今年5月までのベトナム農林水産物輸出が130億ドル強となり、前年同期比で20,3%増加したと商工省が発表しました。
特に多かった品目は米・水産品と加工品だが、取り分け水産品は48%近く増えて47,5億ドルとなっているとある。これは世界的な需要増で海老が・18億ドル、ナマズ(バサ)は90%増・12億ドルと、二大稼ぎ頭になっています。
そのまま冷凍して輸出する場合もあるが、これを各企業の仕様に基づきフライ用や団子状に加工して輸出することもあり、日本のスーパーや惣菜店・弁当屋でフライモノに使われているのはこのベトナム産がかなり多いのです。
またEUへはあさりの輸出が絶好調で第一四半期で21億ドル、前年同期比で36%の増加。特にイタリアなどパスタなどにあさりを多用する国には高品質と好評で急増しているという。生産地はタンホア省、ベンチェ省、ナムディン省など13の省で養殖しているが何故か日本への輸出は一向に聞かないし、蜆もありフエの蜆飯は美味しいのだが。
また米の輸出も好調。昨年などCOVID-19で輸出を制限するなどの報もあったが、
5月単月の米輸出額は3,86億ドル弱、前月より40%増加。また第一四半期は最高の伸びで、148万トン(24%増)、7億1500万ドル(10,5%増)を輸出した。またキャッサバ・加工品は6,36億ドル、39%増。
(ベトナム米)
ベトナム米の輸出価格が上昇している。これは世界的需要の増加が理由だが、品質が向上し認知度が高くなったとしています。
元々ベトナムには米の研究者が多く、日本などにも多数留学し地元の大学などやフィールドで成果を上げており、日本政府から叙勲された研究者も居るほど。
現在も米処メコンにあるカントー大学は、日本の大学や企業の支援でスマート農法や新技術を採り入れた研究・実践しており、新たな挑戦を続けています。
かつては売り込みのためにメコンの省から中国へミッションを派遣した。だが満足できる品質ではなく、結局輸出するまでには至らなかったほどでした。
またHCM市で米を使って日本のOEM製品を製造するT社。ここではタイ産米を輸入していたというから、価格もリーズナブルではありませんでした。
こうした中で話題になった高品質米ST25。メコンデルタ・ソクチャン省・農業農村開発局元副局長であった農業技術者クア氏を中心としたチームが開発したという。この地域の汽水域での海老養殖と稲作を両立させる農法が特徴だとか?インディカ種の長粒米なのだが、高原寒冷地帯での作付けも可能とあり、白くて粘り気もあるし、パイナップルの香りがするとも報じられている。実食した試しが無いので何とも言えないが、これではまるでスーパーライス。
ではこの米がなぜ有名になったかと言えば、第11回世界米会議で最優秀賞に選ばれたからだとされ、一躍時の「米」、になったようだが多品種・多様な米の味を覚えている日本人の舌ならどの様な食味評価が下されるか見もの。
この米を日本で売るといい、6月に東京で輸入記念セレモニーを開催したのがきらぼし銀行と現地の米輸出業者。スーパーなどで8トンが売れたとするが、巷では噂すら聞かないし価格は5キロ袋が2千数百円とかで決して安くもない。
2021年にベトナム米の輸入金額は4870万円との統計。約600トンで前年比73%増とかだが、それでも僅か0,1%に過ぎない。最も多いタイ米は27万1600トン。これは巨象とネズミ。
長粒種はチャーハンにすれば本領を発揮して旨いが、この価格では勿体ない。在住者は買わないし、ベトナム料理店でも使うのだろうか?ST25なんて泥臭い名前は戴けない。固定客が付くか、話にならないか。日本産銘米は土も水も違う、開発の歴史も長いので確実に旨い筈ですが。
(米の価格上昇と輸出の増加)
カントー市の米企業は6月に韓国へ15,000トンの破砕米を輸出する契約をしたが用途はビール用。この価格、1トン369ドルというが、これまでにベトナム食糧協会が表示した同種米の価格より31ドルも高かった。こうした原料米で破砕米入り価格が上昇、最高値を付けタイ産よりも若干上回って取引されている。韓国産ビールの不味さはこのため?だからアサヒが好まれる。
この理由、商工省では高品質米作付け比率を増やすために国が方針転換した事で品質が向上し、競争力が高くなったと説明している。
北欧を例に挙げればこの市場はお得意様でコメの消費量が多い。年間180万トンのベトナム米が輸出されており、これから先25万トン増加するとの見通しを立てている。またEUは2021年実績で4170トンと比べ物にならないが、今年は6万トン以上を目標としているが期待できるとしています。
(ブランド米開発)
農業農村開発省は2025年、2030年に向けた自国の米産業再構築を目ざしこのプロジェクトを承認したとあります。これに拠ると国産米の品質と価値の向上はもちろんだが生産網の形成、気候変動を考慮したスマート農業の開発、米生産農家の所得向上、高品質米に対する消費者の需要に応えることが目標。
方針ではブランド米開発に注力するが、これは最重要課題であり開発できれば同種の米より価格が10~20%高くなると想定している。
このため市場動向の情報入手、市場の多様化ではFTAなどの自由貿易協定を活用し、輸出米の品質向上による新市場の開拓も行なうとある。
ベトナム米は実に品種が多い。町の市場では普通米やモチ米、ジャスミン(香)米、黒米、赤米に、先ほどのST24とST25の他、日本企業が生産農家に委託栽培している日本種米、デパートでは日本からの輸入米も販売されている。
日本の米穀企業が20年以上前にベトナム進出。メコンに事務所を作って地域の農家と契約。これまで3期作をしていた南部2期作にして品質を上げるなど米作りを指導して貢献。現在は複数の日本種米が店頭に並んでいるし、国内の日本料理店やアジア諸国へ輸出しているのです。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生