イオンが後れを取った理由と異業種からの参入が増加

2023年1月24日(火)

同社がHCM市に事務所を置いて開発担当者を送り込んできたのが2000年初頭。だが現地事情を十分知らず、特に不動産に関しての知識は全く理解できていなかった。
彼らの言に拠れば事務所を設置して一年以内にHCM市内で7店舗のスーパーを開発すると豪語。しかも自社物にしたいという。ただでさえ大規模物件なんて国内企業でさえ保有できていないのに、まして外資企業が持てる訳などない。誰しも本当かと思うが、こういう拙い状況にあり、まさに大企業病に罹っていたと感じる。
そこでビンユン省の好物件を紹介するとこの地は次の段階といい、あくまでもHCM市に拘る。BigCなど軍隊の土地を借りていると説明するが断固受け付けない頑固さ。それではとこの軍隊系の開発企業の社長に面会させ、一連の事情を聴かせたところで謙虚さに欠ける。現法社長とは言うが一介の地域統括マネージャーでしかない一兵卒。コイツはあかんと匙を投げた。
一号店になったのが市内最大の墓場に隣接、マレーシア企業が開発した一角をサブリース。こんな不便なところに誰が来る。仕方なく一区まで専用バスを運行したが客は殆ど乗らず、鳴り物入りの鮮魚店も撤退。二号店にしても同様に開発地の一角を借りる形式に。出だしでつまずいたのが噂の真相です。
アジア各国で事業を展開してきたハズ!なのに、海外事情が呑み込めていない担当者がいけないのか、任せた本社が悪いのか。現地の実情を先に調べ、然るべき対応をすべきだが、結局仕方なくビンユン省へロッテマートに後塵を拝して出店はお粗末すぎた。果たして韓国ロッテに勝てるのか。兎にも角にも役者のレベルが韓国ロッテに比べて低すぎたと考えている。
ある時、この現法社長と現地のスーパーで出会った。この時彼は物件が集まらないので支援して欲しい。すでにいくつか案件を紹介した、彼らがコネのないHCM市不動産協会も紹介した。先の軍隊系と同じだが、進出するのに企業の説明とかプレゼン用の資料は一切持って来ない。営業とか企画、ビジネスを行うセンスが見られずこちらが恥ずかしくなるほど本気度さえ疑ってしまう。
だが此処で紹介された物件は何れもお気に召さない。
彼らは何とかしたいとさらに四方八方に声掛けするがこんな情報は現地日本人に一気に伝わり、現地ではもはや誰も相手にしない。徒労に終わらせても感謝の気持ちが全くないからです。
植林をしてイオンの森とか呼んでいるが、こんな社会貢献なんて企業の独善で、現地の人は歓迎などしていない錯覚の極致。単なる善意の押し付けに過ぎない。
こうした横柄な巨大企業のふがいない裏の実話は表には絶対に出て来ません。
この他にも新港の日系フジマートやドンキドンキなどは新しい試みの会員制。
ますますアジア攻勢、なかでもベトナムへの進出を加速しています。
何れにしても乱戦は避けられそうにはなく外資系対ローカル系の競争。どこかの企業は必ず淘汰整理されて行く。迎え撃つ地場企業はこれまでの経験を糧に力を付け、好き放題に市場を喰われてきた恨み辛みのしっぺ返しが出来るのか。
急速に変化しているベトナムの消費者行動を把握し、嗜好にニーズやウオンツを如何に捉えられるか、それに基づいた品揃え、価格、品質、サービスなど、一連の戦略を独自に構築し、魅力やブランドの発信ができるのか。大規模店に拘るか、それとも小回りが利き地域消費者の信頼を得る買回り品中心の小型店を駆逐艦的に配置する方針か、高級志向か低価格路線か、食品を絞るのかなど各社の今後の戦略に興味はあるが、その間に専門業態が現れてくる。

・異業種から新規参入が増えている

この様な状況の中にも拘わらず国内最大手のチュオンハイ自動車(THACO)社は、小売業界へ新規参戦するという勝負に打って出ました。
同社は自動車生産の国内トップであれこそ大型車や海外企業、日本のマツダ車、韓国起亜、フランス・プジョーの現地組み立てであり自社開発をしていない。国内ではVINグループが国産車を生産、今やEVへのシフトや海外展開を始めたのも理由のひとつかと考えます。
韓国流通企業・新世界グループが進出して展開を図ったイーマートを買収し、リテール会社を新規に設立。国内チェーン展開を行おうとするもので、人口が増えているトゥドック市とゴーバップ区に年内2店舗を新規オープンする。
計画では今後5年間でHCM市内に8店舗、ハノイ市で6店舗などさらに20店舗を新設。また低価格店も開発して2026年までに10億ドルの売り上げを目指すが、国内シェアトップとなるのは難しくないと豪語しています。
新世界GからPB商品の供給を受けるが、実はこの会社HCM市内で僅か1店舗しか出店できなかったので、両社に利点があったとされている。しかし理由はともあれVinマートの先例もあり、成否は蓋を空けないと分らない。

では同社の目論見とは何なのか。COVID-19の影響から停滞していた経済。だが此処に来て回復の兆しが明瞭で、小売の形、即ち伝統的小売形態が近代的形態へと変化しつつあり、また一方でEコマースも急速に発展している。
さらに経済発展で消費者の購買行動にも変化がみられ、こうした状況下で一応のニーズは満たしているが、これまで以上に買い物をより便利にするためにはマルチプル販売体制が必要になってくると同社は考えるのです。
THACO社はデベロッパーとして店舗運営に積極的に関るとし、複合施設の中に同社の生産する自動車販売や整備点検工場を併設するという新しい即時の戦略を立てた店舗も構築する考えを持っているという。
店舗運営ではメインターゲットは国内中間層、COOPマートと同様に5Km以内であれば注文から1時間以内で商品を配達するシステムをネット通販開始と同時に展開するという。

ベトナムの小売流通は多くの海外投資家や海外小売企業だけでなく、地場企業にとっても今後中流層が増え続ける魅力がある。そこでビジネスのプレゼンスを確保し顧客に買い物機会を多岐多様に増やそうとするわけで、異業種だからこそ考え方や発送もフレキシブル、新たな事業戦略を構築し易かったのです。
だがもの作りはできるが新規事業への専門家やスタッフは居ない全く異次元へ参入に間違いない。店舗を急速拡大する計画であれば、人材を確保しなければ育成などしていては間に合わず、職能者の争奪戦が起きる可能性は絶対にある。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生