統計総局は今年のGDP目標6.5%は国内経済の困難な状況を予測したうえの数字であり、いささか挑戦的であるとしています。
即ち世界情勢から鑑みて世界の経済は充分な回復ができないと読んでいる模様。しかし自国には達成できるための優れた潜在能力が備わっており、その可能性は充分高いとしているのです。
第一に国内経済を強くするために開放することが重要だとしており、まだ開拓されていない分野を強化することが必要だとしています。
具体的に何を指すかと言えば社会インフラ投資だが、その成長率は昨年11,2%。これはCOVID-19流行前の2019年は10,%、2020年には11,2%なので変わっていない。しかし公共投資への資金は昨年11月時点で実行額が約58%であり、半分近くが完了していません。
このため今年は700兆VND(約3兆9000億円)の公共投資を実行しなければならないという。この公共投資が達成へのひとつのステップだとしているけれど全額費消してもなお不足は見えていて、結局はODA頼みとなります。
特に南北高速道路と、新幹線計画が軌道に乗りかけている他に、HCM市からメコンデルタ・カントー市への鉄道敷設等も俎上にあるが費用は1兆2千億円と試算している。南北高速鉄道にしろ、鈴木大臣が訪越の際に日本へ協力依頼を行なったが時期尚早とみるのが妥当。
日本では詳しく報道されていませんが、これは前にも計画があったけれど国会で否決されている。ベトナムはインドネシアの中国への発注状況をみており、日本を選択したともあるが、ネット記事にも日本の技術を見せろとか、中国に負けるなとあるけれど、容易に話に乗るべきではありません。
これまで交通インフラの整備事情を見れば、予算は何倍にも膨れ上がっておりその都度JV企業体への支払いが滞って工事ストップは頻繁。人口が増え続け都市区域が拡大している大都市インフラを優先すべきで、国の実状に即していないと考える。技術は元より資金が伴わないのに外国をアテにし過ぎです。
二番目はやはり外国直接投資。世界的に困難な事情がある中でもベトナムへの投資は堅調であり、一例を挙げるとスウェーデンのレゴ社、韓国のサムスンとLG社巨額投資を話題にする。
2000年以降サムスンは継続して携帯電話の投資を行っており昨年は北部に研究センターを開設。LGも現地資本と合弁で流通や自動車関連事業への投資を続けているが、これはベトナムが魅力のある長期的投資国だとしているからと自画自賛。調子に乗り過ぎては何れツケが末代に及ぶのは歴史の上では決まりきったお約束になっている。
先のインフラ投資や電力再生エネルギーなどの巨額投資を積極的に応じているのはやはり目敏い韓国企業だとも報じている。
三番目にあげているのが観光産業戦略。国内需要は旺盛で消費が伸びている他、観光業の回復が加速する可能性は高いとしています。国内旅行者は昨年11月時点で延べ1億人を超え、目標の8000万人を大きく上回った。だが外国人旅行者は思ったほど伸びず、360万人に留まっている。最大だった中国からの観光客が1月8日から止まり。これで今年の目標である800万人を達成できるかだが新市場開拓でインドや中東から潜在的需要が残されていると楽観視。
文化スポーツ観光省は電子ビザ発給、入国手続きの簡素化、観光振興の拡大や国際イベント開催など観光客増大へ多様化施策を行うが、ビザなし期間が短い。
だが諮問評議会は高齢者受け入れ、飲食・ショッピング、公衆トイレ整備など質的向上が出来ていない。ターゲットを何処に置くのかなどマーケティングも出来ていない、業界全体で改善するべき課題が沢山あると指摘しています。
この三本の矢がGDP達成戦略としているが、海外銀行筋はベトナムへの海外投資は現在も健在だが、成長に対する脅威は貿易とインフレとしています。
確かに貿易は昨年末の数カ月間は減速しており、これはスマートフォンの輸出減少がその要因だが、今年の見通しは不確実で主要貿易相手国への輸出の伸びは昨年の伸び14%に比べ、約9,5に鈍化するとみています。
またインフレについて今年は4%と予測している。だがベトナムの経済学者はベトナムのインフレは、マネーサプライの増加に依るものではなく輸入価格の上昇でのコストプッシュ、為替の変動によるもので、それほど懸念することでは無いとしています。しかしそうでしょうか。
アメリカFRBが金利の引き上げ幅を低下させ、為替レートを変動するならば、このコストプッシュインフレも変動する。仮に為替レートを下げるとすれば、インフレ圧力も低下することになる。しかも周辺国が通貨を切り下げたことに拠りベトナムは輸入コストが下げられ、インフレは抑制されると考えられるとしています。そう都合よく物事が都合通りに動くかどうか分らない。
だが仮にマネーサプライを増やしても問題ない。金利を下げて供給量を増やす方が経済は活性化すると、学生でも分かる話を述べている。
それより世界経済が停滞する予測の中でFDI誘致は依然として良好。観光業の回復も迅速に行うのが良いとの姿勢は政府、産業界で共通している。
しかし何れにしても他力本願、自力で成し得るという考えはないみたいです。
なおGDPに関してだが、指摘されている問題は軍や個人小売企業など数字に反映されていない実態があって、これを参入すると24%ほど伸びるという。
統計総局の仕事なのだが、把握しにくいのがこれまで怠ってきたと弁明。
国の統計がこの様ないい加減な状況なのはいささか問題。これは確実に税務署が手抜きしているとか、申告制度にも拠る。何しろノコノコ店にやって来て、自ら個人手数料を平気で要求する。政治家や行政が普段やっている悪業を須く見習っているのでは正確に実態を掴むのには無理があります。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生