ドルになったとある。これは前年同期比で輸出量が24%、価格では10,5%上昇となっている。
ところがタイ米は408ドル~412ドルで、1月から16ドルの下落という。
この理由は通貨バーツ下落が主要因とされますが、こうなるとタイ産米の価格競争力が増し、輸出も増えるであろうと推測しています。
ベトナム国内の大米処、メコンデルタでは今年の冬春米の収穫がほぼ完了し、各省に拠って価格の差は品種などで若干あるが、400VND前後/1㎏上がっているようだとある。
この所、ベトナム産米の品質は良くなってきているので、アジア各国との輸出に在っては品質競争が出てくる可能性が高まったと言えます。
因みに統計総局のデータでは、メコンデルタの1hr当りの収穫量は前年同期に比べて0,7トン増加したと報じました。
先のページにも書いたように、大学の研究、またこうした研究者などの農産物生産者への日々の指導や啓蒙が実を結んできたと考えられる。
次いでだが、メコンでは魚類の養殖も盛んに行っている。輸出用に需要も高くなってきており、日本のスーパーや惣菜店で売られている白身魚や海老フライなどもこうした加工食品が使われている。様々な水産加工品もあって現地企業はぜひ日本へ輸出したいと言うが、以前と違ってコールドチェーン、高速道路、港湾施設などの整備も進んでいるため、今後期待できると考えます。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生